1. 365日目。そして追想へ
その日も俺はいつも通り学校帰りにバイトして帰り、いつものようにポストを
「またかよ・・・」
ポストの手紙を取って、部屋に入った。そしてこれから夕食を作ろうとして冷蔵庫を開けると。
「なんもねぇじゃんか・・・」
調理できるような食材はほとんど見当たらなかった。仕方がないのでまた俺は薄手の上着を
近くのスーパーへ向かうのだ。そこへはアパートからちょっと歩いたところに信号のある横断歩道があり、そこを渡って少し歩けば到着する。
5分ほど歩くと横断歩道が見えてきた。しかし、俺は横断歩道の向こう側に信じられない人影を発見してしまった。
「どうして、あの子が・・・ここにいるんだよ!」
見つけた次の瞬間には向こう側に向かって走り出してしまっていた。
「おい、待てって!」
しかし俺は信号が赤なのに気づいていなかった。迫り来る車の気配を感じ振り返ると1台の車がクラクションを鳴らしてブレーキを踏んでいた。しかし車はもう俺の目の前だった。
「しまっ・・・」
そこで俺の意識は暗転した。
俺は
「何で・・・ここに」
俺はとある教室の一番後ろに立っていた。生徒たちもいる。教室の外の
「やっぱりか・・・」
そこは今俺が通っている高校の教室ではなかった。今俺が通っている高校のクラスは2年B組だが、ここには2年4組と記されていた。そう、ここは中学校だ。一応、中学のアルバムを確認していたのでクラスは知っていた。ただ、知っている だけだ。俺は高校入学以前の記憶を失ってしまっているので、ここでどんなことがあったとかは何も憶えていない。
俺はもう一度教室に入る。そして中学時代の俺を探した。
「いた。あれが・・・俺、だよな」
窓際の最後尾に中学時代の俺の姿を発見した。シャーペンをいじりながら外を見ていた。ちなみに今は授業中のようだ。教師は黒板からこっちの方を見ていたが俺の姿に気づいていないようだ。
「誰にも見えていないか・・・。当然だよな。多分、俺の記憶だし」
時計を見ると、もうすぐ昼の時間が近かった。そして次の瞬間にはチャイムが鳴った。それと同時に生徒たちが立ち上がり、昼ご飯の準備を始めていた。俺はというと・・・
「どこ行くんだよ・・・」
弁当を持って廊下へ出ていく姿を発見した。俺は急ぎ足で追いかけた。あいつは教室を出て、突き当たりを右に曲がっていった。俺はたくさんの生徒たちを
あいつは1階の渡り廊下に出るようだ。そこから外に出る小さな階段に腰をかけた。どうやらここで昼飯を食べるらしかった。
「クラスに友達・・・あんまいなかったのかな」
そうして15分ほどたった後、再び教室に戻るらしかった。俺もその背中を追った。階段を上って3階の教室へ向かった。しかし、前方のあいつが2階から3階をつなぐ階段を上っているときだった。中学時代の俺のさらに前にいる女子生徒が小さな声をあげた。
「あっ・・・」
彼女が階段を踏み外したのだ。それを見たあいつは
「危ない・・・!」
昔の俺が彼女の背中を支えていた。彼女は振り返ってお礼を言おうとしていた。しかし、振り返って彼女の顔が見えた時、俺は胸に
「あの子・・・どこかで見た気がっ・・・」
俺は痛みに苦しんでいる最中だったが、彼らはこんな会話をしていた。
「あ、ありがとう・・・大地くん・・・青木、大地くんだったよね?」
「う、うん。大丈夫・・・?
「だ、大丈夫だよ。本当に・・・ありがとう」
どうやら彼女の名前は
彼らはその後、階段を上って教室へ戻っていった。彼女、茜の後ろを追っていた昔の俺は彼女の姿をしきりに気にするそぶりを見せていた。同じ教室に入っていったのを見ると、どうやらクラスメイトらしかった。
午後の授業でも彼女の方ばかり見ていた。彼女の席は右斜め前のようだ。板書を写す最中に何度も見ていた。現在高校2年の俺は教室後方でずっと二人の様子を見ていた。
「俺は、あの子のことが気になっていたのか・・・」
すべての授業が終わり、担任の話も終わって
「あ、あの・・・大丈夫だった?」
気にされている茜もどうやらまんざらでもないようだった。少し恥ずかしそうにしている。
「え、あ、うん・・・大丈夫だよ。ほんと、ありがとね」
そうして茜は恥ずかしがりながらもにこりと笑った。
「じゃ、じゃあね」
「う、うん。またね」
茜と中二の俺はそんな会話を交わした後、彼女は教室から去っていった。中二の俺は名残惜しそうに茜が去っていった方をしばらく見つめた後、教室の窓から外を見ていた。すでに日は西に大きく傾いていて、橙色の夕日が射しこんでいた。
この日の追想で俺が分かったことは、高2の俺に1年の時から告白し続けている少女は恐らく中二のときのクラスメイト、夕凪茜だということ。髪の長さや顔つきは多少幼いものの、面影がある。それに昼間俺が感じた胸の痛み。あれは少女に告白され続けていた時に感じた痛みと同じだった。
多分、この日から高校入学に至るまでの記憶をさかのぼっていくのだろう。しかし、なぜ茜はああも必死に想いを伝えてくれていたのだろうか。一体、中学時代に俺と彼女に何があったのだろうか。まだまだ疑問は多かった。
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