第15話女神と男神

「私がここよ」


「くっ、なら私はここです!」


再び宮殿に戻った5人。

今度は寝る場所取りでアルテミスとニケが張り合っていた。


「なんだかこういうのって楽しいわねえ」


のんきにヘスティアが笑う。


「もう! ヘスティア様!」


「笑わないでください! 真剣なんですよ!」


別にアルテミスとニケは仲が悪い訳では無い。

というか仲がいいほうだと思う。

だがアテナのこととなると別である。


「ほらほら2人とも。喧嘩しないで。私の横はふたつも空いてるぞ?」


「「アテナ様……!」」


(さっきからこのくだり100回ぐらい見た気がするなあ……)


彼女達がにとってはこれが普通なので、そっとしておくことにしよう。


「ねぇねぇ、あなた男と一緒にいて嫌だとは思はないの?」


アルテミスがシェレネに言った。

女子会といえば自分の好きな男性についてなどが一般的だったりするが、思い出して欲しい。

この4人は全員男嫌いである。

彼女は少し考え込む。


「うーん……たまに怖い人もいますけど嫌だとは思いませんね……私が素敵な人たちに恵まれたんでしょうか?」


4人が衝撃を受けた顔をした。

"嫌だとは思いませんね"のところに反応したのではなく、"素敵な人たち恵まれたんでしょうか?"のところに反応したのである。

彼女はこれを特に何も考えず素で言っている。

それだけ、彼女の心が清らかなのだろう。


「あなたいいわね。いるだけで人を幸せにできるわ」


羨ましそうにアルテミスがため息をつく。

シェレネは微笑んだ。


「私はアルテミスが羨ましいですよ。かっこいいし、自分の意志がはっきりとしていて」


「っ……!」


多分この場にシェレネに勝てる者はいない。



「はあ……我が妃がいないとこんなに寂しいものなのだな……」


シェレネがいないため遅くまで仕事をしていたウィルフルはその手を止めずにため息をついた。

彼の背後に誰かの人影ががうつしだされる。


「ウィルフル。何を悩んでいる?」


「兄上……!」


そこにいたのは一日の仕事を終わらせやってきた冥王ハデス。

ウィルフルは彼の方をむく。


「我が妃をアテナとアルテミスに拉致された……」


「それはなかなか面倒な面子だな」


少し面白そうな顔でハデスは言った。

彼は決して笑わない者なので笑いはしないのだが。


「さっきペルセフォネが来ていてな。いなくなるといつも冥府の静かさを思い知る」


「彼女たちの存在は偉大だな」


静かな静かな夜。

輝く月のおかげであたりはぼんやりと明るい。

そこに響くのは静かな男神2人の声と明るい女神たちの声だけ。

天界と地上で語らう彼らはそれはそれは楽しそうだ。

きっとそれぞれ誰かを思っていることだろう。

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