第13話 夏のある日の神々の宴会 後編
「シェレネちゃん、こっち向いて〜」
「あわわわわ」
「シェレネ様! 可愛いわ~!」
「そそ、そんな……」
「シェレネ、横に来ないか?」
「ええ、ヘラ様……!」
「あ、私なんかにお構いなく。ヘラ様の所に行ってきてあげてください」
「コレー様……」
女神たちに囲まれたシェレネは混乱していた。
彼女は人気者である。
理由は、可愛いから。
男性陣も人気は高いのだが、少しでも何かしようものならウィルフルとハデスとヘラとコレーに殺されるため何もできないのである。
「陛下、少し女神様方とお話してきますね」
「……分かった」
なんだか少し嫌そうにウィルフルは言った。
他の神々に人気すぎることが気に食わないのかもしれない。
「シェレネちゃん、ウィルフル様とはどうなの〜?」
「人間界って楽しいのかしら?」
「聖妃様だなんて大変でしょう?」
「ウィルフル様もそろそろ王様をお辞めになればいいのに……」
「でも、それでは人間界が凄いことになるわよ?」
「あの……えっと……」
女神たちの中心になってしまった彼女は質問攻めにされていた。
あまりにも一気に質問されたため彼女は少したじろぐ。
「ねえねえ、教えてちょうだいよ〜」
「ええと、ウィルフル様とは特に特別なことは……」
「それでそれで?」
答え始めた彼女に女神たちは興味津々である。
「えと、人間界は楽しいといえば楽しいですよ?」
「そうなの〜」
「聖妃もそんなに大変ではないですし……」
「うんうん」
「陛下が王様辞めてしまうと、大勢の罪のない人達が路頭に迷ってしまいますから辞められないです……」
「あらあ、残念」
彼女たちは口々に言った。
むっとしたヘラが声を上げる。
「邪魔をするでない!」
「ええ〜、シェレネちゃん〜」
「ええい、うるさい奴らだな」
しゅんとする女神たち。
そして何が何だか分からないシェレネ。
その時、誰かがシェレネに声をかけた。
「お楽しみのところ申し訳ないですが」
「ジャン様!」
森の神王、ジャン・ジャックである。
「聖妃様と俺は今から仕事の話をするので向こうに連れていきます。こちらへ、聖妃様」
悔しそうな顔をする彼女たちをよそに、ジャンはシェレネをウィルフルの元へ連れて行った。
「大丈夫でしたか? 聖妃様」
「ありがとう、ジャン様」
彼があの場所から連れ出してくれたことに安堵するシェレネ。
「陛下、そろそろお暇しませんかっ!?」
耐えきれなくなった彼女はウィルフルに声をかけた。
「そうだな。このままでは我が妃がとられてしまいそうだ」
そんな彼女に彼は笑いかける。
「まだ時間はあるのだろう。一緒に来ないか?」
「ではそうしようか、我が妃よ」
4人はハデスとコレーとともに会場を後にした。
「このお花綺麗ですね!」
「ですね!」
笑いあうコレーとシェレネ。
彼女たちは本当に仲がいい。
ウィルフルとハデスはなんだか愚痴を言っていた。
そして、ジャンも。
「ハデス、聞いてくれ。私には我が妃がいると言うのに、ほかの娘を私にあてがおうと……」
「まだそうなのか?大変だな」
「陛下、ジュリアを妃に勧められても断ってくださいね。俺の大切なジュリアが……」
「安心しろ。私は我が妃以外妃になどせぬ」
「私にも何やら鬱陶しい視線がよくあって困っていてな。私はペルセフォネがいいのだが」
……ここは嫁自慢大会決勝戦の会場か?
「陛下、今日楽しかったですね」
王宮に戻ったシェレネはウィルフルに言う。
「そうだね。ディオのは余興がいいから」
「女神様に囲まれたのは大変でしたけどね」
苦笑する彼女にウィルフルは真顔で返す。
「僕のシェレネが取られるかと思うと気が気でないよ」
「何言ってるんですか〜!!!!」
上ではまだ楽しそうな声が響いていることだろう。
ディアネス神国は、もうすぐ実りの季節。
秋の訪れはもう間近に迫っている。
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