第12話世界王の冠
「へぇー、そうだったんですね」
「そうそう」
話を聞き終わったシェレネはそう言った。
そして少しだけ考えてからウィルフルに問いかける。
「陛下、世界王の冠って創造神に返したんですか?」
「あー……」
ウィルフルは天井を仰いだ。
そして彼女の方をむく。
「まだ預かってて欲しいって言われてここにあるんだよね。見たい?」
「えっと……見れるなら見たいですけど……」
ウィルフルはシェレネを抱き上げた。
そしてそのまま廊下に出る。
そして彼は城の地下に向かった。
長い階段をおりた先の小さな扉。
彼はその扉を押し開ける。
「わあ……」
中にあるのはその世界王の冠だけだ。
だと言うのに広い部屋中が光で照らされている。
「確かにこれは創造神の物って感じですね……」
その冠は想像した以上に綺麗で神々しかった。
細部まで作り込まれたこのティアラはきっと、ヘファイストスが作った物だろう。
「そろそろ創造神も安定してきたと思うから返してもいいと思うんだけどね」
「確かにそうですね」
2人は部屋から出て、再び廊下を歩き出す。
「ジルダー王国がね、敵視してくるから早く返したいところなんだけど。創造神には何か考えでもあるのかな?」
「意外と何も考えてない可能性もありますよ?」
「創造神抜けてるところあるもんなあ……」
ウィルフルが笑う。
つられてシェレネも笑った。
これだけ噂されているのだから創造神は今頃くしゃみをしていることだろう。
「まあでも敵視されてるだけなら今は大丈夫だと思いますよ」
「そうだといいね」
部屋に戻った2人はまた話し出す。
「今日もコレー様と遊んできました!」
「ふーん。楽しかった?」
「とっても!」
楽しそうに今日の出来事を語る彼女にウィルフルは微笑んだ。
こんなふうに彼女の笑顔が見られることが嬉しかったから。
「兄上のところには行ったの?」
「今日は行ってませんよ。少なくとも私は。ニューサで遊んでました!」
多分コレーは帰りにでも寄って行ったことだろう。
ハデスの顔を見ないと安心できないだとか何とか言って。
デメテルに見つかれば冬になりかねないので一目見るだけなのだが。
「でねでね、今日はヘラ様にも会ってきたんです!」
「
驚いたような顔でウィルフルは聞き返す。
シェレネは面白そうに笑った。
「久しく会っていないから寂しいって。この前あったばっかりなのにだいぶ前に感じてしまうんですね」
ヘラからすればコレーのように毎日会いたいのだと思うが、そんな事をシェレネが知る由もない。
察したウィルフルはそのことを誤魔化すように言った。
「
ふふふ、とシェレネが笑う。
明るくて柔らかい笑い声にウィルフルは癒されていたに違いない。
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