第3話 魔界がらみ

『なんだかグルメ要素が大き

 くなってきましたね。』

勘太郎が、冗談にもならないことを言った。

ラーメンがグルメと言えるのかどうか。

松ヶ崎の豆禅近郊では、大人数の刑事や鑑識課員がうろちょろして、異様な光景になってしまったが、事件につながるような遺留品は出なかった。

ただ、小さな情報があった。

福井が、豆禅に、お土産として天狗のお面を置いて行ったらしい。

黒い顔で、鼻ではなくくちばしが強調されている。

勘太郎の後輩、小林の判断で勘太郎に写メールを送信した。

写メールを見た勘太郎は、即座に小林に電話をした。

『小林・・・

 鑑識何人か連れて、鞍馬寺

 に向かってくれ。

 俺も佐武と向かう。』

あわてて木田が、駐車場に追い付いた。

勘太郎のいつもの覆面パトカーに3人が乗ってスタート。

日産SR26ーDETTをチューンアップして、フジツボのパワーマフラー、パワーゲッターが爆音を上げる。

京都産業大学の前を抜けて山道に入ると。勘太郎の覆面パトカーは加速。

数分で貴船口を通過。

あっという間に、叡山電鉄鞍馬駅の前のS字の広場に着いた。

木田は、てっきり鞍馬寺山頂まで走って上がると思っていたが。

『今日は、体力温存せなあき

 ませんので、ケーブル乗り

 ましょう。』

勘太郎の意外な答えに、ある意味ホッとした。

『こんなに小さかったっけ。』

佐武の驚いた声に、勘太郎が答える。

『ケーブルが小さかったんち

 ゃうで。

 俺らが、成長したんやと思

 うよ。

 たぶんやけど。』

『サブちゃん・・・

 前にケーブル乗ったん、何

 年前や。』

木田が、笑いながら訊く。

『幼稚園の遠足です。』

いくらなんでも、前過ぎる。

鞍馬山は標高584メートルの低い山だが、急な坂が多い。

ケーブル山頂駅から、本堂までは、急ぎ足で歩いた。

たまたま本堂の前にお坊様がおられたので、勘太郎は写真を見せて訪ねた。

『和尚様・・・

 お訊ね申します。

 この天狗のお面は、どこで

 売っているのですか。』

和尚様が気の毒そうに。

『そちらは、叡山電鉄鞍馬駅

 前の土産物店で販売されて

 おります。

 お疲れ様でございます。』

3人は、顔を見合わせた落胆した。

『ところで。

 この写真の人、午前中に見

 かけませんでしたか。』

福井清治の写真を見せると。

『護法魔王殿で、熱心に拝ん

 でおられましたが。

 外人さんを案内されておら

 れるようでしたが。』

勘太郎、手を打った。

予想が完璧に当たった。

木田と佐武は、ケーブル山頂駅に向かう道に行こうとしたが、勘太郎は、山道に入って行く。

『おい、勘太郎。

 どこ行くねん。』

木田は、至極当たり前のことを訊ねた。

『福井さんが。外人さんと

 いた護法魔王殿に。

 外人さんの手がかりが残っ

 てないかと思って。』

勘太郎は、その外人が何かカギを握っているような気がしている。

護法魔王殿は、数千年昔に、宇宙から魔王が降臨した場所とされている。

『護法魔王尊って、大天狗の

 ことなんです。

 大天狗って、牛若丸に武芸

 を教えた源氏の守り神

 です。』

勘太郎は、その神殿に、何かカギが残っていると考えていた。

木田と佐武は、なるほどと思いながらも、しんどいので、へき易している。

護法魔王殿の思い出ノートなる記録帳に、福井とジョンアレクサンダーという連名の記録があった。

『赤山禅院に向かうと書いてあるな。』

木田が、感心していると。

佐武が小林に電話していた。

『真鍋先輩のGTR見つけた

 んで、駐車場にいます。』

小林、またもやファインプレー。

『小林・・・

 悪いけど、駅前の土産物屋

 のどこかで、天狗のお面購

 入してくれ。

 それから、福井の写真見

 せて、立ち寄り確認や。』

勘太郎から、そこまで聞けば何か見つけたと。誰でもわかる。

小林は、連れてきた鑑識課数人と天狗のお面のお土産店を探して、福井の写真を見せて訊ねて回った。

30分ほどで、木田と勘太郎と佐武が合流。

『みんな・・・

 よぅ頑張ってくれたなぁ。

 おおきにやで。

 そやけど、忙しいのは、こ

 れからや。

 赤山禅院まで着いてきてく

 れるか。』

全員が、福井への思いでまとまっているため、嫌という選択肢はあるはずないのだが。

やはり、腹が減っては戦は、であると考えた木田の気転だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る