第6話 2020年夏 母のひとり言

「るみちゃん。落ち着いて聞いて欲しいんだけど、私たちはあなたを待っていたの」


 年老いた母が話を始めた。


「るみが未来にやって来るかもしれないって、ある人から聞いていたの。お母さん、そんなこと全然信じなかったけど…」


「今のわたしは?この未来の私はどこにいるの?ある人って誰?」


「ごめんね。それは言えないの。きっと未来を変えることは出来ないのよ」


「何?どういうこと?わたし、いないの?ここにいないの?」


「…るみ。お母さん、これからひとり言を言うから気にしないで」


 ひとり言…?


「ある女の子が大好きな男の子と結婚したの。二人には赤ちゃんが出来たのだけど、その子は血液の病気にかかり、中学生になる前に亡くなってしまったわ。医者から勧められた臍帯血バンクに登録していれば、もしかしたら助かったかもしれない。母になった女の子は後悔する毎日の中で、こころの病気になり、父となった男の子は子供が亡くなってすぐ、毎日家でお酒を飲み暴れるようになった…」


「…なんの話?」


「ただのひとり言よ。さ、今日はで食べていきなさい。大好きなハンバーグ作るから」


「お母さん…?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る