第三夜「彼女の護るもの」(Bパート)①

 昨日と同じ白い上着を貸してもらい、燕尾服の上から羽織る。

「……何か……変じゃあないですかね?」

「わたしは別に変だとは思いませんが…」

 確かに、ぼくの私服とは比べ物にならないしっかりした仕立ての、スタイリッシュなものではあるのだけど、あまり人前を闊歩するような恰好ではないのではないかと……。

「……わたしは、御剣さんには、きちんとした装いがお似合いだと思います」

 いやまあ、そう言って頂けるんでしたらいつどこに行くにもこの燕尾服着ていきますけどね。

 というか、もしかして暗にあのクソダッセェパーカーはどうかと思うと言われているのだろうか。

 ……うん、そろそろいい加減捨てよう、アレ。

「別にどうデモよかロウ、人前に出る訳ではなし、おしゃれした所で見てくれるのはくおんだケだぞ?」

「いや、だったらなおのこと見苦しい恰好はできないだろ?」

「あと、私とウィッチ」

「そっちはまあどうでもいいですー」

 軽口をたたいているぼく達をよそに、斎月さんはてきぱきと身支度を済ませ、

「では、こっちはわたしが持って行きますね」

 と、取り扱っていた荷物の中のひとつの封を解き、その中身である、20センチほどの金属製の円筒を取り出した。

 見ると、中ほどには押しボタンがあり、全体に細かく文字が刻まれていて、先端には透明な蓋が被さっているようで。

「それって……貴重品か何かですか?」

「正確には少し違いますが……そうですね、こちらの方が、扱いに慎重であることが求められます」

 斎月さんはそう言って、上着の前を開き、ソレをしまい込んだ。

 銀色の筒が、上着と、白いブラウスの間に収められるのが見えた。


「いま、うらやマシいとか思っただろ」

「思うかそんなこと!」


 だ、大体がだ。その程度のこと、何だというのだ。

 昨夜の今頃は、ぼくは斎月さんにしっかり抱きかかえられて、ビル街を飛び回っていたのだ。どう見てもぼくの勝ちではないか。

 何を羨ましいと思うことなどあるものかよ!


 話しながら、車に乗り込み、リモコン、…なのだろうと思う、魔法かもしれないけどリモコンで用が足りるだろうし…でガレージのシャッターを開け、薄闇の中に走り出す。

 もう陽は半分近く姿を消していて、後30分もすれば完全に夜が訪れるだろう。

 ……どうも、斎月さんと屋外で一緒にいる時って、毎度こういう時間帯だよな。

 まあ、昼間彼女と外を歩くようなことはまずないんだろうけど。

「……ん? そうだ、特に気にしてなかったようだけど、ガレージの中までって、ぼくは出てもいいんですか?」

「……遮蔽障壁の範囲は、この館の敷地の境界線と重なっています。物理的に密閉空間である必要はありませんので」

「じゃあ、庭までだったら普通に出ても問題ないんだ」

「まア、そうなルかナ……」

 明日からは昼間は庭の掃除でもさせてもらおうか。と思う。

「……ですから、今回のようなタイプは、以前にも数回交戦の記録が残っているんです」

「そうダ、ユえに既に対策モデきている。必要なものも準備できた」

「わたしが投入されたのは、まあ、保険ですね。一番確実ですから」

 生憎ぼくも車の免許を持っていないので、運転手役は務めさせてもらうことが出来ない。

 当面は、運転席でハンドルを握っている紙人形嬢の役目は安泰のようだ。

 そういう訳で、とりあえず斎月さんの隣に座り、話をあれこれ聞かせてもらっている。

「……そういえば、ウィッチにも名前があるんですね」

「あくまで便宜上のものです。慣例として、行動様式や原型にちなんだ名前を付けることになっているだけで、だから、蛞蝓だから綱手姫。安直ですよね」

「別に綱手姫本人とイうわケデはナい、安心したまヱ」

 それはそうだろう。……第一その元ネタと思われるところの、蛞蝓を使役する妖術師である「戸隠山の綱手姫」だったか、は、江戸時代の講談のキャラクター、架空の人物だ。

 もしかしたら、ぼくたちが妖怪だの悪魔だのと呼んでいる、伝説や神話に登場するあれやこれやは本当は、ウィッチあるいは魔法つかいがやったことが変形して伝わっているのかもしれない。

