【男3女1】天国ニート【コメディー・シリアス・天国ドラマ】

きよなが

天国ニート

本作は、ネット通話・ネットライブ配信を利用した無料の読み合わせ劇に使用する台本を想定して書いております。(事前連絡不要。アーカイブ公開は一週間以内までとし、それ以上は要連絡とします。印刷される場合は印刷日も必ず印字し、印刷日から1週間以内に破棄して下さい。)

それ以外の用途でのご利用は固く禁じます。無断転載もご遠慮ください。

Japanese version only

当台本を利用し偶然発生した利益に関しては此方から何か問う事はありません。ただし、発生した不利益に対しても当方は一切責任を負いません。

読み手様の自由を妨げないよう、細かいト書きや感嘆符(!)はあえて使用しておりませんが、序盤のみ、Aのモノローグ(舞台説明を兼ねたナレーションのような物)があります。( )の部分です。

全役、一人称・言い回し等は言いやすく変更してご利用頂いて大丈夫です。

序盤のシーンは、麻雀をしています。




A:♂ 4人の中心的な天国ニート

B:♀ 紅一点天国ニート

C:♂ ちょっとおバカな天国ニート

D:♂ ちょっとお堅い天国ニート

上演時間:40分程度(未実測)







A( 輪廻転生、という言葉をご存じだろうか?動物は、生まれたら必ず死ぬ。

  そして成仏し、また生まれ変わる。生きている間は誰も気づいていないが、

  動物はこのサイクルを何度も繰り返している。 )


B「リーチ」


C「うお、やべー。勘弁してくれよ。」


D「なら、追っかけるかな。リーチ、と。」


B「うわお」


C「うおおお、本当に勘弁してくれー」


A( 亡くなって天国にいる間は生きていた頃の記憶を保持している。

  そして、次の生に希望を見出した瞬間、記憶はリセットされ、

  その場ですぐに転生が始まる、といったシステムだ。 )


B「よーし、ツモるぞー。」


C「やめろー」


D「俺の方が絶対に待ちが良い」


B「甘いな、ヤマに一枚でもあればツモることができるのだ。

  くっくっく、勝負師の血が騒ぐぜぇ」


C「ちょ。落ち着け、お前らー」


A( しかし最近は、次の生に全くやる気を見出せず、いつまでも天国に

  留まり続ける人が現れ、昨今の天国では社会問題になりつつある。

  その、いわゆる 天国ニートと呼ばれる天使たちが )


B「私の勝ちだー」


D「俺が先だ」


C「助けてー」


A「ロン」


BCD「 あ 」


A( 俺たちのような存在である。 )





C「畜生、またラス引いたー」


B「なんで勝てないんだー」


D「なぜだ。俺のは3メンチャンだったのに。そんなチートイの

  ラスハイに負けるなんて」


A「俺のは確率論じゃない。メタ読みだよ」


B「卑怯だぞー」


C「そうだそうだー」


D「読まれて振り込んだお前が悪いんだ。責任取れ」


C「わー ごめんなさーい」


A「さ、今日はこの辺にしとこう」


B「勝ち逃げはズルいぞー」


C「そうだそうだー」


D「いや、ダメだ。生前の雀士だった俺の血が語りかけてくる。

  今が辞め時だぞ、と。」


C「お前いっつもそればっかりじゃねーかよ」


B「そうだそうだー」


A「うるさいぞお前ら、今日は帰れ」


C「ちぇー」


B「ぶーぶー」


D「第一、俺らはいつまでもこんなことしている場合じゃないだろう。

  次の生に希望を見出す為にだな」


C「わー、またいつもお説教がはじまったー」


B「にげろにげろー」





D「あいつらは、変わらないな」


A「ああ」


D「(苦笑) じゃ、また」


A「おう」



A( どうあるべきか、は皆理解していた。

  ただ、俺たちは 生まれ変わる事に対するモチベーションが、

  とにかく低かったのである。 )



