第7話フィオーナの裏の顔

そのころ、兄エルウィン・ザーンセンシアと双子の妹フィアリエ・ザーンセンシアはある屋敷へと向かっていた。


「ねえお兄様、フィオーナはうまくやってると思う?」


「大丈夫じゃなかな?この美しいボクの妹だからね。放っておく男なんていないんじゃないかな?神は女好きが多いっていうし。」


この場にウィルフルがいれば激怒していたことだろう。

ゼウスやポセイドンだけを見て神を判断するな、と。

そもそもウィルフルはゼウスたちと仲がいいわけではないし、どちらかと言えば馬が合わないので一緒にするなと言うような気もする。

ウィルフルは基本ハデスとしか仲が良くない。


「うん!私も頑張らないとねー!」


フィアリエはにっこりと微笑みながら意気込んだ。




「国王陛下ぁ~♡」


「仕事だ」


「あ……」


当のフィオーナ・ザーンセンシアは、ことごとくウィルフルに無視されていた。

内心焦るフィオーナと内心ほっとするシェレネ。

圧倒的にシェレネが有利である。

フィオーナもそう感じたのだろう。

フィオーナはシェレネの私室に急いだ。




「リデュレス王国第一王女殿下はご在室?」


部屋の前に立っていたリラに勢いよく声をかける。


「はい、は今ご在室ですが。何か御用でしょうか?」


「取り次いでくれる?会いたいの。」


「……確認してまいります。」


そう返事をすると、リラは扉の奥へと消えていった。




「聖妃様、外に殿がお越しですが……」


「……通して、いいわ……」


シェレネは少し考えてからそう言った。



「許可が下りましたので中へどうぞ」


フィオーナはそう言われてにっこりと笑みを浮かべた。


「私にひれ伏す覚悟はできてるのかなあ……」


小さな声でつぶやくと、彼女は扉に手をかけた。


「二人で会うのは初めてね、殿。通してくれてありがとう。女官は下がってくれない?」


「……承知いたしました……」


ララが渋々といったように部屋から出る。

フィオーナはシェレネのほうに向きなおった。


「ねえ、まだ妃にもなってないくせに国王陛下の隣に立つのはおかしいんじゃない?」


強めの口調でシェレネに迫る。


「私に国王陛下を取られるのが怖いんでしょ。かわいそうな人。自分の力で私に対抗しなさいよ。」


どうやらフィオーナは、ウィルフルの塩対応をシェレネのせいだと思っているらしい。


「ねえ、何か言ったらどう?」


「私、は……なにも、して……ない……」


「神様然とするのやめたら?無表情だし感情がこもってない声で言われても心に響かないのよ。さっき何言ったの?もう忘れちゃった。」


「……感情、はこもらない……陛下でも無理……」


「ふーん、あっそ。なら聖妃に選ばれたのが運の尽きね。一生感情がこもらないなんてかわいそう」


フィオーナがあざ笑う。


「こんな子の相手して何がいいの?もう私あなたが話してた内容全部忘れちゃった。残念ね。一つも覚えてない。っていうか、あなた話してた?話してても面白くないから部屋に帰るわ。」


フィオーナがシェレネにくるりと背を向ける。


「私がここの正妃よ。黙ってみてなさい、お人形さん。」


残されたシェレネは、ただただ呆然とするしかなかった。

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