 だが、「人間の歴史の影には常に魔法つかいとウィッチの戦いがあった」かというと、多分そこまでの事はないのだろうと思う。

 斎月さん達魔法つかいの行っている戦いは、あくまで生物としての生存競争であって、政治権力の関わるものではない。

 そこでは常にギリギリのところでの選択が為され続けてきたのであろうし、その辺りに関わっている余裕などないはず。

 魔法つかいが人間の歴史に及ぼした影響は、まだ人間が滅んでおらず、地上での繁栄を失ってない。というのが唯一。それが全てだ。

 だから、権力の委譲、政治体制の変化に関しては、一般に広く語られている通りであって、人間の歴史は人間のものなのだ…と、思う。

 自信ないけど。

 ちょっと思いついて、聞いてみる。

「じゃあ、アレは?昨日のやつ」

「アレは……特に名前はつかなかッタな」

「何か違いでもあるんですか?」

「単に、それが登録されるより先にわたしが討伐してしまったからです」

 閑静な館から遠く離れ、一度は街中を通る。

 しばらくしてまた周囲の灯りが流れ去り、次第に数を減らしてゆくのを眺めながら、途中までは、そんな罪のないやり取りをしていたはず…だったのだが、何かのはずみで、会話が途切れたのだと思う。

 少しの間押し黙っていた斎月さんは、ふと、

「御剣さん、その…」

 戸惑いながら、躊躇しながら、意を決して、という感じに、少し俯いて、問いかけた。

「さっき……「気持ち悪い」って、思いませんでしたか?」

「気持ち悪い……?何がですか?」

「今日、あの人たちが訪れたときの、わたしに対する接し方です。」

 あの人たち、というのは、あのメイドさんたちのことか。

「何か、ありましたっけ?」

「大人が、わたしのような子供を様づけで呼んで、恭しく奉って……外の、御剣さんのような方から見て、おかしいと感じませんでしたか?」

「それは、また……」

 また答えづらいことを聞いてくれる。という言葉の後半は飲み込んでおいた。

「くおん、そんナコとを言っても、昴一郎も答エようがないだロう」

「……いや、いいですよ、でも……ルール違反かもしれないけど、答える前に、ぼくから質問してもいいですか?」

 質問に質問で返すのは褒められたことではないかもしれないが、それでも実際には答えにくい質問と言うのは存在する。

 ならばその内容詳細を確認する余地位与えて頂きたい。

 逆に、質問で返されるような質問の仕方をして、質問で返すなと気炎を上げるのならば、……その相手は要するに、自分に都合のいい回答しか求めていないか、内容に関して何か相手の不利益になるような情報を隠そうとしているか、或いは喧嘩を売っているかのいずれかだ。

 この会話は、相手をやっつけたくてしているディベートではないし。個人的なお悩み相談みたいなものだ。

 意見を求められている以上は、できる限りぼくの答えが彼女にとって役立つものであるようにと期すべきだ。

「斎月さんはああやってへりくだられるのは、厭なんですか?」

「厭というよりも……座りが悪い、落ち着かないと言う感じです。確かにわたしは認められてツクヨミを名乗っていますが、それはわたしが、単に多くウィッチを倒したと言うことに過ぎない、ただの結果で」

 そこまで言って、斎月さんは一度言葉を切った。

「ああ、やっぱり、聞かなかったことにしてください。……ごめんなさい。こんな、弱音を吐くようなことを言うつもりはありませんでした」

「いいですよ。その位の事、誰にでもあるでしょうし」

 最強にして最良の魔法つかいであることを示す名・ツクヨミの称号。

 斎月さんの背負っているその立場だの名跡だのを鑑みれば、確かにあまり軽々しくそういったことを口にするものではないかもしれない。けれど、彼女がいついかなる時でも弱音を誰にも吐いてはいけないという理由までは、思いつかない。

