第9話奥様、離縁はおやめくださいぃ!旦那様は奥様がお好きですからぁ!

「奥様!」


ステラリヨンが叫んだ。

花を飾っていたロゼッタの腕をつかみ、つかつかと歩き出す。


「ス、ステラリヨン?どうしたの?」


「どうもこうもありません!フィアリエ王女に負けてしまっていいのですか!?」


「え?旦那様がフィアリエ王女がお好きだと言われるのなら実家に帰りますよ?あ、借金はどうしましょう……一生かけて返すしかないですね……」


けろっとした顔でロゼッタが言い放つ。


「い、いけません奥様!私どもは奥様以外を奥様と認めることはありません!」


慌てたようにステラリヨンが言った。

使用人たちは知っている。

実はクロフォードはロゼッタにべた惚れだと言うことを。

だから、よっぽどのことがないと離縁なんてしないはずなのだ。

あの氷の王子だとか氷の騎士などと言われているこの公爵家の当主が先代公爵に是非に、と望んだのだ。

簡単に手放されては使用人一同無礼になってでも全員で殴りに行くことだろう。


「そう?でも政略結婚だし……」


政略結婚ではない。

あの公爵様のプライドと気質と性格で聞こえてしまっているだけである。


「ともかくドレスにお着替えくださいませ。フローラ?奥様のお化粧は頼んだわ。」


「もちろん!」


「え~?」



ロゼッタの部屋にやってきた二人は、怒涛の勢いでロゼッタをにしていた。

一番ロゼッタに似合いそうなドレスを衣装室から引っ張り出し、化粧を施していく。

三十分ほどで、完璧なレスト公爵夫人ロゼッタ・ヴィオラ・レストが出来上がった。

今まで一番早かった。

最新記録である。

しかも、完璧でクオリティはいつもよりも上のように感じられる。


「奥様、そろそろ旦那様が……!おきれいですね!」


「ほんと?なんだか私じゃないみたい……」


「いえいえいえ、化粧も薄くしかやっておりませんから全部奥様自身のものですわ!」


慌ててフローラが訂正を入れる。


「奥様、旦那様が帰ってまいりますよ。」


「は~い、今行くわね。」


ロゼッタはエントランスへと向かう階段を下りて行った。



「戻った……」


「おかえりなさいませ、旦那様。」


クロフォードが一時的に家に戻ってくる。

氷のようだったその表情はロゼッタを見てだんだんと色味を帯びていく。


「ああ。今日はいつもと違う格好をしているな。何かあったか?」


「それが旦那様、お忙しいところ申し訳ないのですが、少し問題が……」


「問題?」


クロフォードが聞いた時だった。


「ちょっと!お戻りになる前に知らせなさいと言ったでしょう?もうお戻りだなんて聞いてないわ!」


サロンのほうから、金切り声のような声が聞こえた。


「誰かいるのか・・・・・?」


「公爵様ぁ~♡」


「ヒューベル王国第二王女殿下……」


諦めたような口ぶりでセラが告げる。


「フィアリエ・ザーンセンシア王女です……」


「ヒューベル王国の第二王女……!?」


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