後日。



C「あぢー」


B「あついねー」


D「天国にも、四季があるなんてな」


A「死んでから気づいたよ」


C「そりゃあな、天国だし」


B「そりゃあな」


D「それにしても暑すぎるな」


C「なぁ、クーラー出して」


A「そんなもの天国にあるかよ」


C「だよなぁー」


A「長居してる俺たちが異常なんだからな」


C「だよなぁー」


B「ピピッ 語彙力の低下を確認」


A「水でもぶっかけてやれ」


C「今なら大歓迎ー」


B「満員御礼ー」


C「ジャンジャンバリバリー。   あー、パチスロうちてぇー」


A「じゃあ早く転生しろよ」


C「次の生でパチスロが好きになるとは限らないだろ」


B「そもそも人間になれるかどうかも怪しい」


D「生前怠惰に過ごした罰として、働きアリになったりな」


C「なに、そんなことがあるのか?」


D「知らん」


A「生き返ってみればわかるさ。」


B「いってみよー」


C「そんなにすぐにやる気がでれば、苦労はしないんだよなぁ?」


B「確かにー。」


D「ああ。生前雀士だった俺の血が語りかけてくる。

  今はまだその時じゃない、と。」


C「お前いっつもそればっかりだろー」


B「そうだそうだー」


A「うるせーからかき氷でも買って来いよ」


C「なんで命令なんだよー」


D「いや、行こう。暑い」


C「俺のシロップ バナナ」


D「お前も来い」


C「えー、なんでー?」


D「良いから。お前らはどうする?」


A「ブルーハワイ」


B「私イチゴー」


D「了解。それじゃ、行くぞ」


C「ぐあー 俺は行くなんて言ってないぞー。やめろー。

  うわ、あっちー。嫌だ―」


B「(苦笑)変わらないよね」


A「ああ、本当にな」





B「ねえ」


A「ん?」


B「ちょっと、伝えたい事があって。」


A「なんだ、改まって」





B「私ね。今度の、転生補助計画、いこうと思ってるんだ」


A「え。」





A「どうして。」


B「私ね、本当は転生したいんだ。生前最後の頃は、中学生で。

  その時にね。ちょっと、虐められちゃって。」


A「・・・」


B「それで、情けない事にね。屋上から飛び降りちゃったの。」


A「自殺、ってことか」


B「そう。 でね、次に生で、もしまた人間になれたら、

  学校の先生になって、虐めのないクラスを作るぞー、って

  思ってはいるんだけど。なぜか、全然転生できなくて」


A「・・・」


B「(苦笑)ほんと、情けないんだけど。でも、このままじゃ

  ダメだな、って、ずっと思ってて。いっそ、神様の力で、

  強制的に、よろしくお願いしまーす。みたいな。」


A「・・・」


B「最近はね?産まれてくる人の数も減ってて、

  向こうも困ってるみたいだし。ここはいっちょ、

  やってやっか。みたいな。

  まぁ、それに。ここには、クーラーもないしねぇ?えへへ」





A「そう、か」


B「うん。そう、なの。」





A「なぁ。」


B「うん?」


A「みんなで、裏の山に、キャンプしに行かないか。」


B「キャンプ?」


A「ああ。明日にでも。」





A「行かないか。4人で」





B「うん。皆が良いなら。」




場面転換



C「川の近くでキャンプするのって、結構涼しいんだな」


B「ね、ほんと。涼しいー」


D「もっと早く来ればよかったな」


A「おい。焚火消しといてくれ」


B「うん。どうやって消すの?」


C「いい、いい。あぶねぇから俺やるよ。」


B「ねぇ、どうやるの?」


C「水汲んでぶっかけりゃ良いんだよ。そこのバケツで」


B「バケツ、で。水。を。」


C「どうした?」


B「あ。ううん、なんでもない。」


D「おい、はやく手伝えよー」


C「ああ、わかった。それじゃ、さっさと、水を」


B「ぶっかけろー」





B「テントの中で吊るすランタンって、なんか良いね」


D「ほんとだな。光と影のコントラストが、なんかな」


C「かっけー」


