第1372話 不敵に笑うスオウ組長
スオウの攻撃を難なく躱して見せた『王連』は、自身が放った『風の檻』と呼べるような竜巻状の風から『ヤヒコ』を救い出した『ナギリ』の姿を見て、何かに感動するように頷いていた。
「カッカッカ! まさかアヤツもあのおなごと同様の動きをして見せるとはな! やはり『妖魔退魔師』と呼ばれる人間共はどいつもこいつも観察しがいのある面白い者達だ!」
そう言って満足そうに笑う『王連』の元に先程攻撃を仕掛けた『スオウ』組長が姿を現すのであった。
「君がこれまでどういう妖魔退魔師達と戦ってきたのかは分からないけど、ナギリは『特務』所属の妖魔退魔師だからね。彼を指導する立場にいる妖魔退魔師からあらゆる技術を教え込まれてここにきている。それにナギリだけじゃなくて、この森に来ている者たちは選りすぐりの『妖魔退魔師』達だから、あんまり余裕を見せていると足元を掬われかねないよ?」
スオウは観察しがいがあると口にした王連に対して咎めるように忠告を行うのであった。
「……」
先程まで視線を空の上にいる『ナギリ』に向けていた『王連』だったが、スオウの言葉に耳を傾けた王連はもう『ナギリ』ではなく『スオウ』を意識するように無言で見るのだった。
「ふむ……。あの主が言っておった通り、お主ら『組長格』と呼ばれておる者達は相当に侮れぬようだ。確かに儂の目から見ても『昔』の『人間』達に近いようだと感じられる」
王連は左手で自分の顎を擦りながらそんなことを口にする。
「へぇ? その昔の『人間』ってのがどれほどまでに強いのかは知らないけれど、君みたいに寿命の長い『天狗』に認められるのはとても光栄な事だと素直に思えるよ」
「カッカッカ! あくまで感じただけに過ぎぬ。実際にどうであるかは直接手を合わせるぬ事には分からぬ事だからな。願わくば儂の勘違いで終わってくれるなよ? 妖魔退魔師よ」
どうやら『王連』は会話はここまでだといわんばかりに、再びヤツデの葉の形をした羽団扇に『魔力』を込め始めるのだった。そしてスオウもまたそんな『王連』と真っ向から戦うつもりで得の大太刀に『瑠璃』を纏わせ始める。
しかしそこに『ヤヒコ』を抱えた『ナギリ』がスオウの元へと降りてくる。
「スオウ組長!」
「ごめん『ナギリ』。あの天狗とは俺が戦うから、君はまだ自分では動けない様子の『ヤヒコ』を連れて離れていてくれるかい?」
「分かりました……」
スオウの言葉を聞く前までは、一緒に戦おうとしようとしていた『ナギリ』だったが、彼の所属する『特務』の長であり、この『妖魔退魔師』の組織の副総長でもある『ミスズ』が戦う時の様子を思い出したことで、最高幹部達が本気で戦う時であれば、自分達程度の力量しかもたない隊士では、結局は邪魔にしかならないとよく知っているために、ナギリは大人しく言う通りに引き下がるのであった。
「ではあの妖魔を使役したであろう『妖魔召士』がスオウ組長の戦闘の邪魔を行わないように見張っておくことにします。お気を付けくださいスオウ組長」
「うん。ありがとう。君たちも十分に気を付けてね。あの『ジンゼン』殿は『ヒュウガ』殿や『イダラマ』殿とまではいわないけれど、本来は彼も『式』に頼らなくとも十分に脅威的な『捉術』を扱う『上位妖魔召士』だからね。油断するととても危険な相手だ」
「はい。重々承知しております! それでは!」
スオウの言葉に素直に頷いたナギリは『ヤヒコ』を抱きかかえたままでその場を去るのであった。
「おやおや、一緒に戦わないでよかったのかね? 片方は儂の術にかかったままだったようだが、少なくとももう片方は無事だったはずだが?」
この場から去っていく『ナギリ』の後ろ姿を眺めながら『王連』が『スオウ』にそう語りかけると、スオウは目を細めて小さく笑った。
「ふふっ。彼らには悪いけど、君程の相手なら多分俺一人で戦った方がよさそうだからね」
そう口にしたスオウは先程得の刀に纏わせた『瑠璃』を構えながら不敵に笑うのだった。
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