第16話デート?

「陛下ー! ただいま戻りました〜」


朝一番で城に帰ってきたシェレネ。

そんな彼女を見てウィルフルは彼女を抱きしめる。


「我が愛しの妃よ。アテナたちとの夜は楽しかったか?」


「はい! 皆さん素敵な方ですけど、もっと素敵だって言うことがわかりました!」


にこにこと笑うシェレネにウィルフルな微笑みかけた。


「ああでは私にもかまって欲しいな。今日は1日我が妃を堪能するとしようか」


「え、ええ!?」


彼は彼女の手をとる。

そしてそのまま彼女を抱き上げた。


「僕と一緒に遊びに行こう?」



連れていかれた先は闇の森。

明るく開けた場所に2人は腰を下ろす。


「ニューサも素敵ですけどここのお花も綺麗ですね〜」


自分の近くにあった色とりどりの花を眺めながらシェレネは言った。

飛んでくる鳥や蝶と戯れながら彼女は花を摘んでいる。

ふいに、ウィルフルの髪を何かがふわりとかすめた。


「はい、陛下。似合うと思いますよ」


シェレネが嬉しそうに微笑む。

何が何だか分からないウィルフルは自分の頭の上に手をあてた。

柔らかい花びらが彼の手に触れた。


「花かんむり……?」


何かを確認しようと彼がそれを外そうとする。

だがシェレネは慌てて止めた。


「だめですよ、外さないでください!」


「なぜだ?」


心底不思議そうな顔でウィルフルは聞き返す。

そんなに彼にシェレネは少し恥ずかしそうに言った。


「だって外しちゃったらおそろいに出来ないから……」


きゅっと持っていたもうひとつの花かんむりを握る。

あ、ウィルフルが昇天寸前だ。

興味はないが。


「ああ、我が妃は本当に可愛いな」


ウィルフルがシェレネの手から花かんむりを奪う。


「ちょっ……」


ふわりと、シェレネの輝く金髪が揺れた。


「ああ。よく似合っている」


満足気にウィルフルが言う。

もともと美しい花々はシェレネのドレスの黒とのコントラストで鮮やかにより一層美しく見えた。


「我が妃には花が1番だな。どんなに煌めく宝石も勝つことなどできないだろう」


「そ、そんな……」


彼女の透き通った白い肌がうっすらと桃色に染まる。

堪えきれなくなったウィルフルがシェレネに手を伸ばした。


「我が……妃よ……」


「ちょっ、陛下!」


「陛下、人の庭で何をやっていらっしゃるんですか?」


揺れる白銀の髪。

夜空を閉じ込めたような瞳。


「もうジャン、もうちょっとぐらい見ていても良かったじゃない!」


闇の森の神王陛下のお出ましである。

クリスティンはあのままシェレネとウィルフルのいちゃいちゃを見ていたかったらしく彼にずっと文句を言っているが。


「ジャン……なぜこのタイミングで……」


「なんかいるなと思って降りてきたら陛下と聖妃様がいちゃついていたところを目撃した俺の気持ちを百字以内で述べてください」


「ああ、俺のジュリアは今日も可愛いな。どうしてこんなに愛らしいのだろう。愛しすぎて離したくない。ずっとそばにいて欲しい。だと言うのになぜ俺には仕事が……ジュリアがいてくれたら仕事が百倍捗るというのに……」


きっちり百字である。(ただしかぎかっこは含まない)

だがこれが正解のはずが……


「なんでわかったんですか? 一言一句全てが合っているんですが」


まさかの模範解答……!


「ほらほら、くだらないことやってないで帰りましょう?陛下とシェレネ様を邪魔したいんですか?」


クリスティンがジャンに言った。

やれやれと言ったようにジャンは帰り道を歩き出す。

シェレネはそんなジャンを見てくすりと笑った。


「ジャン様、本当にクリスティンが好きなんですね」


「私だって我が妃を愛している」


ウィルフル、変なところで見栄を張るな。

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