A「お前ら、キャンプやったことないのか?」


BCD「ない」


A「そうか。 ま、俺もないんだけどな。」


C「なんだよそれ」


B「ぶーぶー」


C「なんで今偉そうに言ったんだよー」


B「ぶーぶー」


A「うるさいな」


D「おい、お前ら。 で、だ。」





D「今日、こうなったワケは、何だ。」


C「おいおい、なんだなんだー?」


B「・・・」


D「茶化すな。あるんだろ。理由が。」





D「言えよ。」





A「ああ。それはな」


B「私から言うよ」


A「・・・」


B「私ね。  今度の転生補助計画、いく事にしたの。」





C「えっ」


D「・・・」


B「私ね、生前最後は中学生で、虐めにあって。自殺、

  しちゃってさ。次の生で人間になれたら先生になって、

  虐めなんか起こさないクラスを作るぞー。って、ずっと

  意気込んでるんだけど。その。

  いつまでたっても、転生できなくてね?」


C「それって。」


B「ま、私がだらしないのが悪いんだけどね?だからここは、

  もういっそ。強制的に、やーっておしまいっ。みたいな。

  ねー。えへへ」


C「もしかしてお前、さっきのバケツの時ちょっと変だったのって」


B「いいの。もう。死ぬ前の話なんて。

  はい。これで、私の話は。これでおーしまい」





A「まぁ、そういうことだ」


C「は?」


D「・・・」


C「なぁ、そういうことだ、って。なんだよ。」


B「ちょっと。」


C「お前は、納得したってのか。」





A「ああ。」


C「なんでそんなに冷静なんだよ。事前に聞いてたからか?」


A「違う」


C「じゃあ、なんなんだよ。俺は、納得できないぞ。

  急にそんなこと、言われたって。じゃあ、何か。

  このキャンプは、俺たち4人の最後の思い出です、って。

  そういうことなのか。」





D「ま、そういうことになるな。」


B「・・・」


C「なんだよ。何でお前もそんなに冷静なんだよ。おい」


B「やめて。ごめんなさい、私のせいなの。

  私のせいだから」


C「そんなこと急に言われたってなぁ。はい、そうですか。

  ってな。すぐ言えるんならな。いつまでもこんな事に

  なってねーんだよ。」


B「やめてよ。」


C「もう終わりなんだぞ?俺たちの平和な時間が。

 ああ、決意は立派だよ。そこを止める権利は、俺たちには

  ねーよなぁ?でも、そんなにすぐ、そういうことになるな、

  だと?どういうことなんだよ。お前ら。なあ。俺は認めないぞ、

  これで終わりなんて。絶対に認めねぇからなぁ」


B「ちょっと。待ってよ。」


D「放っておけ。」


B「でも。」


A「アイツなら、きっとすぐ戻ってくるさ。」


B「  うん。」





D「良い機会かもしれない。」


B「えっ」


D「俺も乗ろうかな、転生補助計画。」


A「・・・」


D「俺、実は生前はアリだったんだ。」


B「えっ?」


A「でもお前、良く、生前は雀士だった。って」


D「ああ、それは嘘だ。麻雀は天国に来てから覚えた。」


A「そうだったのか。」


D「俺は、いわゆる働きアリって奴でな。当時は巣の為に、

  毎日あくせく働いていたんだ。」


A「生前は真面目だったんだな。」


B「今も真面目だよ」


D「(苦笑)どうだかな。で。それから、ある日。

  まぁ、これは本当にわざとじゃないんだけど、

  俺は働きアリの癖に、誤って卵を産んじゃってな。

  そしたらその卵ごと俺も、 他のアリたちに、

  文字通り潰されちゃって。」


B「そんな、ひどい。」


D「死んですぐ、恨んだんだ。わざとじゃないのに。

  今まで真面目にやってきたのに。ってな。でも、こうして天国に来て、

  じっくりと考える力と時間をもらえて。最近になって、やっとな。

  あれはタダの、アリの本能行動だったんだな、って。そう思えたんだ。」


B「習性ってこと?」


D「ああ。図書館で調べたんだ。アリは、自分たちの生態系を守るために、

