第11話なんだかよくワカラナイ

止める侍女や慌てるフィアリエは気にせず、ロゼッタはエントランスのドアを開ける。


「お世話になりました~」


そういって歩き出そうとした瞬間……


ドンッ


ロゼッタは誰かにぶつかった。


「ごっ、ごめんなさ……!」


「まったく……」


見上げた先に見えたのは、流れる銀糸の髪、真夏の青空のような青い瞳。近衛騎士団の紺の軍服。

氷の王子のご登場である。


「なにか胸騒ぎがすると思えば……どういう状況だ?」


不審そうな目つきでその場を見回す。

総出で慌てる侍女や執事たち、一人蒼白な顔で右往左往するフィアリエ。

そして何より目立っているのは荷物を抱えたまま呆然としているロゼッタである。


「え?あの……王女様が公爵家に嫁ぎたいと言っておられるので政略結婚の私は邪魔かと……」


「え?ちょっ、なにいってるのよ!」


フィアリエが慌てる。

そんな様子のフィアリエを、クロフォードは睨みつけた。


「お前が出て行けと言ったのか?」


「えっ、そのっ……」


「お前が出て行けと言ったのかと聞いている!」


「だ、旦那様!」


怖くなったのか、ロゼッタが止めに入った。


「私が勝手に出ていこうとしました!旦那様と本当にに愛し合える方と結婚なさったほうがいいと思って……」


嘘をついたロゼッタをクロフォードは少しの間見つめていたが、諦めたようにため息をついた。


「私がいつ王女を好きだといった?」


「え?別におっしゃってたわけではないですが……」


「私はこの王女と今さっき会ったばかりだ。わかるわけないだろう。」


まあ本当は「私が愛しているのはロゼッタだけだ」と言いたいのだろうが、やっぱりクロフォードには難しいようである。


「では私はまだ公爵家にいていいのですか?」


ロゼッタがじっとクロフォードを見つめる。

クロフォードがあからさまに動揺を見せた。

ロゼッタは気づいていないが。


「あ、ああ。まだいていい……」


おい!

“まだいていい”ってどういうことなんだ!

しかし、ロゼッタは安堵したように微笑みを見せた。


「ありがとうございます!お屋敷のみんなとお別れなのは悲しかったから……」


ロゼッタの言う「お屋敷のみんな」とは、侍女たちと執事たちのことであろう。

それを察したクロフォードは静かに落胆していた。


「そうか……馴染めているようで何よりだ……」


と、そこで声がした。

もちろん、フィアリエのものである。


「ちょ、ちょっと!私を放ってお話なさらないでください!」


「ん?ああ。まだ居たのか。」


おいクロフォード。

仮にもフィアリエは一国の姫だから、普通なら不敬罪になっているぞ〜

そんなことはお構い無しに、クロフォードは言葉を続けた。


「城に帰らなくていいのか?」


「もぉ、公爵様ったらひどぉい!そんなに早く帰さないで欲しいですぅ♡」


クロフォードはこれでもかと言うほど顔をしかめた。

ロゼッタもあまりいいようには見ていない事だろう。


「仕事に戻る。」


とりあえず、無視して仕事に戻ることにしたようだ。

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