第5話 まさかの毒殺

ジョンアレクサンダー氏は、福井と同じ歳の26歳。

遺留品から、アメリカ合衆国陸軍グリーンベレー所属の軍人ということがわかった。

本間は、すぐさま大使館に報告した。

翌朝、大使館の係員を真鍋勘助刑事局長が案内して来た。

京都府警察本部は、大騒ぎになった。

当然である。

同盟国とはいえ、他国の軍人が、殺害されて、日本の警察のトップ中のトップである刑事局長までがやってきたのである。

大使館の係員とはいえ、大使でないことが少しだけ、ホッとできる材料、

係員は、アメリカ合衆国陸軍のビリー審議官。

黒人で、軍服である。

『刑事局長・・・

 これは、通常の毒殺事件と

 して、京都府警察にお任せ

 できますか。

 たしか、京都府警察は。』

そう、京都府警察本部本部長は、真鍋勘一。

真鍋勘助刑事局長の父親である。

しかも、捜査1課には、真鍋勘太郎主任刑事がいる。

『勘太郎・・・

 ビリー審議官に、ご挨拶し

 てくれ。

 こいつが、我が愚息です。』

ビリー審議官は、勘太郎に握手を求めて。

『君が、有名な真鍋刑事で

 すか。

 ジョンのこと、よろしくお

 願いします。

 必ず犯人を逮捕して下

 さい。』

さすがに審議官、完璧な日本語である。

『お任せ下さい。

 ジョンさんが、グリーンベ

 レーということは、表に出

 ないように致します。』

勘太郎の後ろでは、小林と黒滝が震えていた。

だいたいが、京都府警察本部長すら会ったことはない。

ましてや、警察庁刑事局長等、雲の上の存在。

その2人に対して、1歩も引かない勘太郎に驚いた。

『警部補・・・

 勘太郎先輩って、

 凄い度胸ですね。

 本部長と刑事局長にも平

 気で。』

黒滝も首を縦にブンブン振っている。

『んなもん。

 あいつにとっては当たり

 前や。

 にちじょうちゃめしごと。

 我が京都府警察の、真鍋

 勘一本部長は、勘太郎のお

 じいちゃんやし。

 真鍋勘助刑事局長は、勘太

 郎のお父さんや。

 ビビったら、それこそおか

 しいやろう。』

小林と黒滝以下、刑事が何人も知らず、鑑識にいたっては、半数が知らなかった。

『上級採用試験にトップで合

 格して、数々の事件を解決

 に導いた敏腕刑事とは、知

 ってますが。

 それだけでも・・・』

小林は、口ごもってしまった。

自分が、どれだけ憧れようが、どれだけ追いかけようが、とてもではないが、追いつけるはずのない先輩だったのだ。

『いや・・・

 地位や階級は、追いつかへ

 んでも、捜査技術やノウハ

 ウは、追いつけると思うが

 なぁ。』

木田は、それこそ追い付いてほしいと思っている。

『現実的には、勘太郎はエリ

 ート中のエリートや。

 いわゆるキャリア組や。

 いつまでも、俺の下にいて

 くれへん。

 したら、勘太郎の跡継ぎは、

 お前に頼むで、小林。』

木田に認められていたことに気をよくした小林は、上機嫌になった。

『そうや・・・

 勘太郎は、おそらく今年

 いっぱいで本庁に移動に

 なるやろう。

 実績もある。

 木田の相棒を、誰にしよう

 か迷ってたんや。

 小林、頑張れ。』

本間までが、小林に期待していた。

『黒滝・・・

 お前しかおらへん。

 勘太郎先輩と佐武先輩みたい

 になろうぜ。』

黒滝と小林は、同期生で、警察学校で、隣り合わせの机で励まし合った仲だった。

『い・い・いや・・・

 俺は、まだまだ・・・。』

黒滝が、ドギマギしていると。

『何を言うてんねん。

 福井亡き後、俺の右腕は、

 お前しかおらへん。

 今日の活躍は凄かったで。

 小林君、黒滝のこと頼

 むで。』

佐武が黒滝と肩を組んだ。

本間警部と陣内課長依頼。

京都府警察では、敏腕刑事と敏腕鑑識がコンビを組むことが多い。

木田警部補にも、橋口鑑識課副課長が着いていた。

『佐武・・・

 梨田先生が、鑑定結果知ら

 せてくれはったで。

 FAXや。』

橋口鑑識課副課長が、わざわざFAXを持ってきてくれた。

資料を読んでいた佐武が。

『ど・ど・毒殺・・・。』

刑事達が固まってしまった。

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