第11話 王女様の一目惚れ 後編
「陛下……リェーデ姫、お綺麗、でしたね…………」
「そうだな、我が妃よ。兄君のレイ・リーリアス王子も来ていたようだが会えたのか?」
「はい……会え、ました……」
「そうか。それはよかった」
ここはリズル王国。
リェーデ姫とリュール王子の結婚式典が行われていた。
シェレネとウィルフルも王族であるため、式典には絶対参加である。
というか、ディアネス神国ほどの大国が行かないとなると同じく大国のリズル王国とセンラ王国の顔に泥を塗ることになる。
それは避けなければならないだろう。
大抵の王族は国王代理として王位継承権1位の王太子を出席させているのだが、シェレネとウィルフルは国が潰えない限り永遠に王と聖妃である。
代理はいない。
ディアネス神国は意外に大変である。
「今日、疲れた……ので……もう、休み……ましょう……か……私、湯浴み……して、きます……ね……」
「わかった。行っておいで」
「国王陛下、しばしこちらでお待ちくださいませ。聖妃様、どうぞこちらへ」
薄笑いを浮かべながら、侍女は言った。
「聖妃様、、今準備していますので、お茶をお飲みになってお待ちくださいませ」
侍女が善良そうな微笑みで話しかける。
だが、シェレネに背を向けた彼女は真っ黒な笑みをこぼしていた。
「どうぞ」
「ありがとう……」
そういって、シェレネはカップに口をつける。
「あ…………」
ガシャンと大きな音がした。
綺麗なティーカップが粉々に砕け散っていた。
シェレネはそのままぐらりと大きく傾くと、そのまま床に倒れこみ意識を失った。
「ふふ、上手くいったわ。私ったらいい仕事したじゃない」
侍女はシェレネを抱えると、そのまま部屋を後にした。
「聖妃を連れてまいりましたわ、ドルラ大臣様!」
彼女を迎えたのはリズル王国の大臣であり公爵。
リェーデがシェレネに侮辱されたと思っているため、彼は彼女を憎んでいる。
「御苦労だった。これで、目障りな聖妃を排除することが出来る」
「褒美は期待してるわよ!じゃあ、国王の方をどうにかしてくるわ」
それだけ言い残し、彼女は部屋に戻って行った。
「我が妃はまだなのか?」
「奥にいらっしゃいますわ。もう少しお待ちを」
平然と言い放つ侍女に、ウィルフルは違和感を覚える。
彼女が言うには、シェレネは奥である。
それなのに、彼女はかたくなに扉を開けようとしない。
絶対に、中を見せようとしないのだ。
「顔が見たい。通せ」
「それは困ります。こちらでお待ちになってくださいませ!」
「夫がいて何が悪い。しかも私は国王だが?」
不機嫌を隠そうとせず彼は彼女に圧をかける。
そんな彼の怖さに、侍女は怖気づいた。
「で、でも、聖妃様は……」
「どうした? 中にいないならどこにいるか教えよ。今すぐに」
「…………チッ、そこまでわかっているのね。自分で探してみなさいよ。あなたの聖妃でしょ?」
吐き捨てるように言った彼女は、ウィルフルを置いてその場から逃げ出した。
「おい、待て!」
廊下に、彼の声だけが虚しく響いた。
「うぅん…………ここ……は?」
「初めて会うな、ディアネス国の聖妃殿」
意識の戻った彼女に、大臣は声をかけた。
「あなた、は…………?」
怯えたように聞いた彼女を、彼は鼻で笑う。
「名乗っても意味は無い。もうすぐそなたは死ぬのだからな。我らがリェーデ姫の恨み、今こそ晴らしてくれる!」
「へ、陛下…………た、たす……け……て……」
かすれた声でシェレネが言ったその時だった。
ガタンと扉が開き、大きな人影がこちらにやってくる。
「そこまでだ、大臣。我が妃に害をなすものを許すほど、私は寛容ではないぞ?」
そこにいたのは、薄笑いを浮かべたウィルフルだった。
ものの数分で、この大きな王城からこの部屋を特定したのである。
「捕らえよ。反逆者である」
国王らしい威厳のある声で彼は言った。
衛兵が大臣ををとらえる。
「な……っ! 私は反逆者では……っ!」
「そなたは国賓を殺そうとしていたのだ。反逆者であろう」
彼は国家への反逆者として、残りの一生を牢獄で過ごすこととなった。
「陛下、あのお茶、結構美味しかったですよ?」
「!?」
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