 時と場合と相手如何。例えばぼくにだったら、彼女は、そういうことを口にしたっていい。

 彼女の感じているその居心地の悪さは、ウィッチから社会を護るために教皇院の有している最高の戦力がこの11歳の女の子だということに由来している。

 所詮、その葛藤は多分この先だってずっと彼女について回るし、…御剣昴一郎には、それを根本的に解決することはできない。

 だから、毒にも薬にもならない、それこそ誰にでも言える様な安い気休めしかでてこない。

 その反面、前述のとおり、たとえぼくが彼女に対して失望しようが、それは一切彼女の貴さを損なわない。斎月さんがその資質を疑われるとか威信を損ねるとかのデメリットは、極めて小さい。

 びゃくやを除外するなら、現状ではベストの人選と言えるに違いない。

 ならこれも、ぼくの仕事の内である。

「……でも、先に言っておくと、それに答えるのは、ぼくには難しいです。正直、どっちの気持ちも、判りますから」

「判ル?君にくおんの気持ちがわかルノかね」

「判るって言うか、想像はできる……のかな?」

 斎月さんは確かにこの通り、ぼくに対してすら礼儀正しくて行儀のよい女の子だけど、それは長幼の序だの孝悌だのの観念に裏打ちされたものと言うよりも、傾向として己を律し、淑やかに振る舞っているのが好きだということの方が大きいのだろう。

 であるならば、今になってこんな事を言い出したのは、単純に、自分より年長の人間が自分に対してうやうやしく接すること自体に対しての嫌悪感だの違和感だのをもっているだけではなく、別の所にあるようだ。

「ぼくはどうしたって斎月さん寄りの視方でものをいうことになるし、斎月さんが実際に命がけで最前線に立っているひとである以上、ほかの人にも、斎月さんには相応の敬意をもって接してほしいとも思います。もしあの人たちが逆に、あなたに対して高圧的な態度を取っていたなら、ぼくは面白くないって、ぼくの主人になんて口のきき方するんだって思うかもしれません」

 少しずつ、斎月さんの反応を、悪く言えば顔色を伺いながら、そんな風に話してゆく。

 斎月さんはぼくの隣で、それを黙って聞いている。

 ここで問われるのは正しいかどうかというよりも、せいぜい彼女にとって気休めになるかどうかだ。

 それは斎月さんだって判っているだろう。

「それに、あの人たちが畏まるのも少しは分かります。ぼくは斎月さんをの人柄を知ってるし信頼もしているから、少なくとも、いきなり口のきき方一つで癇癪を起こすようなひとじゃないって判っていますけど、そうでなかったらやっぱり身構えてしまうし、とりあえずはへりくだった態度を選ぶと思います」

 ぼくだって、自分より上位にいる相手…気分次第でこちらを責め立て、その理由を恣意的に作り出すことが出来るような相手と言うだけで、可能な限りは近づきたくもないのだ。

「それは、判りますよね?」

「わかっています。そういう立場にいるわたしが……周りの相手に対して自発的に気を使って、私が何を望んでいるか察して欲しいと言うのは、ひどく醜い我儘だとも。その望みをはっきり伝えることもできずこんなことで、いちいち悩んでいるようではいけないとも」

 沈んだ声で目線を膝に落とす斎月さんに、続けて、告げる。

 どうもそういう部分は、彼女の苦手な分野らしい。

「だから、むしろ今考えてるのが、ぼくがどうすればいいのかってことです」

「御剣さんが……ですか?」

「あー……今のところ、ぼくは斎月さんにお世話になっている身だし、尊敬だってしています、だからこうやって、敬語で話したり、ある程度へりくだったりもしますけど、斎月さんにとって、こういう態度が気持ち悪いものだっていうんなら改めるし、話し方とか呼び方も、それなりに変えないといけないなとは思います。でもそうすると、今度はそれが斎月さんに気を使ってることになるわけで。……結局堂々巡りですよね」

