第3話

昼はスパゲティだった。朝、母さんがスープスパゲティ用のソースを作っておいてくれたから、僕は麺を茹ででソースを温めればよい。

鍋が沸騰するのを待ちながら、ふと琴乃のことを考えた。

彼女の母は、昼間は外出しがちなので、今現在、琴乃は一人きりで昼ごはんを食べているのであろう。

琴乃と僕は幼稚園は別だったが、家も近所で、互いに母がシングルマザーという境遇からか、昔から不思議と気が合った。

琴乃は持ち前の気の強さが災いしてか、同級生の女子達や教師には疎まれていた。顔よし、スタイルよしというハイスペックな彼女は、マウンティングを重んじるクラスの女子達からは特に毛嫌いされていた。僕自身、琴乃が「遊んでる」とか「ビッチ」などと罵られているのをよく耳にした。

けれども、どういうわけか、琴乃は藤田さんにだけは気を許しているらしく、頻繁に二人で何かしら話をしている姿を見かけた。

沸騰したお湯にスパゲティの束を散らせた。母さんの真似をしてみたけれど、うまくいかない。

麺が二本、鍋の外にこぼれてしまった。

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