第19話青い星
「リラとサラが絶対安静。どうしましょう聖妃様……」
「ふたりもいなくなるなんて……」
先程よりいっそう深刻そうな声でララとエラが言った。
王宮とは、信頼出来る者は本来居ない場所である。
誰だも裏切る可能性がある場所なのだから。
だが4人はニュンペーである。
だから信頼できた。
「聖妃様をなんとしてもお守りしないと……」
「というか私たち先程からアポロン様に迷惑をかけてばかりです……」
3人で同時にため息をつく。
「怖いです……だってリラとサラの次は私かもしれないしララかもしれないし聖妃様かもしれないんだもの」
今の状況からしてその3人以外なんてありえない。
いつまでもこうしている訳にはいかないので今日はとりあえず仕事に戻る。
とはいえもう夜なのだが。
「おやすみなさいませ聖妃様、陛下がいらっしゃるから大丈夫とは思いますが何かあればすぐに呼んでくださいね」
「わかったわ……」
二人が部屋から出ていき一人になったシェレネは呟いた。
何がやりたいんだろうなあ、と。
「我が妃よ。大丈夫か? 怪我はしていないか?」
少ししてから部屋に帰ってきたウィルフルは開口一番にシェレネにそう聞いた。
にっこりと笑って彼女は答える。
「大丈夫ですよ。リラが私が怪我しないようにしてくれたみたいで」
「そうか。それならよかった。あとでリラに礼を言っておこう」
そういうところを真面目にするところは彼のいいところである。
「そういえば」
なにかを思い出したかのように彼は彼女に言った。
「昼間、ジャンと一緒にいただろう。なぜ私でないんだ。あのあと気にくわなかったからそっとジャンの仕事を増やしておいたぐらいだ」
それを聞いて、シェレネはこれ以上ないというほど呆れた顔を見せた。
「ジャン様はたまたま通りかかっただけですし、陛下呼んでも来なかったじゃないですか。あとなんなんですかその地味な嫌がらせ」
今頃ジャンは驚いていることだろう。
引き受けた覚えのない仕事が机の上に山積みにされているのだから。
しかもウィルフルからのものと一目でわかるようにメモ書きが挟まれているはず。
「ジャン様は労われるべきだと思うんですけど……神様とはいえ女性二人は重かったでしょうし……」
「神だから大丈夫でしょ」
心配するシェレネにウィルフルは間髪入れずにそう答える。
「そういうところは神の遺伝子感じます」
まったくである。
そんな彼女の言葉に笑いながら、彼は彼女の輝く金髪をそっとなでた。
彼女の白い頬に口付けを落とす。
「おやすみ、我が愛しの妃よ。愛している」
王宮の朝というものは。
不穏な空気と悲鳴が似合うものである。
諸説あります。
「エラ!? 大丈夫!?」
「ごめんララ、今仕事に……」
そういいつつ歩き出すエラ。
朝起きたばかりの彼女にララは違和感を覚えていた。
足元がふらついているように見えるのだ。
本当に大丈夫なのか?
そう思った瞬間、彼女の足がもつれた。
「きゃっ」
こけかけたエラをララが慌てて受け止める。
「あれ……」
エラに触れたララが不思議そうな顔をした。
「エラ、熱くない?」
「え? 言われてみれば寒いような熱いような……」
熱がある?
確認するためにララはエラの額に手を当てる。
とほぼ同時にララは目を大きく見開いた。
「全然大丈夫じゃないわ! 酷い熱!」
「え、嘘……」
ぼんやりとした顔でエラが言う。
ララはそんな彼女の腕を掴んでベットに押し戻した。
「今日1日は寝てなさい! 仕方ないわ、私ひとりで頑張るから!」
残るはあと2人。
そしてきっと次は。
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