第1373話 二組組長スオウVS王連
「カッカッカ! どうやら儂の強さを理解はしておるようだが、その上で儂相手に一人で戦おうというのは少しばかり傲慢ではないかな? 小柄な若き妖魔退魔師よ」
「いや、そういう事じゃないんだ。君が強いからこそ、こっちも君に対抗するためにはある程度は本気を出さないといけないわけだろ? でも俺が君くらいの強い妖魔と戦おうとすれば、味方の存在が邪魔で『力』を上手く出せないということなんだ。分かりやすく言うと、俺が本気で戦えば周囲に影響を及ぼしてしまいかねないという事さ」
『王連』はスオウの言いたいことを理解したようで、笑みを浮かべたかと思うと更に口を開く。
「ほう……? そこまで言うのであれば、是非お主の力とやらを見せてもらいたいところだな」
どうやら『スオウ』の言葉を全く信用していないというわけではないが、話半分に捉えたようで、願わくばハッタリでない事を祈るといわんばかりであった。
そしてスオウはそんな『王連』の言葉を聴いた後に、視線を遠く離れていく『ナギリ』達に向ける。
「これだけ『ナギリ』達が離れてくれたなら、もういいかな……」
スオウの言葉の意味がよく分からなかった『王連』が、何かを口にしかけたその瞬間であった――。
突如として先程まで居た場所からスオウの姿が消えた。
それも単に姿を消しただけではなく、スオウのいた場所から三日月型の衝撃波が『王連』の元に向けて離れていた。
「ぬっ……!」
『王連』は恐ろしい速度でとんでくる衝撃波を躱すと、スオウの居場所を『魔力』から探知を始める。どうやら目視ではスオウの居場所を探り当てられないと決断を下したようであった。
「そこか!」
自分の背後から凄い速度で走ってきていたスオウを目ではなく、魔力から居場所を割り出した王連は、そのまま自分の元に届く前に見つけたスオウに向けて攻撃を放とうとしたが、再びその位置からでもスオウを見失う。
「カッカッカ! 見事な速度だ。この儂でも目で追えぬ人間は久しいぞ。しかし残念なことだが、向かってくる事が分かっておれば儂ならば容易く対処を行える」
王連がそう告げると持っていたヤツデの葉の形をした羽団扇を振りかざし始める。
すると『魔力』がこもった羽団扇が煌々と照らされ始めていくのだった。
どうやら王連は周囲一帯を対象に何かを行おうとしているようである。
そしてそれはあの妖魔退魔師の『キョウカ』に行った時のように、動きを止める神通力であった――。
王連はまだスオウの姿を捉えることは出来てはいないが、それでも動きを止められている筈だとばかりに笑みを浮かべて、その位置を自身の目で見つけようと周囲を見渡し始める。
「いない……?」
王連は自分に向かって迫ってきていた筈のスオウの姿が見えず、浮かべていた笑みを消してそう呟いた。
「むっ!?」
そんな王連の元に空から自分に向かって迫ってくる衝撃波に気づき、慌ててその場から羽団扇を空に向けて振り切ると、先程の神通力の効力が消えた。
代わりに突風が吹き荒れ始めたかと思うと、その空から迫りくる衝撃波に向けて『風』を放った。
王連の油断を突いた衝撃波は王連の風によって方向を変えられて、勢いをそのままに森の木を貫きながら突き進んでいった。
スオウが放ったであろう衝撃波の対処を終えた王連が、再びスオウの居場所を魔力探知を用いて割り出そうとしたが、その瞬間に近くから声が聞こえてくるのであった。
「残念だったね」
「!?」
王連は自分の懐にまで易々と入ってこられている事に驚いた。
しかし驚きながらも反射的に羽団扇で自身の足をつけている地面に向けて『風』を起こしたかと思うと、間一髪でスオウの振り切った刀の一撃を躱して上空へと舞い上がる。
「へぇ? 今のを躱せるのか……。流石だね」
スオウの方も流石に今の一撃を躱されるとは思っていなかったようで、空へと避難を行ってみせた王連をみて驚きの声をあげるのだった。
まだ『スオウ』と『王連』の戦いは始まったばかりだというのに、スオウの放った衝撃波や、王連の羽団扇を使った攻防によって、地面の土が盛り上がっていたり、森の木々が折れていたりと、徐々に『加護の森』に彼らの戦闘の余波で影響を及ぼし始めていくのであった。
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