第1499話 不測の事態
「今更麒麟児の『
「そうだね。最初となる一度目が肝心で『
エヴィは説明不足だったかもと考えはしたが、よくよく考えれば実際に命令を下す前に忠告はしたのだから、やっぱり自分は何も悪くないと考え直してそう告げるのだった。
「ああ。確かに今のお主の言葉を聞いて色々と思い浮かぶ事もあるが、私の目的には左程に影響はないからな。注目を浴びさせて『コウエン』殿達を『妖魔山』に近づけなくさせられるなら上出来だ」
「そうかい? じゃもうコイツに暴れさせるけど、他に何かしておきたい事もないね?」
今度こそエヴィは最後の忠告を口にする。
その理由としてはこれ以後はもう、この『はぐれ』の上位『妖魔召士』を使い捨てにするつもりで暴れさせるために『
「うむ。存分に有効活用させてくれ」
「分かった。それじゃ、コイツに暴れさせるね」
エヴィの言葉にイダラマは頷きを見せると、エヴィの目が再び金色に輝き始めて『妖魔召士』は完全に洗脳状態となって、先程のエヴィの命令を行使しようと懐に手を入れて『式札』を二枚取り出し始める。
そして同時に妖魔召士が式札を二枚その場に放り投げると、札はヒラリヒラリと舞っていたが、やがてぼんっという音と共に二体の『妖魔』が出現を始めるのであった――。
…………
「そろそろ交代の時間だな。ちょっとくらい早めに戻るか?」
エヴィやイダラマ達が近くに潜伏している事など露知らず、町の北側の門前に居た二人の『コウヒョウ』の町役人は雑談を交わしているところであった。
「馬鹿、お前も中央の方で起きた騒ぎの一件くらいは知っているだろ。今は『サカダイ』から雇われてきている『
「ちっ! 『妖魔召士』組織のお偉方がこの町の管轄だった頃は楽だったのになぁ。サカダイの『妖魔退魔師』組織の連中が予備群を派遣してくるようになってからは、色々と厳しくなっていけねぇな」
「そんな大声で言うんじゃねぇよ! 何処で奴らが聞き耳立てていやがるかもわからねぇんだぞ? 名主様にでも知られちゃ面倒なんだから言葉に気をつけろよ」
「はいはい、悪かったよ……、ん? 何だあれ」
「あ? ちょ、ちょっと待て! ありゃあ『妖魔』じゃねぇのか!? な、何で町の中に……!」
役人たちの前に突如として『
二人の町役人は突如として町の中に『妖魔』が出現した事で驚き慌てふためき始めた。
彼らも一般的な役人としては優秀なのであろうが、やはり『予備群』の護衛隊と比べると対応が遅いと言わざるを得なかった。
――しかしそれは仕方のない事だろう。
彼らはあくまで町の役人であり『妖魔』の対応を行う者達ではないのだから、こういった『妖魔』が現れる事を想定などをして町を守っているわけではない以上、このような不測の事態を責めるのは酷というものである。
「ま、ま、まさかっ……! 中央の騒ぎの本当の原因は、こ、この『妖魔』だったのか!?」
「に、にげ……っ!」
ようやく本能で逃げようと考えるに至り、町役人達の足が動き始めた瞬間、目の前に現れた『妖狐』に襲われるのであった――。
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