第6話 偽りの恋
とりわけ深く関わった女性がいる
田舎者であった自分には都会の女性は魅力的に思えたのだろうか。
東京に住む女性に、自分は珍しく、割と本気の恋をした。
都会と田舎の高校の違いや遊びに行く場所の違い、話し方が標準語なことにも新鮮味を覚えた。
「ねぇ、今度会いに行ってもいい?」
会いに行きたくなるほど好きになっていた。
『うん、いいよ』
あっさりとした答え。
都会の人は警戒心という言葉を知らないのだろうか?
「ほんとに?会ったら手をつないでデートをしようよ。それで、東京観光に付き合って」
『いいよ、私も〇〇と会いたい。楽しみにしてる(*^_^*)』
高校三年生夏、駅前から出る夜行バスにのり、6時間ほど揺られながら彼女のもとへ向かった。
バスの中ではドリカムの大阪ラバーをループで聞いていた。
東京に行くのに大阪ラバーはおかしな話だが、都会を連想させるにはちょうどよかった。
初めて東京に降り立つと、そこは地元では見たことのない世界だった。
高層ビルに囲まれ、人混みに紛れ、ちっぽけな存在に感じた。
待ち合わせは駅前と決めていた。
彼女も自分がバスを降りる時間に合わせて来てくれることになっていた。
だが、そのとき彼女からメールが届いた
『ごめん。バスで向かってるんだけど、とても混み合っててもう少し遅れるから待ってて』と。
『うん、わかった。待ってるから慌てなくてもいいよ』
本当は早くにでも来てほしかった。彼女に会いたいと言うよりかは、知らない土地で一人になるのが怖かっただけだ。
しばらくたってから、彼女が到着した。
ジーパンにTシャツと、割とカジュアルな格好であった。
「ごめんね、遅れちゃった」
彼女は謝った。
「はじめまして、〇〇といいます。」
今までメールでのやり取りしかなかったものが、突然目の前にリアルに現れた、当然の挨拶だったと思う。
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