第1500話 はぐれの妖魔召士と、命令に従う妖魔
「ほう……。流石は前時代でも『上位』とされていた妖魔召士なだけはあるな」
操っている妖魔召士が『妖狐』を使役して暴れ始めたところを観察していたイダラマは、腕を組みながら首を縦に振って感心するように頷くのだった。
「イダラマよりは大したことがない『魔力』だと思っていたけど、あの札から出てきた狐の『魔物』みたいなのは確かに信じられない程に『戦力値』が高くて強そうだね。僕でもあの狐の力を探るのをやめておこうと断念する程だよ」
「ははははっ! これは面白い。麒麟児でも人並みに恐れを抱くのだな? あれはお主の察している通り『狐』の『妖魔』という奴でな。今の時代の『妖魔召士』では『式』にする事も難しく、契約を行うこと自体が珍しくはなったが、前時代では『新術』を用いずとも持ち前の実力だけで、契約を行うのはそこまで珍しくはなかった。まぁこういった面から省みても今と前時代では『妖魔召士』にも『魔力』の差があったという事の証左だな。あれでランク『6』程はある『妖狐』だよ、麒麟児」
「イダラマ……? 別に僕はあの『
「はいはい、お前の強さは分かってるから、いちいち言い訳しなくていいぞ?」
イダラマに説明を行おうとしていたエヴィの言葉を制止したのは長いピアスをつけた護衛の『予備群』である『アコウ』であった。
「むっ……! 君はいつも僕の言葉を遮るよね? そんなに僕の事が気に入らないのかい?」
エヴィは口を尖らせながらこれまで何度も自分に突っかかってきた『アコウ』に苦言を呈する。
「お主らその辺にしておけ。どうやら狙い通りに『予備群』達がこの場に集まってきたようだ。アイツが行動を起こして町の外へ出れば、私達も距離を置いてから気付かれないように外へ出て追いかけるぞ」
「「御意!」」
「はぁ、分かったよ……」
イダラマの言葉に護衛達は素直に頷き、エヴィも無理やり納得するように溜息を吐くのだった。
「ぎ、ぎゃああ!!」
「た、助けてくれぇぇ!!」
『妖狐』は町役人達を殺すつもりはないようで、周囲に火を吐きながら威嚇を行うに留めて、逃げ去って行く役人達の背を見送ると、そのまま契約者の妖魔召士の方を見る。
「コノままモう少しマって『予備群』の奴ラが集まっテクルノを待ったアト『妖魔山』へイクゾ!」
操られた妖魔召士が自身の『式』の『妖狐』に命令を出すと、その妖狐は『鳥』の『妖魔』に乗っている妖魔召士に返事をするように、近づいてぴょんぴょんと跳ねていた。
…………
そして逃げ惑う者達の騒ぎを聞きつけて、ようやくイダラマ達が歩いてきた方向から、町の護衛隊の『予備群』達が数をなしてこの場に続々と集まってくるのであった。
「今度は何事だ! むっ!?」
「た、隊長! 『
「ついに山から『
『コウヒョウ』の町の北側から出た先には『妖魔山』がある為に、彼ら護衛隊は『妖魔山』から野良の『妖狐』が下りてきたのかと怪しむのであった。
「いや、それは違うようだ。よく空を見てみろ! あそこに『赤い狩衣』を着ている『妖魔召士』の方が居る。あの御方が出したのではないか……?」
この『コウヒョウ』の町に派遣されている護衛隊の隊長と呼ばれた男は、目を凝らすようにして空を見上げると、先程エヴィ達が操った『妖魔召士』が『鳥』の妖魔に跨って空を浮いているのが確認されるのだった。
「やはリ、この町ノ護衛に『妖魔退魔師』ソシキのれんちュうがマギレこんでいたカ! コノまちも『妖魔山』モ、元々ハ、ワレワレ『妖魔召士』が管理シテいたノだ! ハイエナのヨウに横からカッサラいやがっテ! ユルサヌ……!」
どこか虚ろな目を浮かべながら『妖魔召士』は、空の上から『予備群』達にそう告げると、自分の足元でピョンピョンと跳ねていた『妖狐』に視線を向けた。
「アノ『予備群』達数人を襲え! ただし、コロスな!」
「――!」
契約主の『妖魔召士』に可愛がってもらおうと嬉しそうに飛び跳ねていたが、やがてその妖魔召士の言葉を聴いた『妖狐』は、ぎろりと複数人居る『予備群』の護衛隊達を睨みつけ始めるのだった。
「うっ! す、直ぐに攻撃態勢に入る! お前達は直ぐに屯所へ戻り、応援を呼んでこい! 後は近くの『旅籠町』に駐屯なされている他の護衛隊や『妖魔退魔師衆』の方々にも連絡を行え!」
「わ、分かりました! 直ぐに!」
この場に続々と『護衛隊』の『予備群』達は集まり続けて行たが、その隊長の命令で数人がこの場から離脱して命令を遂行しようと駆けて行くのであった。
「い、一体何だというのだ! さっきの騒ぎも妖魔召士が関係しているというのか! しかも先程の口振りでは、先日決まった『妖魔山』の管理の譲渡問題に納得しておらぬ者達という事か……!?」
「き、来ますよ! 隊長、お気をつけを……!!」
「あ、ああ!」
思案を続ける『コウヒョウ』の護衛隊長に声を掛けた『予備群』の男は、直ぐに隊長の盾となるように前へと一歩出るのであった。
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