4. 再会
俺はすべて思い出した。中二の時、ふとしたことから
ただ・・・
「茜はいつ、目を覚ましたのかな。何で近くの高校の制服を着てたのかな」
当たり前だがこれは俺の記憶なのでそういうところは分からなかった。
「会えるかわからないけど、俺が意識を取り戻したら聞いてみるか」
現実で今俺がどうなっているかを知る術はない。けれど、何の確証もないけれど、俺は意識を取り戻せる、そして彼女にも会える。そんな気がした。
次第に深層意識の中の俺の姿が薄くなり始めた。多分、目を覚ますのだ。
「会ったら聞きたいこと、話したいこと、いっぱいあるや・・・」
そうして俺は奇跡的に意識を取り戻した。
「ここは・・・・・・」
目を開けると真っ白な天井が見えた。薬品の匂いがして、電子機器の音が聞こえる。
「大地・・・くん・・・?」
「あか・・・ね・・・・か?」
窓際には茜の姿があった。俺はうまく声を出せなかった。
「大地くん、大地くん・・・!!」
ベッドで体を起こした俺に茜は飛びついてきた。
「好き、大好きだよ・・・う、うわぁぁぁ!!」
もう何度目かわからない「好き」を告げて、それから彼女は泣いてしまった。
「ごめん・・・あの時ちゃんと言えなくて。ごめん・・・君のことを忘れようとして・・・ごめん、ごめん・・・う、ぐっ」
泣きじゃくる茜に謝罪の言葉を繰り返しているうちに、俺も目から水滴を流していた。
しばらくは病室に成長した二人の泣く声が響いていた。扉の外で人の気配がしたが入ってこなかった。ひとしきり泣いた後。俺は咳払いをしてこう告げた。
「茜。好きだ。俺と、付き合ってくれないか・・・?」
「私も、大好きだよ。喜んで・・・」
俺の告白に茜はまだ涙目だったが、にっこりと笑顔で答えてくれた。二年越しに俺たちは告白することができた。それにしても全く皮肉な話だと思う。交通事故で茜は意識不明の重体になったが、俺は交通事故がきっかけで記憶を取り戻すなんて。
「でも、ほんと、心配したんだからねっ!」
そう言って茜は俺の胸に拳をぶつけてきた。顔は俯きがちで表情が分からない。
「記憶を失くしたと思ったら、今度は君が事故に巻き込まれるなんて」
「ごめん。・・・けど、俺だって、心配したんだぞ・・・マジで」
「う、うん・・・・」
俺の言葉に茜はしゅんとしてしまった。けれどすぐに顔を上げた。
「でも、これでお互い様だねっ!」
「・・・・!!」
茜の顔があまりにも明るかったので少し驚いてしまった。けれどすぐに平常心を取り戻して、
「ははっ・・・確かにな」
俺はそう言った。そうして俺たちは笑いあった。さっきは泣いていたと思ったら今度は笑っている。何も知らない人たちにとってはおかしなやつらだと思うだろう。
しばらくして俺たちはお互いに聞きたかったことを聞いた。
「茜、いつ目覚めてたんだ?」
「うん。あの事故から一年と少したってから。」
「何でこの近くにいるんだ?」
「大地くんと一緒の高校には行けなかったんだけど、そんなに遠くない高校には受かったから」
「そっか・・・」
「あっ、でも転校生扱いかな。ちゃんと試験は受けたよ」
「・・・そっか。嬉しい。会いに来てくれて」
「うん」
そんな会話の後、しばらくは沈黙が流れた。心地のいい沈黙だった。
だが俺にはまだ言いたいことがあった。
「髪、伸ばしたの?」
「あ、うん。ずっと切れなかったから伸びちゃって。だったらいっそのことこのままにしようと思ったの。変・・・かな?」
「いや、最高に似合ってる」
茜が恥ずかしそうに頬を染めながらそう言ったので、俺はできる限りの笑顔でそう答えてあげた。本当にきれいな髪だと思う。光が当たるときらきら星のように輝いていた。
「あ、ありがと・・・」
そう言ってまた茜は一層顔を赤くした。本当に可愛らしい子だと思う。
けれど、これ以外にも言いたいことがあった。
「365日も『好き』って言ってくれたのはなぁ・・・うれしい反面、ちょっと愛が重いような・・・」
俺がこう言ったら
「・・・ばか」
そう言って、弱い力で叩かれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます