第1700話 悟獄丸の二色の併用
悟獄丸が纏っている『二色の併用』だが、当然のように『青』は『瑠璃』を用いており、もう一つの『金色』も天からの贈り物とされる先天性の非常に稀有な力である。
シギンとの戦闘が始まってから、そのシギンの用いる術の数々によって、その本来の力を発揮する事を封じられて弱体化が行われてしまっているが、それでもオーラを纏う前の通常状態であってもこの『妖魔山』に生息する数多くの妖魔達よりも力が強い為、今の状態でも高ランクの妖魔として十分に脅威に映る程である。
この状態の悟獄丸でさえ、現在山の『禁止区域』に入った所で交戦中である『コウエン』達の『戦力値』を遥かに凌駕している程であった。
(※ランク『10』の戦力値は兆以上とされているが、このランク『9』からはその対象となる妖魔と交戦状態に入って尚、生存を果たす者が限りなく少ない為に、厳密には『妖魔召士』と『妖魔退魔師』組織と両組織内では、凡その目安の見解となっている)
これまでの『ノックス』の歴史では、この『妖魔神』と相対した人間は『禁止区域』を定めた時代の『妖魔召士』の長だけとされているのだが、それが厳密に初代なのかも定かではなく、あくまで観測を行えた当時の『妖魔召士』が初代とされている。
その『禁止区域』内の妖魔達の強さの観測を行い、区域を定めた『初代』の時代から凡そ数百年が経ち、ようやく近代になって『初代』と同等以上の強さを持つ『シギン』という一人の人間が現世に生まれ出て、再びこの『禁止区域』内で、当時からこの『妖魔山』で君臨し続けていた『妖魔神』の『悟獄丸』と妖魔召士『シギン』は相対している。
人間のシギンから見ればこの『悟獄丸』という妖魔神は、気が遠くなる程の昔から存在する妖魔だが、彼は全く気負う様子もなく、淡々と他の高ランクの妖魔を相手にするのと同様に立ち回っていた。
この『妖魔神』と当たり前のように対峙し、戦闘を行えているだけでも『シギン』が悟獄丸と同様にランク『10』より下は有り得ないが、すでに彼は同じ『妖魔神』である神斗を相手に『魔』での交戦も行え終えた上で、大魔王エヴィを見事に救出してここまで来て見せているのである。彼はこれまでの『ゲンロク』や『コウエン』が口にしていた評価を下回る事がない働きを十二分に見せていると言っても過言ではなかった。
そんなシギンに向けてこれまでとはまた異質な殺気を悟獄丸は向け始めた。どうやら戦闘態勢を整え終えたという事なのだろう。
シギンの術である『
「待たせたな。舐めた口を利いてくれた礼に、お前を今直ぐに粉々にしてやるよ」
山の頂で同じ妖魔神である『神斗』の『二色の併用』と、その力の上昇を見ていたシギンだが、それとは全く別種と呼べる程、違うベクトルの力の到達点と呼べるモノを彼はこの場で見せつけられた気分であった。
「全くお前ら妖魔は、私達人間から見たら理不尽な存在だよ」
『青』と『金色』の『二色の併用』を行い、隠すつもりもないのか、はたまたシギンの術の影響を考えたのか。そこまでは分からないが、どうやら今の殺意を孕んだ視線でシギンを睨みつける『悟獄丸』という『妖魔神』は、これまで見てきた中で一番の威圧感を出しながら戦闘態勢に入るのだった。
「何だ、お前まさか人間だったのかよ、そりゃいいや! その言葉を聴いて、あのイダラマって奴より余程にお前に興味を持っちまったぜ。もうお前を逃すつもりはねぇから覚悟しな?」
確かに今の悟獄丸の言葉通り、山の頂でイダラマが『透過』を用いた時にはあの神斗よりも余程イダラマに興味を示していた。どうやら『魔』の概念に、いや……、どちらかといえば『魔』そのものより『透過』技法に執着しているようにシギンには見受けられた。
その理由までは分からないが、悟獄丸の今までのシギンを見る殺意の孕んだ視線から、何処か期待を抱いているかのような視線へと変貌を遂げているのが彼にも理解が出来た。
「ふふっ、元よりそのつもりだったのだろうが? わざわざ取り繕うような言葉を吐くなよ『悟獄丸』」
そう言って笑みを一つ見せた後、シギンもまた『二色の併用』を纏い、戦闘態勢に入るのだった。
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