第23話戻ってきたかもしれない日常

「コレー様? 今遊べますかー?」


「シェレネ様! もちろんですよ!」


ウィルフルが仕事に行ってしまい天界に遊びに来たシェレネ。

いつものようにデメテルの宮殿に行った彼女は庭にいたコレーに声をかけた。


「ニューサに行きましょう? お母様、行ってきまーす!」


「デメテル様、コレー様お借りしますね!」


宮殿の奥にいると思しきデメテルに一礼したシェレネはコレーと手をつなぎニューサへと向かう。


「コレー様、エラ、治りましたよ!」


「よかった。すぐ熱が下がってよかったです!」


この前まで熱でせっていたエラ。

熱も下がり体力も回復し、今日は元気に働いていた。

何度も何度もアポロンを呼びつける訳にはいかないのでシェレネは白衣の天使ことコレーに診察を頼んだのだ。


「そういえば、今度ゼウス様が何かするとおっしゃっていたのを聞いたのですけれど……何か知ってますか?」


「知らないです! どこで聞いたの?」


これだけ仲がいいのにいまだに両者敬語で話しているのが微笑ましい。


「この前ヘラ様のところに行ったときに」


「へえ~。あの方のことですからまた宴会でも開くのでは?」


実の娘にもそんな言われ方をしているゼウスはいったい……


ニューサの野にやって来た二人。

花畑に座り込んだ二人は各々花冠を編みだす。何かほかの種類の花はと探していたコレーが、あら、と声を漏らした。


「どうかされたんですか?」


その場にシェレネがやってくる。


「懐かしいなって思って。これ、私がハデス様に初めて会った時にハデス様がくださったお花ですから」


「ずっと咲いてるんですか? 素敵ですね」


その時にもらったのなら、確かに太古から咲いている花だ。


「枯れてほしくないです。枯れてもいいけど、完全にじゃなくて春になればまたお花が咲いてくれるような枯れる。これだけはずっと、変わらずここにあり続けてほしいの」


柔らかな風が吹き、二人の豊かな金髪がふわりと揺れる。

対照的な色なのに似通った二人の仲は誰であろうと引き裂けない。



「国王陛下、ご報告が」


政務室にやって来たジャンがウィルフルにそう告げる。

不機嫌そうな顔でウィルフルは彼のほうを向いた。


「何だ?」


「最近ジルダー王国が不穏な動きをしていると密偵から」


「そうか」


不機嫌だった顔がさらに不機嫌になる。

少し考えてから彼はジャンに言った。


「引き続き密偵を送り込んでおけ。一人では足りぬ。先日のあれもジルダー王国がやったのだろう」


「御意」


一息ついてから彼は空を見上げる。


「ジルダー王国……勇者伝説……」


誰もいなくなった政務室で彼はぽつりと呟いた。



「ただいま帰りました!」


「おかえり、我が愛しの妃よ」


天界から帰ってきたシェレネ。

窓のそばに降りてきた彼女をウィルフルは抱きかかえる。

そしてそのまま、彼女の目尻に口付けを落とした。


「ちょっと陛下!?」


「なんだ、いやか?」


恥ずかしそうに顔を隠そうとしているシェレネの手をつかんで、彼は反対側の目尻にも口付けを落とす。


「またコレーと遊んでいたのか? 毎日飽きぬものだな」


ははは、と彼は笑った。

だがそれを聞いたシェレネはそっちこそ、というようにむっと頬を膨らます。


「私にはそんなにずっとお仕事をしていられる理由がわかりません。陛下はすごいです」


きらきらと光る夜空の星。

星のニュンペーが回復してからは、どの星もまえよりいっそう美しく輝いている。


――――――――――――――――――


シェレネとコレーは白と黒で対照的だけど二人とも綺麗な金髪なのでほんとにそっくりで、そして対照的です。でもペルセポネの時は黒いのでこの二人の組み合わせは最強なんじゃと思ってます(語彙力)

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