第13話乙女の集い

「コレー様、またあしたー!」


「はい、またあした!」


手を振って2人は別れる。

シェレネはコレーと遊び終わりちょうど帰るところだった。

その時である。


「ふふふ、みーつけたっ!」


「え?」


いきなり誰かに腕を掴まれる。

それは多分、2人。

そして後ろから声がした。


「いきなりごめんなさいね、シェレネちゃん」


「ヘスティア様! と、ニケ様!」


振り返った彼女は驚いて声を上げた。

彼女の腕を掴んでいたのは炉と竈の女神ヘスティアと勝利の女神ニケ。

2人ともくすくすと笑っている。


「今日はアテナちゃんとアルテミスちゃんと一緒にご飯を食べるの。あなたも一緒にどうかと思ったのよ」


「そうなんですね! でも陛下が……」


「それなら大丈夫よ。ちゃんと連絡しておいたから」


その言葉を聞きシェレネは微笑んだ。


「ならお邪魔させていただきますね」



「アテナちゃん、アルテミスちゃん、シェレネちゃんを連れてきたわよ〜」


ヘスティアが2人に向かっていった。

2人がこちらを振り返る。


「いらっしゃい、シェレネ。久しぶりだね」


「お腹すいたから早く食べましょ」


そうですね、と頷きシェレネは席に座る。

暖かい風でふわりと彼女達の髪がなびいた。

今は夏である。

だから、夜に外で食べても問題ないほど暖かいのだ。


「ふふ、それにしても今日は陛下は1人で晩餐なんですね。きっと帰ったら何か言われるだろうなあ」


シェレネは笑った。

確かに彼女はみんなと食べられて楽しいのだが、ウィルフルは1人である。

でも多分シェレネは気にしてない。

向こう側から1人のニュンペーが走ってきた。

彼女はアテナに何かを耳打ちする。

アテナはそれを聞きにやりと笑った。


「やっと来たか」


どうやら誰かが来たらしい。

食事を一旦やめ、5人は門の方に歩き出す。

そこに居たのは……


「アテナ! 我が妃をどこ……に…… 我が妃よ……?」


「あれ? 陛下?」


相当急いできたのかうっすら汗をかいている。

アテナとアルテミスはそんなウィルフルを見てお腹をかかえて笑っていた。


「あはは、アテナ様天才ねー!」


「くはは、まさか本当に引っかかるとは…… あー面白い」


「え? え?」


なんのことか本当に分からないシェレネとウィルフル。

よく見ればニケもヘスティアも笑いをこらえている。


「いやー、ごめんごめん。シェレネのことをウィルフル様が溺愛していると聞いているからね。どの程度なのか試してみたくて」


「だからウィルフル様のところに手紙を送ったのよ。『あなたの大切なお姫様は預かった』って」


「一緒になって遊んじゃってごめんなさいねえ」


つまり、先程ヘスティアが言っていた"連絡しておいた"はこの事だったのだ。

安堵したようにウィルフルは息をつく。


「アテナやアルテミスはともかく姉上まで……心臓に悪い遊びはやめてくれ……」


「あらあら〜」



一息ついたウィルフルはシェレネの手をとった。


「帰ろうか、我が妃よ」


だがアテナとアルテミスが帰らせるわけが無い。


「ちょっと、シェレネは今日私たちと一緒にいるのよ。あなたは大人しく帰りなさい」


「男子禁制だぞ。アルテミスに何をされてもいいのならいてもいいが」


アルテミスは重度の男嫌いである。

程度は違えど男嫌い達が集うこの場所に男がいていいわけが無い。

かくして追い出されたウィルフルは1人虚しく帰路についた。

別に思ってないけど可哀想に。

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