   役割分担をしっかりと決めている。女王アリは産卵、

   働きアリはエサの採取、という具合にな。でも、まれにその分担を

    破って産卵してしまう働きアリがいて、そのアリは、他の働きアリに

   淘汰されてしまうんだ、と。」


B「そうなんだ。」


D「ま、生きてる間は全部 本能的にやってたから良くわからなかった。

今振り返れば、そうだったのかな、って話だ。」


B「でも、酷い話だよね、それ。」


D「まぁ、人間の感覚で言えばそうだろうな。種族が違えば、ルールも違う。

 そういうことなんだろう。」


A「そうなのか。」


D「ああ。だから俺も、そろそろ次の生に向かっても良いかなぁ、と思ってた

  所だ。」





D「と、こうやって決意を露わにしてみても、転生が始まらないし。

  やっぱり俺も転生するなら、計画に乗る必要がありそうだ。」


B「うん。じゃあ、一緒に行こう?」


D「ああ。」


B「嬉しい。本当は、一人で行くのは怖かったんだ。」


D「ああ。実は俺もだ。」


BD「(小さく笑う)」


C「あーあ。何和んでんだよ」


B「ほんとだ。ほんとに帰ってきた。」


A「だろ?」


C「うるせーよ。ああ。その、なんだ。俺も行くよ。」


D「その上、盗み聞きまでしていたようだな。」


B「(笑う)」


C「うるせーっつの。生前の癖なんだよ。」


D「盗み聞きがか?」


C「ああ。」


B「どういうこと?」


A「そんなことより。良いのか。お前、ここの居心地は」


C「ああ。最高だよ。だから正直、転生したいとは思わねぇ」


B「だったら無理には」


C「でもよ、それはこの4人でいたから最高だったんだ。

  それが終わるなら、俺も。そろそろ。良い加減に。

  次に行かなきゃな、って思ったんだ。」


B「 そう。」





A「なぁ。良かったら、聞かせてくれないか。お前の生前について。」


C「別に構わないけどよ、そんなに面白い話じゃないぜ」


D「構わない」


B「聞かせて?」


C「うーん、別に良いけど。」


B「やったぁ。 よっ 昔話の。あ、はじまりはじまりー」


C「おいおい、なんだよ、それはぁ。ヤマなしオチなし意味なしな話だぜぇ?」


D「良いから。話せよ」


C「チッ あんまり話したくないから乗ったのによ」



C「えーっと。俺はよ、生前はちゃらんぽらんでさ。

  勉強もまともにやってなくて。仕事もにせずに、親の金で

  パチスロばっかり打ってるロクデナシだったんだ。」


B「うわ、本当にロクでもない。」


C「うるせーな」


D「人間の話だよな?」


A「おそらくは」


C「そのうち、親にも見放されちゃってさ。お金も尽きて。

  で、結局行き場もなくなって。ヤクザに拾われたんだ。」


B「なんか、漫画の中の話みたい。」


D「典型的、って言いたいのか?」


A「まぁ、そういうことなんだろう。」


C「んで、ある日。突然、組長の部屋に呼び出されてさ。

  拳銃を、握らされて。これ持って、警察行って、

  俺がやりましたって言って来い、って言われてさ。」


B「え。」


C「断れなかった。まぁ、ちゃらんぽらんだった俺は、俺の人生

 こんなもんなんだろうって。何か実感がないままフラッと出頭してさ。

  そのまま無期懲役。あとはずーっとムショの中で過ごしたんだ。」


B「そんな。無期懲役は、出所できる、って。」


C「俺もそう聞いてた。でも、運が悪かったのかなぁ。その拳銃の

  持ち主さ、その時に、その拳銃で5人以上撃ち殺してたらしくて。

  まぁ、生きてる間は、出る事を夢見て真面目にお勤めしてたんだよ。

  看守の話を盗み聞きまでして、俺の評判を聞いたりしてさ。」


D「なるほど、それで盗み聞きが癖に。」


C「今思えば、ホント、絵にかいたような模範囚をしてたんだが。

   結局出られずに、そのままムショの中で死んだ。」


B「それって、何年ぐらいなの?」


C「入ったのがハタチ過ぎで、そこから60年だ。

  人間って、長く生きるなぁって思ったよ。」





