第20話赤い星
「ますます深刻な状況です……」
「そうねえ……」
昨日の数百倍深刻そうな顔で二人は言った。
リラは足を捻って歩けない。
サラは吐血の可能性がある。
エラは高熱。
エラ以外は仕組まれているとしか思えない。
しかもこの状況で今まで病気になんてかかったことのなかったエラが高熱を出すなんて何か裏がありそうなのだ。
「とにかく、絶対に部屋から出ないで下さいね。私もずっとおそばにいますから」
「わかった、わ……」
扉に鍵をかけ、ララはシェレネのそばによる。
「本当は天界に行けたらいいのですけれど……今この状況で出ると危険ですし……」
「大丈夫、よ……ララが……いるし……私、は……神だから……死なない……」
結局神はいかなる状況においても「神だから」と言ってしまうらしい。
仕方がない事なのだ。
口癖になってしまっているのだろう。
そんなシェレネにララはため息をついた。
「だからって気を付けないのは無しですからね。聖妃様もすっかり神様になったようでいいのか悪いのか……」
呆れたような笑い声が部屋に響く。
誰にも分からないぐらい僅かに、シェレネも微笑んだ。
「そういえば……ララ、は……特技、って……ある……?」
外に出られないから暇なのだろう。
なんとなくシェレネがそう切り出す。
「特技ですかあ……うーんそうだな……」
基本彼女たち4人は何でもできるので難しいようだ。
少し考え込んでいたララは何かを思い出したようにあっと小さく声を上げた。
「そうだ私、絵が上手って言われることはありますよ。自分ではそうでもないと思いますけれど」
「そう、なのね……今度、見せて……くれる……?」
絵が上手。
なかなか素敵な特技である。
「もちろん!」
少しうれしそうにララが返事をする。
「ほかの……3人、は……?」
「ほかの3人かあ……えーっと、サラが刺繍でリラが料理でエラが掃除だったかな?」
「エラ、ずいぶん……家庭的、なのね……」
サラの刺繍は綺麗だ。
城内のテーブルクロスはサラが刺繍したものが多い。
リラの専門はお菓子作りである。
たまに彼女が作ったケーキが食卓に並んでいたりする。
そしてエラは掃除上手である。
とりあえず彼女が掃除すれば城が建てられたばかりの時の綺麗な部屋に完璧に戻る。
そんな風に少しの間話をしていた二人。
ふいに、扉を叩く音が聞こえた。
「ララ様、ララ女官長!」
「どうかしたの?」
焦ったような声にララは首を傾げる。
「向こうで女官の一人が……なにかしたようで……女官長を呼んでほしいと……」
なぜこの状況で。
だがなにかやらかしたというのなら行かなければならない。
「聖妃様、部屋にいてくださいね?」
そう言うと彼女は部屋から出て鍵を閉めてから走ってその女官のもとへと向かった。
「まったく……何をしたというの!?」
案内されながら彼女は呟く。
と、いきなり彼女のことを呼びに来た女官が彼女の方を振り向いた。
「ごめんなさいララ女官長」
「え?」
にっこりと笑いながら、女官が白い布でララの口元を押える。
「んんー!?」
抵抗しても女官は離さない。
ふらりとよろけたララはかすれた声で叫び声を上げた。
「聖妃様……にげっ……て……」
それは、叫び声とは思えないほどにか細い声だった。
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