第1460話 力の魔神とソフィの関係性に悩む死神貴族

「さて、それでは『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』を発動するが『魔神』よ、この部屋の中にある『牢』に相当な『魔力』を有する者たちが居るのだ。縛って動けなくはなっているだろうが、すでにお主を呼んだ時点で外で何かが起きていると察しておるはずだ。悪いが我が『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』を使う前にまずはお主の『結界』で我の『魔力吸収の地アブソ・マギア・フィールド』を覆い隠す偽装を施してくれ」


「――」(それは構わないけど、その連中はそこまでしなければならない程の存在なの?)


「クックック。念には念をという奴だ。それにお主も『煌鴟梟こうしきょう』のアジトで侮れぬ魔力を有した人間を見ていただろう? あの人間が数多くこの中に入るといえば伝わるかもしれぬな」


「――」(下界では珍しい程にここ最近は、高い『魔力』を持っている者達が出てくるわね。そのうちこの世界の『魔神』が調停に現れるかもしれないわ)


 それは暗に『世界』が危機に陥るかもしれないと『魔神』は告げているのであった。


「それはどうだろうな。この世界の存在で『魔』の『ことわり』を扱った者達が未だに現れてはおらぬ以上はその心配はなさそうではあるが……」


 『ダール』の世界で大賢者『ミラ』が行ったような『ことわり』を用いて『魔法』を使った『大量虐殺』のような真似をすれば流石に『魔神』は姿を見せるのだろうが、この『ノックス』の世界では『ことわり』そのものが存在しない為に『極大魔法』といった類の『広範囲殲滅』を行える者は未だに出てきてはいないため、ソフィはその心配はしなくてもいいのではないかと『魔神』に話すのだった。


「――」(『ことわり』を使わない世界? そんな世界あったかしら。まぁ別に今の私には関係がないからいいわ)


 ソフィと『魔神』の話を聴いていた『ヌー』は、その内容が気に掛かったようで視線を横に居る『テア』に向けた。


(おいテア、あの『魔神』の話している内容を通訳して教えろ)


(あ? 何を言っているんだよ。そんな事しなくてもお前は、ソフィさんの話す内容から察せられるだろ?)


(話の内容自体は読み取れるが、俺が知りたいのはあの『魔神』の感情の機微だ。今後の事を考えると、あの『魔神』がどういう事を口にしているのかを知っておく必要があるんでな)


(お、お前、そんな事を知ってどうしようっていうんだよ? まさか『魔神』ともやりあおうとか考えてるんじゃないだろうな!? だ、駄目だぞ? 『魔神』は私ら『死神』よりも遥かに恐ろしい神々なんだ! 『神位』そのものが違い過ぎる上に、あの『魔神』はその更に上の『力の魔神』なんだ。お前や私如きが戦ってどうにかなる相手じゃないんだ! 即座に消滅させられちゃう!!)


(……俺はともかく、お前は何度でも蘇られる『死神』だろう? 同じ不死身みたいなモンだったら何とかならねえのかよ?)


 『魔神』や『死神』の存在を知る『下界』の人間であれば、一度は考えるであろう疑問を『死神』の『テア』にぶつける『ヌー』であった。


(まぁ、確かにお前の抱いている疑問は理解出来るよ。でも『魔神』方の『再生』と私たち『死神』の『魂』を使った『蘇生』は全然別物なんだ。有体に言えば『魔神』の『再生』は限りなく行えて、私ら『死神』の『再生』は有限だと考えてくれたら分かりやすいかもな? 正直そんな『魔神』と契約を行えているだけでもとんでもない事なんだよ。でもあのソフィさんと『力の魔神』の関係は単なる契約の間柄には見えないんだよな……。なんかどっちかっていうと、ソフィさんの方が立場が上っていうか……)


 この『ノックス』の世界にきた当初に『魔神』と『ソフィ』の話すところを間近で見た時、テアはその不可解な状況に頭を悩ませていたが、これだけ時間が経った今でもその事を考えると、理解が出来ないとばかりにヌーに告げるテアであった。


(どうやらテアの口ぶりだと『魔神』を倒す事は不可能だろうな。全くソフィだけでも厄介だというのによ……)


 やってられねぇとばかりに溜息を吐くヌーだったが、彼は気づいてはいない。


 『魔神』には神位では劣るが、彼もまた『死神』という『神位』を持つ『神々』と契約を交わせているだという事に――。

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