第27話エピローグ

追い出されたヒューベル王国の王子と王女たち。

国に帰った彼らは父王からこれでもかというほどに叱られたそうだ。


「何よ、あんなに聖妃大好きで怖い人だなんて、知らなかったわよ!」


「あ、あの公爵夫人頭おかしいわよ。出て行けって言ったらサクッと出て行こうとしたんだもの!」


「世界で一番美しいこのボクの求婚を断って一介の公爵家の次男に嫁ぐなんて……」


口々にあり得ないと言い続ける彼らは、父親からも母親からも呆れられていた。


「お兄様、どうして急に帰ってきたの?もう少しあそこに居れたらいけたかもしれないじゃない!」


エルウィンに言われこの国に帰ってきた双子の王女は理由が分からないゆえに文句を言った。

だが、そんな二人の言葉にエルウィンは首を横に振る。


「仕方ないよあの国の軍事力はこの国にとって脅威だ。前線第五小隊だけで国を滅ぼせるだなんて言われたら従うしかないだろう?」


「まあ、何ですって!?」


偶然その会話を聞きつけた王妃が声を上げる。


「お母様?」


「なんでそんな重要なことを早く言わなかったの! 貴方たちはこの国が滅ぼされてもいいのですか!?」


「え、でも帰らなかったらって……」


焦ったように言った王妃に、エルウィンが答える。


「そんなことはどうでもいいのよ! あなた! 今すぐ追加で謝罪の手紙を書いてちょうだい!」


その声を聴いた国王は慌てて手紙を書き始めた。


「いいこと? あなたたちは物事を軽く受け止めすぎだわ。国王陛下は神なのです。その神に武力行使を考えさせるほどの無礼を働いたことがまだ分からないの? お母様は悲しいわ」


「……ごめんなさい……」


3人はそろって、少し不満そうに王妃に謝る。

諦めたように王妃はため息をついた。


「良いわ。私がもう一度貴方たちに常識を叩き込みます! 何年かかるかは知らないけれど、分かるまで結婚おろか婚約もさせません!」


「そんな!ひどいわお母様、可愛い娘が嫁ぎ遅れてもいいの!?」


「そんなこと知りません!」


彼女たちの反抗も虚しく、3人は王妃に連れられて部屋の奥に消えていった。



「陛下、ヒューベル王国から手紙が届いていますが……」


「王国はなんと?」


仕事の手を休めることなくウィルフルは尋ねる。


「子供たちに代わって非礼を詫びたいと」


「そうか。『許してやるが次はない』とでも返しておけ」


「承知しました」


彼が去ってからウィルフルはため息をつく。


「……許しがたいのだがな。命拾いしたと思え」


くつくつとのどを鳴らしながら、彼は笑う。

そんな彼の様子を見て、その場にいたシェレネは困ったようにふふっと笑った。

束の間の二人だけの空間にはほんの少し甘い空気が漂っていた。

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