第9話 非行集団の
大使館に戻ったビリー審議官は、トニーマクガイアについて、できる限りの情報を集めて、本間に送付した。
ビリー審議官の資料を受け取った京都府警察本部捜査1課の面々、感謝の気持ちと米軍の期待を感じている。
トニーマクガイア容疑者。
カリフォルニア州オークランド市出身で、世界最大の暴走族ヘルスエンジェルスのメンバーと判明した。
オークランド市は、サンフランシスコ市の北に、電車で30分くらいの小さな町であるが、メジャーリーグベースボールの名門オークランドアスレチックスの本拠地である。
この町から、さらに30分ほど北にバークレーというカリフォルニア大学バークレー校を中心にした街がある。
ジョンアレクサンダー氏と福井清治と糸魚川の母校という奇遇な距離感。
キャシーアレクサンダー容疑者。
被害者ジョンアレクサンダー氏の配偶者。
正式に入籍された妻である。
カリフォルニア州サクラメント出身。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校薬学部卒業で、薬学博士の称号を持つ。
ジョンアレクサンダーが所属していた部隊に従軍したことから、恋愛結婚に至る。
アメリカ人女性が、軍人に憧れて恋愛になることは、珍しいことではない。
ジョンアレクサンダーは、カリフォルニア州ロスアンゼルス出身のアメリカ陸軍中佐。
職業軍人である。
アメリカ陸軍特殊部隊、グリーンベレーの小隊長を勤めていた。
米軍としては、特殊部隊の小隊長という大きな戦力の軍人が殺害されたというのは、かなり衝撃的事件だった。
絶対に内密に捜査を進める必要があった。
この点、本間警部率いる京都府警察本部捜査1課は、信頼度が高かった。
事実、数日経っても、殺人事件があったことすら表面化していなかった。
捜査員の家族ですら、事件捜査中とは、感づいてもいなかった。
全員が箝口令を守り、通常の勤務時間で、帰宅していた。
至極平和な京都市内を演出していたのだ。
米軍の許可が出たことで、いきなりの記者会見という段取りになった。
ただ、記者発表をすることで、犯人に知られて逃走されないように配慮しなければならない。
木田警部補の配慮によって、捜査の進捗は発表しないことになった。
ただ、捜査はこれからと言っても、本間と木田と勘太郎が会見場に揃って、ある程度、進んでないはずはないというくらいは、ベテラン記者なら気付いて当然。
あからさまに訊いてくる記者もいるが、国際問題になりかねない事件で、話せるはずはない。
ということをわかっているベテラン記者が多くなるように、木田から各メディアに要請していた。
さて、キャシーとトニーの関係性を、勘太郎と佐武が追い始めた。
ビリー審議官の話しでは、不倫相手となっていたが。
夫ジョン亡き後、すぐに2人で暮らし出すような、あからさまなことをするとも考えにくい。
キャシーは、薬学博士の称号を生かして、山科にある私立京都薬科大学で、教鞭を取っている。
私立京都薬科大学は、ドイツ人ルドルフレーマンにより明治時代に設立された、歴史のある大学である。
トニーマクガイアは、この学校に留学生として入り込んでいた。
美人教師と教え子ではない。
キャシーは、とてもではないが美人とは言い難い。
若い男子学生にとっては、エロチックではある。
トニーは、キャシーの講義を受講していなかった。
京都薬科大学は、三条通りに面している。
その三条通りを挟んで向かい側の、担々麺専門店で、アルバイトとして働いていたトニーと客として来店していたキャシーが出会った。
同じ国の人間ということで、友達付き合いから始まったようだ。
そのうち、同郷ということがわかって、仲良くなっていったようだ。
当時、ジョンアレクサンダーは、諜報活動中で忙しく、自宅に帰らない日が続いていた、
ジョンの通訳という触れ込みで、大使館職員の奈良崎郁美が付き従うことが多く、キャシーの誤解と嫉妬心から、キャシーがトニーに毒牙を立てた。
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