鳩村もしくは夕凪ツナギの火曜日のチームメイト

 “明日来るやつ、オレの場所に来い! 赤毛って言えばわかんだろ”

 唐崎のテレパシーを受けて素直にツナギは席を立ち、ちょうど反対側の端にいた彼のもとに移動する。教室の奥から階段を下りてきたのが国立だろう。緊張した面持ちで長い髪をひとつの三つ編みにして肩から流すように垂らしている。何故か大量の紙資料を抱えていた。互いにちょうど机ひとつ空けた場所に座ると自己紹介が始まった。

 “オレは唐崎 ナギだ。音楽活動について特に興味がある”

 “私は国立くにたちもかです。顔認識をしないとテレパシーが上手くいかないタイプで……端末を持てないので色々ご迷惑をおかけすると思いますが、宜しくお願いします。あ、今のような世界になった推移に興味があります。特に”

 “端末を持てない?”

 “あの……重度の機械破壊体質で普通の連絡端末だと3秒でクラッシュします”

 “マジか……いるんだな、そんな奴。ああ、だからその紙の資料の山ってことな。了解”

 唐崎は見た目よりも周囲に対して理解を示す人柄のようだ。そこに少し安堵する。お前は? と視線を向けられツナギは端末の文字表示機能を立ち上げた。

 『僕は鳩村もしくは夕凪ツナギ。テレパシーの受信のみしか使えないから面倒をかけると思います。シールドも使えません』

 2人の目が驚きに開かれるのを見ながらツナギは文字を表示していく。

 『受信範囲は相当広いので呼んでくれればすぐに向かいます。僕は使えない理由を知りたいし、どうやってみんなの能力が発現したものかも知りたい。この先、どんな未来になるのかも気になる。だから、選びました。宜しくお願いします』

 “まぁ……そんだけ端末打つの早きゃいいんじゃねぇ?”

 “えっと、鳩村さん? 夕凪さん? ツナギさん?”

 『どれでもお好きな呼び方で』

 “オレも呼ぶのはどっちでもいい。つか、夫婦別姓どころが両方使ってるやつ初めて見た。……なぁ、テレパシーどちらかったら不得手な2人だろ、直接話さないか?”

 “いいの?”「ありがとう、唐崎さん。鳩村さんもよろしくお願いします。端末うっかり壊さないように気を付けます」

 「ありがとう、国立さん、唐崎さ」

 「あ、お前はさん付けするな。男にさん付けされんの嫌いなんだよ」

 「唐崎、さっきのこともありがとう」

 「別に、あれはオレがムカついただけだ。鳩村、夕凪、ツナギ……ツナギだな。いいだろ。女は呼び捨て嫌うよな」

 「私も名前の呼び捨てで大丈夫です。唐崎さん、いい人ですね」

 「はぁっ!? いきなりわけわかんないこと言うな!」

 「ご、ごめんなさい!」

 「まぁ、照れないで」

 「照れてねぇ! つか、お前は落ち着きすぎなんだよ!」

 「そう?」

 「あー、もういいや。で、明日はどうする?」

 「えっと、入学論文を見せ合うのはいかがでしょう。それを見せ合えば互いの傾向? もわかりますし、研究方向も考えやすいと思うんです」

 「いいな、それ。そのあとは臨機応変だな」

 「賛成」

 「よし、ゲート前あたりで落ち合おう」

 唐崎の言葉に頷き合い、3人は同時に立ち上がった。ちょうど次の登校曜日のメンバーを集めるテレパシーが飛んできたのだ。

 「じゃあ、また明日」

 「はい、よろしくお願いします」

 「遅刻するなよ」

 見た目では派手な唐崎が気遣いがあって、時間にも厳しそうで本当に人は見た目には寄らないと色眼鏡で見ないようにしないとと改めて自身を律する。国立も気弱に見えて考えをしっかり持っていると感じる。ツナギは今後が研究以外も楽しみになってきた。

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