 少し首を傾げるようにしながら、間を置いて、斎月さんはぽつりと呟いた。

「御剣さんは、どういう話し方が、一番話しやすいですか?」

「ん、今の、こういう話し方です。これが一番、話しやすい」

「……では、その口調でお願いします」

「はい、それなら、このままで」

 と、頷いてから、

「……いま、ぼくにはちゃんと言えたじゃないですか、どうしてほしいって」

 と、続ける。

「……あ」

 斎月さんは、自分でも驚いたみたいに口元を覆う。

「だから、……そうだな、もしもこれからそういうことでもやもやしちゃったら、ぼくに言ってください。それ、聞きます。斎月さんが何言っても、多分笑ったり、馬鹿にしたりしないだろうし」

「…本当…ですか?」

「本当にです、嘘は嫌いです」

 まあ、ぼくはそんなに長く彼女の近くにいられるわけではないのだけれど…彼女はきっと、じきにどんな悩みにだって自分自身で答えを見いだせるようになるだろうし、そうすれば、ぼくなどすぐに必要なくなるだろう。

 …そして、それをこそぼくは望んでいる。

「ただし……さっきのみやこさんとかがいるときは、多少硬い態度に合わせるかもしれません。あの人、なんていうか……」

「弱音ついでに言うと、わたしは……すこしあの人、苦手です」

 ぼそっと、斎月さんがそう口にした。

 ……彼女にだって、得手不得手はあるらしい。

「ああ……それはぼくも、なんとなくわかります」

 斎月さんがみやこさんに抱いている苦手意識と、ぼくが彼女に対して持っているそれでは大幅に意味するところが異なると思うのだが。

「ただ、あの人も、けして悪気があってのことではないので、そこは間違えないようにしないと、と思っています」

 確かに、それはその通りであるのだろう。

 仮にあのきれいな顔をしたメイドさんに、いきなり突き飛ばされ足を払われ倒れ込んだところで馬乗りになられ数十回殴打され、あの編み上げブーツで踏みつけにされたとしても、彼女には充分にその権利がある。

 悪意の有無を言うなら、どちらかといえばそれはぼくの方にあるのだから。


 自分に対して振るわれる暴力に正当性があるのなら、それは正統性のない暴力より、もっと恐ろしい。


「そういえば、後ろに積んである荷物っていうのは何なんですか?」

 振り向いて指を伸ばし、つんつんと、背中の後ろの収納に収めた大きなトランクをつつきながら尋ねてみる。

 車に積むさっきまでは、ぼくが運んでいたものだけど。

「ああ、それは、戦部式いくさべしき焦熱火放射装置というものです」

「焦熱?」

 何か、剣呑なフレーズが聞こえた気がするのだが

「くおん、そんな専門用語ヲつかっテモ昴一郎にはわかラんだろう、もっと言葉を選んでやリたまえ」

「ん?そうだね、わかりやすい言葉で言えば…」

 先んじて、びゃくやがぼくに告げる。

「爆弾ダ」

 ――いいっ!?

