第28話輝ける君ファイボス・アポローンが神々しい

「それは本当ですの!?」


リェーデが言った。


「となると誰が? さっきの女官……?」


フェルゼリファも慌てたように顔を青くしている。

そして二人そろってシェレネのほうを向き、同時に叫んだ。


「「そしてどうしてあなたは毒を飲んだというのにそんなに平然としていられますの!?」」


「いえ……まったく……大丈、夫……じゃ……ない……ん、です……けど……」


「「もっといけませんわ!」」


彼女はいつでも無表情なので分からないが、今頃毒が回ってきているところだろう。

次第にぼんやりとしていく心にシェレネは小さく呟いた。


「アポロン、さま……」



眩い光にリェーデとフェルゼリファは思わず目を瞑る。

まるで太陽が目の前に現れたようだ。


「あーあ、シェレネ姫も大変だね」


その声に二人は瞑っていた目を大きく見開いた。

驚くほど美しい顔が、目の前に現れたから。


「あれ? 人間ちゃんたちもいたんだ。まあ別にいてもいいんだけどね」


「あああああああぽろん様!?」


輝ける君アポロン。

医療や芸術を司る神である。


「ひら、解毒剤作ってくれる?」


「はい」


眩しいほどの笑顔でひらにそう言ったアポロン。

もちろんリェーデとフェルゼリファは彼を見たのは今日が初めてだからあまりのかっこよさに固まっている。


「ん? どうかした? 二人とも」


「い、いえその……」


視線に気づいた彼は二人の方を振り返る。

そして口ごもった彼女たちの視線の先を見て、なるほど、というように頷いた。


「ああ、ひら可愛いよね。わかるよ」


いや、そうではないのだが……

確かにそうだけど、と困ったような顔をしている二人だが、彼は気づいていないのでもう仕方がない。


「ええっと、とても可愛らしい方だと思いますわ……」


そうこうしているうちにシェレネは目を覚まし、何事もなかったかのようにアポロンと世間話をして……と言っても話す内容は天界のことばかりなのだが、二人に別れを告げた。


「シェレネ姫、また何かあったら言ってね」


「はい、また……今度……」


そんな神と神による会話について行けるはずもなくただただ治療の速さに呆然としていたリェーデとフェルゼリファに、シェレネは声をかけた。


「あ、あの……ひらさん、が……お茶を……淹れなおして……くれたので……どうぞ、飲んで……ください……ね……?」


「え? ああ、いただくわ」


はっとした二人は少しだけ微笑みを浮かべる。


「それにしても誰が? わたくしたちを狙うだなんてよほど身の程知らずなのね」


そう、この三人を狙ったのなら、必然的に大国五国が敵に回るということだ。

ディアネス神国、リズル王国、センラ王国、フレア王国、そしてユリアル王国。


「あの……」


おずおずとシェレネがそう口にした。

なにかあるようだ。


「どうかされましたの?」


「えっと……わたし……たまに、は……陛下の……お役に……立ちたい……」


何のことか分からない二人は首を傾げて数秒静止した。

それからフェルゼリファは何か閃いたというようにあ、と声を漏らす。


「つまり刺客を私たちだけで捕まえたいということ?」


「なんだ、そういうことだったのね」


リェーデもそれを聞いて納得したようだ。


「では」


フェルゼリファはシェレネの口元に人差し指をあてる。


「何があっても恨みっこなしですわよ?」


「はい……」


そういったシェレネは少しだけ嬉しそうな表情をしていた。ような気がした。



「少し失礼しますわね」


そう断りを入れてからリェーデはシェレネを抱え上げる。

きゅっと捕まった彼女に、リェーデは驚いたような表情を見せた。


「あなた……」


「はい……?」


「軽すぎませんこと!? まるで綿毛のようですわ!」


お世辞なんかではない。

本当に、本気で彼女は言っているのだ。


「私……そんな、に……軽いですか……」


「もちろんよ!」


「わたくしにも試させて!」


あまりにもリェーデが信じられないと目を見張っているので、フェルゼリファも興味を持ったようだ。

そっとシェレネの腰に手を回す。


「ほ、本当ですわ……」


二人はこう思ったはずだろう。

神ってこんなに何でもありで本当に大丈夫なのか……?


――――――――――――――――――


ごめんなさい漫画の原稿に追われておりました

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