第10話※ロゼッタは神です。
「ヒューベル王国の第二王女……!?」
クロフォードは心底驚いたという顔でフィアリエを見下ろした。
彼的には驚いた顔なのだと思うが、その真っ青な瞳の眼光はフィアリエを鋭く貫いている。
「公爵様、初めましてぇ♡」
そんなことは気にせず、フィアリエが声をかける。
にっこりと笑った後周りを見回したフィアリエは、視界の端にロゼッタをとらえた。
「……あの方は……もしかして妹さんですかあ?」
怪訝そうなかおで、フィアリエが聞いた。
「何を……」
「え?」
「何を、言っている?」
「こ、公爵様?」
クロフォードの顔が、氷のごとく冷たいものとなっていった。
氷の王子のお出ましであ……分かった!わかったから!謝ればいいんでしょ!すいませんでした!
「妹だと?」
「だ、旦那様……」
ロゼッタのその一言を、フィアリエは聞き逃さなかった。
「旦那様……?ならあなたは……」
フィアリエが目を見開く。
「私の妻に向かって、妹だと?わたしを怒らせたいのか?」
もうすでに起こっているのに気づいていないのか……?
「あ、あなたが公爵夫人っですって?」
震える声でフィアリエが尋ねる。
そんなフィアリエに、ロゼッタは最上級のお辞儀をした。
「レスト公爵夫人、ロゼッタ・ヴィオラ・レストと申します。」
「そんな……結婚しているなんて聞いてないわ……」
昼下がり。
クロフォードは仕事があるからと不機嫌そうに王宮に戻っていった。
と言うことで、フィアリエがロゼッタの部屋に突撃してきているわけである。
「ふーん。あなたが公爵夫人ですって?」
「え、ええ、そうですわ……」
さて皆さんお気づきだろうか。
この光の神と永遠の女神の娘で光の使者のロゼッタ、自分が神だなんてことすっかり忘れている。
大丈夫なのか?
フィアリエはじっとロゼッタを見つめると、唐突に笑い出した。
「よくこんなかわいくもなくて冴えない子を公爵夫人なんかにしたのかしら?おかしくて笑っちゃう。どうせ政略結婚なんでしょ?悪いことは言わないから出ていきなさいよ。わたしが公爵夫人になるんだから!私なら心の底からクロフォード様を愛して差し上げられるわ!」
「……そうですか……」
ロゼッタの少し落ち込んだような声にフィアリエは笑顔を見せ
(サクッと出ていかないことなんかわかってるのよ。いくら政略結婚でもそんな簡単に出てくわけがないわ。貴族の政略結婚はそういうものだもの。公爵様が私のことを好きになってあなたを追い出すまでいたら、プライドとか傷つくんじゃない?あなたの前で本当の愛を見せつけて絶望の淵に……)
「せっかく慣れてきたのにお別れなんて唐突ですけど、旦那様に好きな方ができたなら仕方ありませんね。借金なら一生かけて返金させていただきます。お世話になりました~」
「え?」
「お、奥様、本当に出て行ってしまわれるのですか!?」
「え?もちろん。短い間だったけどありがとう~」
そういうと、ロゼッタはエントランスに向かって歩き出します。
「え?ちょっと待ちなさいよ!」
「あ、王女様、失礼します。」
そうだ……
ロゼッタはこういう子だった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます