第4話
〜卯月視点〜
私こと卯月楓の親は世界的に有名なファッションブランドのオーナーだ。お嬢様と呼ばれた私は幼少期から女性としての所作や、習い事などを沢山受けてきた。時には友人と遊ぶ事もできないほどに時間を奪われていた。しかし勘違いしないで欲しいのは決して両親が嫌いだとかそのような感情は一切ないということだ。むしろ、後継ぎなどをさせようとせず将来に対しては割と自由に決めさせてくれているのでとても信頼している。
------学業には自信があった。しかし、私が入った高校は偏差値で考えるなら全国平均より少し上と言ったところだろうか。頭がとても良い学校とは言えないところではあったが、私がその学校を志望したのはしっかりとした理由があるのだ。
それは、私の隣の教室の彼。
如月隼斗くんだ。
〜告白の2日前、裏の卯月楓〜
「おかえりなさいませ、お嬢様」
「わざわざありがとうございます。」
「いえ、これが私の務めですので!」
そう言ってくれる彼女は私の幼少期から面倒を見ていくれている使用人の加藤さんだ。なにも、私の隣のクラスの加藤弥生くんのお母様だとか。
「学校生活には慣れましたか?」
「ええ、まあ、嬉しいことに賑やかで楽しい生活を送れていますわ。」
「それはそうと、お嬢様のお目当ての人は見つかりましたか〜?」
加藤さんは少しイタズラっぽい笑みを浮かべながら私にそういった。
「も、もう!その話はしないでくださいって!」
「あはは、お嬢様は最近浮かない顔をしているので、恐らく話せていないのだと私は予想しますが?」
「わ、私はやることがあるから部屋に戻りますね!お食事の時間になったら声をかけてくださいっ!」
(お嬢様の王子様。思い出して貰えるといいですね...!)
加藤さんの願いは当然卯月楓には伝わっていない。
--ガチャ
「はぁぁぁぁ。今日も声掛けられなかったなぁ…。」
卯月は机の上に飾ってある如月隼斗の写真を手に取りながら深いため息を付いた。
「どーやって話しかけたら良いんだろうなぁ。んー。まあ、ここで思いついたら今まで困ってないんだけどさぁ。」
私はふと本棚にある少女マンガを手に取った。私が小学生の時に加藤さんに頂いた誰でも知っている有名な恋愛系のマンガだ。
「久しぶりに読んでみようかな」
......おー!これだ!!!!
たまたま見つけたそのワンシーンが、下駄箱に恋文を入れ好意を伝えるというものだった。
「私が...隼斗くんにお手紙...」
一瞬で顔に熱を帯びるのを感じた。まるでボッと火のついたような感覚だった。
「あうぅ...考えただけで恥ずかしい...」
普段はクールだのなんだの言われている卯月楓は好きな人のことを考えると一瞬で壊れてしまう。
「どーしよ、やっぱり丁寧に送るのが1番だよね...いや、ちょっと冷たく対応するのもアリ!?押してダメなら引いてみろ!いや、まだ押したこともないし...」
---コンコン
---ビクッ!
「はい、ど、どうぞ」
「お嬢様、お食事のお時間です。」
もう、そんなにも時間が経っていたらしい。
「ああ、ありがとうございます。」
「それではお待ちしております...その真っ赤な顔を冷やしてから来てくださいね?」
と、ニヤニヤした顔で言う加藤さん。
「も、もう!」
------その後3時間かけて手紙を完成させた。
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