第7話



--------卯月楓にとっての隼斗--------



------みんなは気づいていない。彼の魅力に。見た目が暗いだのオタクっぽいだの言われてるけど、前髪上げてる時の彼は私の見てきた男性の中で1番かっこいい。彼は気づいていないし、学校で彼はそれを見せようとしない。ラーメン屋さんでバイトしてる時にだけ見せる素顔。客として初めてそれを見た時に私は身体に電流が走る勢いで驚いた。

(こっそり来てたのは神無月さんにバレてたみたいですあはは...)


そしてなにより、誰よりも優しいのだ。酷く傷ついている人が居れば颯爽と駆けつけ、優しく慰めてくれる。表向きはただのお人好しかもしれない。けど、彼の一言一言が私の心を癒してくれた。


そんな彼と私の出会いは3年前のとある雨の日。楓はその時の出来事の記憶に蓋をしていた。しかし、彼との出会いを思い出すと毎回頭に浮かんできてしまうのだった。



〜卯月楓の記憶〜



-------「お前ってズルして楽しいの?嘘つきー!ギャハハハ!」


クラスの女子に高笑いされながらそんなことを言われた。


中学1年生の終わりに私は、家がお金持ちだからお金を使って成績のトップにいるという噂を流された。もちろんそれは嘘だったのだが、思春期に入りかけてる少年少女にとって噂というものは半分娯楽になっていた。ほんとか嘘かも分からない噂を流し、自分もそこに便乗する。酷い集団だと、私は思った。


そして次の日の放課後私はクラスのイケメンと呼ばれる人に告白をされた。


「君に一目惚れしてました!付き合ってください!」


「ごめんなさい、私恋愛に興味無いんです。」


そのまま私はその人を置いて帰ってしまった。


翌日に事件は起きた。


------ガラガラッ


「あっれー?とおるくんを傷つけた最低女じゃーん!よく学校に来れたねぇ!ギャハハハ!」


あのイケメンって呼ばれる人はとおるって言うんだ。知らなかった。私は無視して机に向かい、机を見た瞬間言葉を失った。


《死ね!》《親の力を使った嘘つき》《生きる価値ないから学校来なくていいよー?》


油性のペンだろうか、擦っても消えない。そして机の中にはビリビリに破れたノートと教科書。落書きの数々。虫なども入っていた。


私は我慢の限界だった。


涙を溜め、そして...




-------学校から逃げ出した。






「くそっ!くそっ!なんで私がこんな目に合わなきゃ行けないの...!」


走りながら自問自答を繰り返した。


私は...人の何倍も努力して!娯楽にかける時間を全て捨てて勉強して!運動も!料理も何もかも!!


..........それなのに。


「くっ...うぅ...なんでよぉ...」


私は人生で初めて泣いた。内側から込み上げる感情を抑えきれなかった。止めても止めても流れて出てくる雫。


その時近くで雷が鳴り始め、大雨が降った。



「もう。最悪だなぁ。」


その時。


近くで《ゴン!》


と、鈍く響く音が聞こえた。恐る恐る見に行くと猫がトラックに轢かれてぐちゃぐちゃに潰れて惨たらしく死んでいた。



あぁ、そうだ。最初からそうすれば辛くならなくて済んだんだ。




そうか...




私は...






------死んじゃえばいいんだ。

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