特殊機関との繋がり
「ああ、そのコートはなるべく着用してほしい。まだ一般商品化されていないいわばプロトタイプだからデータの提供を条件に作ってもらったんだ。未来進化研究の未来に繋がる一品。自分の身で効果や改善点を見出し研究に役立ててください。おっと、僕は会議があるから喜王さん、後は頼んだよ」
性別問わず魅了する極上の笑顔で生徒達に手を振って半弓は出て行った。程度の差はあれどほうけている新入生を見渡し喜王はため息をついた。
“だから表に出てほしくないんだよな、あの人……”
そんな声が聞こえツナギは小さく笑った。あまりにも切実なボヤキという感じで響いたから。ツナギは注意をしないと自分に向けられていないテレパシーも聞き取ってしまうほどの受信特化の能力なのだ。その代わりなのか送信もシールドも使えない。その理由を知りたくて大学に来たのだ。
喜王がそんな反応を見ていたがツナギは気付かなかった。背後から飛んできた紙飛行機に気を取られて。注目を集めながら紙飛行機は喜王の伸ばした手にふわりと着地した。カサカサと広げて一読した喜王は得意げな笑みを浮かべた。
“質問があったから答えるね。コートの提供先はBCC、
教室が一気にざわめいた。BCCという正式名称はネーミングのセンスのなさから殆ど浸透していないが、通称のエアならば誰でも知っている。空気のように当たり前に触れ合える世界に、というキャッチフレーズで交流・文化活動に救済を与えた先駆者集団。なりたい職業トップ3に必ず入っているが内情が謎に包まれている機関だ。
“マジかよ、エアと繋がりあんのか、この学科”
“レアどころじゃない”
“知られたら襲われちゃうよ”
“ここ選んで良かったー!”
“大学自体が関係機関だとしたら、就職有利!?”
“よし、絶対繋ぎとる!”
“先輩! 取材先にエアを選べたりするんですか⁉”
“えー、質問回答です。エアは取材先選択だけじゃなく、資料提供もあります。その他まぁ色々”
“色々って何!?”
“いっぺんにわかっちゃ面白くないでしょう。そろそろ進めていいかな、みんなー”
興奮冷めやらぬ雰囲気の中、とりあえず話を聞く姿勢になったのを確認して喜王は満足げに頷いた。
“関係機関は他にもありますが、追々わかってくることです。それぞれの姿勢によって早くに関われるか、縁ないまま終わるか変わるでしょう”
わかりやすく教室内がピリッと緊張した空気に変わる。喜王は穏やかな声を響かせた。
“少なくとも現段階でコートの提供を了承したのです。現段階で彼らは君達の入学を歓迎しているということは確かです。それぞれが研鑽し、協力し合い、良き未来へ貢献できるよう頑張ってほしいと思います。それではチームごとに次の登校日の互いの行動を確認してください。決まったことを僕に報告したら本日は終了です”
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