「ばく、だ…!」

戦部いくさべきょう…という魔法つかいが発明したので、そう呼ばれています」

「ああ、そう怯えるな」

「登録した使用者が特定の信号を送らない限り起爆はしません」

「あの、普通、そういうの、こうやって運ばないんじゃないんですかね」

「速やかに用意してもらえてよかったです。戦部式の方が信頼度も安全性も高いですからね」

 「信頼度が高くて」「安全な」爆弾。

 なんてトップスピンの良くかかったジョーク。

 斎月さんのことだから恐らく本気で言っているのだろう。

 しかし、要は、間違っても「低威力だから爆発しても安全」ということではなく、「意図した時に」「意図した場所で」「意図した分だけ高熱と爆風をまき散らせる」

 つまりはそういうものであるに違いない。

「ああ、悪い話もあるが、発明者は間違いなく天才だな」

 それは「武器で生物を殺傷することの」天才という、一種のアレなのではあるまいか。

 一縷の望みを託して、一応尋ねてみる。

「安全っていう位なら、爆発してもそう大した威力では……」

「ンな訳なかロウ、対ウィッチを想定した兵器だぞ」

「このサイズのものだと……最大威力で起動すれば、半径数百メートルは焦土になる……のかな?」

 斎月さんの、実直そのものの声で言われると、半径数百メートルと言う言葉が、改めて重みをもって伝わってくる。

「(大量破壊兵器じゃねえか!)」

 道理で、運転席に座っている運転手嬢みたいなのに運ばせるという手が使えないわけだ。

 いくら高性能で忠実であろうとも、最終的にはこういうものはヒトの手で管理されたうえで扱われなければならない。 

「……じゃあ、さ……作戦ていうのは」

「今かラ向かう場所の建物の中にウィッチを誘イ込んで、まずこの装置を作動さセル。ウィッチズタボロになるジャン?そこで斬りかかレバ楽勝ジャン?」

 大ざっぱだった。

 想像していた以上に大ざっぱだった。

 ……つまりぼくは、これから爆弾を抱えて、小学生の女の子とカラスと一緒に蛞蝓の駆除に赴くわけか

「でも、作戦の内容的にはこの装置がベストなんですよ?誤動作も二千個に一個しか報告されていませんから」

 いや、その起こり得るはずのないような幸運と不運に同時にぶち当たったのがぼくなのだが。

 二千個に一個のエラーが、まさに今この瞬間千個に一個ということに変わらないなんて保障は、どこにもないのじゃないだろうか?

「それで、この戦部式がどう優れているかというと……」

「くおんヨ、そんなノは昴一郎に言っても判らんダろう……」

「これって……教皇院がどのくらい保有してるんでしょうか?」

「戦部卿は10年ほど前に亡くなりましたので現在は生産されていませんが、教皇院にはまだ五千個ほどはあるはずです」

 何かの間違いで誤起動したら地形が変わるんじゃないんですか、それは。

 これの発明者……戦部卿、だったか。

 何と言うか、あまりお近づきになりたくはない人物像が想像される……

 まあ、既に亡くなっていると言うことなので、ぼくが関わることはまずあるまい。

 なので、無責任なことを言ってみる。

「ウィッチ「だけ」吹き飛ばしてくれる爆弾作ってくれたら、もっと天才だったんですけどね」

「随分都合のいいコとをいうのダね君は」

 どうもおかしな感じがする。

 破壊力が過剰に過ぎる気がするし、そうすれば制約だって大きくなる。

 あまりに強力過ぎる武器は、「存在してはいけないもの」になるのだ。

 ……もしかしたら、だけど、その戦部卿自身、爆弾でウィッチを倒すということに対して、あまりいい印象を持っていなかったのかもしれない。

 判らなくはない。

 どこかで最後の一線すら踏み越えてしまったら、彼女たち魔法つかいが最終的に至るのは、正義の味方でも、人間を守る貴い職務の従事者でもない。「単に有害とされる他種族を駆除する人」だ。

 それだって状況次第で必要なものには違いないが。

 ……ただ、武器と言うのは、できる限り誰にでも簡単に扱えるように、誰が使っても同じ結果が出るように、という方向を指向して発達するものだ。

 こういうものが開発されていて、現在も継続して進歩しているのだとすれば、いつかそういうものがつくられる日が訪れる。

 多分、戦部卿に勝ち目はない。


 とはいえ、

 実際のところ、現在進行形でウィッチに襲われている人の立場で考えてみたら、とてもそんなことは口にできまい。

 どんな手を使ってもいいから、ウィッチを消し飛ばしてくれる兵器を作ってくれた方がありがたいはず。

 結局、ぼくがこんなことを言えるのも、当面斎月さんと言う庇護者を得ていて、護ってもらうことができているからだ。

 もしもウィッチだけを安全に排除してくれる便利な兵器が完成したら、その斎月さんだって、今の居心地の悪さから解放されるのかもしれない。

 ……こうして言葉にしてしまうと、いよいよ本当に屑っぽいな、ぼく。

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