第58話冥界の王妃
これ書くのめっちゃ楽しかったのでまた神話書きますね。
ギリシャ神話はすごく面白いです。今度は何書こうかな~
もうすぐ第二章です。楽しみにしててね!
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昼下がり、ペルセフォネは優雅にミントティーを嗜んでいた。
仕事を終えたハデスが部屋に入ってきた。
彼女は彼を振り返りにっこりと笑う。
「おかえりなさい、ハデス様!」
ハデスは驚いた。
つい先日まで自分を拒絶し一言も話してくれなかったペルセフォネが自分から話しかけてきたからである。
「ハデス様、私ね」
にっこりと笑いながら彼女は告げる。
「ハデス様のこと嫌いって訳じゃないみたい」
「……それは……本当か……?」
目を見開き彼は聞き返した。
彼女はその言葉にうなずく。
「ほんとです! こっちに来て一緒にお茶しませんか?」
自分の隣を指さして彼女は言った。
ハデスが彼女の横に腰を下ろす。
彼女のティーカップの中身を見て、彼は首を傾げた。
「見たことのない、というか知らない匂いだな」
「わかりますか?」
ふふふ、とペルセフォネが笑う。
「私が新しく作ったんです。でもあげませんよ? 全部私が飲むので! 別のお茶入れますね」
「……名前は? なんという名前なんだ?」
彼女の方をじっと見つめながら彼は言った。
彼女は満面の笑みで振り返る。
「ミント。コキュートス川のほとりに生えてるんです。本当は名前なんてない雑草でいいんですけど、可哀想だから仕方なく名前をつけてあげたの」
ハデスの顔がみるみるうちに蒼白になっていった。
震える声で彼は彼女に声をかける。
「ペルセフォ……」
「ハデス様」
だが、その声はペルセフォネによってさえぎられた。
「浮気はいけませんよ? 絶対にしないでくださいね?」
笑っているが、心做しか目が笑っていないような気がする。
「あ、でも」
何かを思いついたのか、彼女は言った。
「真面目なご長子ですから過去にも未来にもこの先永劫絶対にそんなことなさらないですよね。だってハデス様は誰よりも常識をお持ちですから!」
「あ、ああ……」
ハデスはペルセフォネの微笑みに恐怖を感じていた。
その笑顔の圧力に彼は一生浮気はしないと心の中で誓う。
それ以来、彼が彼女以外を愛したことは無い。
「ハデス様! 遊びに来ましたー!」
「ペルセフォネ」
コレーはハデスに抱きついた。
彼は彼女をぎゅっと抱きしめる。
「また来たのか」
「だめですか?」
「いや、問題ない」
"決して微笑まぬ者"が明るい春の女神に笑いかける。
「……昔と比べるとだいぶ性格が丸くなったな」
「え?」
はるか昔のことを思い出しながら、彼は言った。
なんのこと?というように彼女は首をかしげる。
「メンテーの時は、今ほど丸くなかった」
彼が笑う。
コレーはその言葉にむっとした表情を見せた。
「まだあの雑草のこと覚えてるんですか? 早く忘れてください! 一生思い出しちゃだめです!」
それを聞いでハデスは声を出して笑い始めた。
「前言撤回だ。変わっていないな、あの頃から」
「もう、何なんですか? 忘れるまで口をきいてあげません!」
「忘れた忘れた。一生思い出さない」
「ほんと?」
コレーがハデスを見上げる。
「本当だ。私が愛しているのはお前だけだ」
「うん!」
ペルセフォネ。
目も眩むような光。
今日も冥界には明るい声が響いている。
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