B「ごめん、かける言葉が見つからない。」


C「良いよ、お前が生きたのはせいぜい十数年だろ。60年のムショ

  暮らしなんて、想像しようにもできないだろ。だから良いんだ。

  無理してわかろうとしなくて。

  とにかく、ながーーーかった、って事だけ、わかってもらえれば。」


B「うん。わかった。話してくれてありがとう。」


C「おいおい、やめろよ。照れるだろ。いやぁ。こんな話、したの

  生まれてはじめてでよ。お礼なんて、その。こちらこそ、

  聞いてくれてありがとな」


D「まぁ、生まれてはじめても何も、もう死んでるんだけどな。」


ABCD「(笑う)」





C「さ、あとはお前だけだぜ」


A「俺か。」


D「ああ。」


B「あの、無理に話す必要は全然ないんだけど。」


D「その通りだ。」


C「でも、話せるのなら、聞きたいよなぁ。せっかくだし」


A「ああ。その、なんていうか。話すのは別に良いんだが、

どう説明したら良いのかわからなくて。」


B「いいよ、あなたがわかる言葉で話して。」





A「俺の記憶の殆どは、何も見えないんだけど、ずっと温かくて

  優しいものに包まれていて。聞こえるのは、一定のリズムで、

  ドッドッド、となる音と、時折遠くから聞こえる叫び声の

  ような何かだけなんだ。」


C「う、ん?」


D「気が合うな。俺もさっぱりだ。」


B「待って。続きはある?」


A「あるには、あるが」


B「話して?」


A「ああ。なんというか。ある時、突然正面からドンッ、と強い音が

  したんだ。相変わらず何も見えてはいないんだが、その時は、

  いつも以上に暗くなって。覚えているのはそこまでなんだ。が。」





A「すまん、説明が難しくて。やっぱりよくわからないよな」


D「ああ。」


B「いや。それって。もしかしてなんだけど。」


C「なんだ、わかったのか?」


B「産まれて、ないんじゃないかな。」


D「産まれてない?」


C「あ。なるほど。温かくて優しいものって、いうのは。

  もしかして羊水か。」


B「うん。多分、そんな気がしたんだけど。」


D「全くわからん。」


C「そりゃアリにはな。」


A「俺もわかってない。」


C「あー。つまりな。お前は、おそらくなんだが、何かの胎児で、

  産まれる前に、その。亡くなっちまったんだろう」


B「人間だったのかな?」


C「うーん。」


A「どうだろう。胎児だったって説も、今聞いたばかりだし。

  うん。でも、もしかしたら胎児だったていうのは、そうなのかも

  しれない。俺は生前何者だったのか、死んでから図書館で

  ずっと調べてたけど、どの動物にも当てはまらなかったから。」


D「すまん、俺にもわかるように説明してくれないか。」


B「ああ、うん。ごめんね?えっと、アリさんは、卵から赤ちゃんが

  産まれるよね?でも、私たちのような哺乳類は、女の人がお腹の中

  で赤ちゃんを育ててから産むの。」


D「ああ、そういうことか。哺乳類の胎生については図書館で読んだから

   わかる。しかし文献には、その頃の赤ん坊の気分や感覚に関しては、

   詳しく書かれていなかった。」


B「まぁ、それはね。誰も覚えていないもの。」


D「覚えていないのか?」


B「ええ。」


D「実際に生きていた者が覚えていないのだとしたら、それは。

  産まれる前に死んだ胎児は、そもそも生きていると言えるのか?」


B「それは。」


C「お前いくら胎児経験がないからって、それは。」


A「なぁ。お前のそれは、ただの知識欲による質問か?」


D「ああ。いや。そうだ。」


A「そうか。なら、ハッキリとした記憶ではないが、

  俺には生前の事をちゃんとある。それは、俺が生前に

  生きていたという、何よりの証拠にならないか?」





D「ああ。そうだな。すまない。失礼な事を言った。」


A「ああ。気にしてない」


C「どうしたんだよ、お前」


D「ああ、いや。その、俺と一緒に潰された、卵たちの事で、

