第5話似たもの同士
「いや〜、皆さん旦那さんに愛されてていいですねぇ。ということで僕は去りますよ。今後ともこの有能なヘルメスをよろしくお願いします!」
何となく微妙な空気が流れていたこの場を、ヘルメスが締める。
また光と闇に真っ二つに割れた神々は各自仲のいい者と共にその場を離れた。
「さっきの兄上達のお嫁さんを語る姿は凄かったよ……」
「どうやったらあんなに恥ずかしげもなく淡々とあんなこと言えるんだろうね」
心底驚いたというように、ゼウスとライティルが顔を見合わせる。
そして2人はまた仲良く歩き出した。
「兄上は人を褒めるのが得意なのか? どうすればあのような言葉が紡ぎ出せるのか私には分からない」
ウィルフルがハデスに問う。
「ペルセフォネだからだ。他のものは知らぬ。お前こそ得意だろう。シェレネ姫のことなら確実に」
そんな彼にハデスは答えた。
そうか? とウィルフルが笑う。
そんな2人の肩を、誰かが叩いた。
2人が少し振り返る。
そこに居たのはむっとした表情のコレーとシェレネ。
彼女達は彼らの前に回り込んだ。
「もう、なんで恥ずかしげもなくあんなことが言えるんですか!?」
「意味がわかりません! 少しは抑えてください! 聞いてる私たちの気持ちを考えて!」
口々に2人は叫ぶ。
だが、ウィルフルとハデスは首を傾げた。
「私の愛しい人を語るのになぜ恥ずかしがらねばならない?」
「我が愛しの妃に関することならば私は何も抑えることは出来ないが?」
不思議そうに彼らは言う。
そんな自分たちの夫に2人はため息をついた。
「もうだめですね……救いようがありません……」
「そうですねぇ……」
仕方がないというようにコレーとシェレネは手を繋ぐ。
そしてそのまま下に見えるニューサの野に降り立った。
「ハデス様、ウィルフル様、そこで気が済むまで語り合っててください。私はシェレネ様と遊ぶので!」
「あ、ああ……」
彼らにくるりと背を向け2人は花を摘みだす。
時折明るい声を響かせながら。
花冠を編んで、野原を飛び回って。
「ああ、可愛いな」
ウィルフルが呟いた。
「楽しそうだ」
「そうだな」
似たもの同士の兄弟は、同じく似たもの同士の自分たちの妃を眺めながらそっと微笑みをこぼした。
「兄上! 僕は直々に訴えに行こうと思うんです! お願いですから許可してください!」
「なにを言っているんだ。そんなことさせられない。なぜそれほどまでに執着するんだ? お前が生まれた頃にはもうそれは決まっていたんだ」
「なんで? ずるいと思いませんか!?」
若い男の子の声と、諭すような彼の「兄」の声。
若い男の子は勢いよく扉を閉めた。
「なら、許してくれないというのなら。僕は勝手に行きますから!」
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