  ちょっとな。もしかしたら俺たちも、産まれた瞬間から

  スタート、と、いうわけじゃないんだとしたら、と思うと」





C「次はちゃんと、産まれ られると良いな。」


A「ああ、そうだな。」


B「(小さく笑う)言いたい事はわかるけど、 産まれ られるって言葉、

  なんか変だね?」


D「確かにな。」


C「うるせーな。ってか、もしそれが本当なら、確かに次の生に希望を

  持てって言ったって、無理な話だわな。」


D「そうだな。ちゃんと生き られていないわけだし。」


B「また変な言い方するー」


A「良いよ。正直、俺からしてもかなり微妙な所だし、むしろこっちにいる

  時の方が、生きてるっていう感じがする。」


D「天国で産まれた、という事か。」


C「死んでるんだけどな。」


B「もう。やめなよー」


A「でも、ここでのお前らとの時間は、本当に楽しかった。ありがとな。

  俺に生きてるっていう実感をくれて。」


B「こちらこそだよ。私もこの4人で遊ぶの、すごく楽しかった。」


C「俺もだ。生きてた頃の80年なんかよりずっと楽しかった。」


D「パチスロよりもか?」


C「ああ、いや。それはぁ」


B「あー。これは、やめられないな?」


ABCD「(笑う)」


C「ってかよぉ。もしかして、俺が一番年上なのか?」


B「あ。そうだねぇ。私は当時14歳だし。」


A「俺は産まれてないし」


D「アリに年齢という概念はないな。」


B「でも、80年は生きられないだろうねー」


C「なんだよなんだよ、お前ら。年長者の俺を散々弄りやがってよぉ」


B「っていうか、年長者だと思ってた人が、一番年下だった。」


A「それは年下って表現で合ってるのか?」


D「来世ではちゃんとしろよ。」


C「うるせーぞアリが。踏みつけるぞ」


D「失礼な奴だ。」


B「ほんとだよ。」


A「もっと年長者らしい事言えよ。」


B「そうだそうだー」


C「おいおい、なんだよ。ここに来てまた袋叩きか?」


ABCD「(笑う)」





B「また、この4人で。来世で会えるかなぁ」


A「そうだな。まず、俺も産まれる所からだ。」


B「なにそれ。」


D「転生時に、記憶はリセットされるんだろう?

  会ってもわからない。」


C「流石働きアリ。ユーモアがない。」


D「ちゃらんぽらんには何も言われたくない。」


B「こーら。  ねぇ、せっかくだし、

   何か、私たちにしかわからない合言葉を決めない?」


D「だから、どうせ忘れる。」


C「お前、ほんっと。」


A「だったら、名前を決めないか?」


B「名前?」


A「ああ、来世で使う、俺たちそれぞれの名前だ。」


C「良いねぇ、産まれる気満々じゃん。」


D「面白そうだな。」


C「そうだよな、お前もアリだったから名前なかったもんな。」


D「必要がなかったからな。お前も、人生の大半は番号でしか

  呼ばれてなかったんだろう?」


C「いいや、そんなことはないぜ。実際は名前でも呼ばれてた。

  お前の世界と違ってな。」


D「なんだと。」


B「もう、やめなよ、2人とも。」


A「名前かぁ。どうせなら、カッコ良い奴が良いなぁ。」


C「印象に残るような強烈な奴が良いぞ。」


D「リセットされても、忘れないような、 な。」


A「難しいこと言うなよ。」


C「〇〇〇、とかどうだ?」(センスのない名前を挙げてください)


B「センスなーい」


D「アリのセンスでも同感だ。」


C「なんだとー?」


A「だ、そうだ。」


C「だ、そうだ、じゃねーよ、オメーもよぉ」


B「あ。待って。だったら私がつけたい。うーん、そうだなぁ。

  じゃあねぇー。 あなたの名前はねぇー

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【男3女1】天国ニート【コメディー・シリアス・天国ドラマ】 きよなが @kiyonagaga

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