第1238話 定まらない思考の果て
イツキと妖魔退魔師衆が裏路地で戦っている頃、ケイノトの門前でも戦闘は続いていた。
「全員これからが本番だぞ、気を抜くなよ!」
「「はい!!」」
既にヒュウガ一派の放ったランク『4』の『
「いいか? 奴らが一騎当千の強者であろうともたった十数名の人間に過ぎぬのだ。対してこちらは『式』を含めれば奴らの数倍から数十倍の戦力を有している事になる! ワシやお主ら八名の『妖魔召士』が生きて居る限り負けはないのだ! 持久戦に持ち込めば必ず我らが有利となる。だから奴らを休ませるな! 常に妖魔を放ち襲撃を繰り返し行うのだ!!」
先に降り立った七名の『ケイノト』襲撃班の妖魔召士達に『ジンゼン』が指示を出すと、キネツグやチアキを含めた妖魔召士全員がやる気に満ち溢れた目を浮かべるのだった。
それを見たジンゼンは満足気な表情を浮かべた後に、複数の『式』を使役し始める。
ぼんっ、ぼんという音と共にジンゼンの『式』達が姿を見せると、それを見た他の妖魔召士達も独自の契約している『式』を使役していく。
その妖魔召士達の使役する『式』の中には、ソフィと直接戦った『
キネツグやチアキはこの場に居る他の上位妖魔召士達に比べると『魔力』で劣っているが、それでも『英鬼』や『卓鬼』と呼ばれる妖魔達も流石は『鬼人』だけあって、妖魔ランクや戦力値では見劣りをしてはいない。
先程この場での指揮官となっているヒュウガ一派のNo.3である『ジンゼン』の言葉にもあったが、妖魔と直接契約を行っている彼ら妖魔召士がやられでもしない限り、彼らの魔力が尽きぬ限りは何度でも『式』を召喚する事が出来るのである。
つまり身一つで戦い続ける妖魔退魔師達に武力という点では、彼ら妖魔召士は敵わないかもしれないが、最初からこういった物量を用いた長期戦で挑まれてしまえば、最終的に生き残る確率が高いのが妖魔召士といえた。
圧倒的な武力で一瞬で全てを無力化する程の力を持つ『隊長格』や、ランク7以上の妖魔に囲まれても平然戦い続けられる『副総長』に『総長』がこの場に全員集結しているような事であれば話は変わって来るが、このケイノトの町の門前に居る連中だけであれば『上位妖魔召士』達が複数人、そしてそこに『キネツグ』や『チアキ』も合わせた妖魔召士が同時に多量の妖魔を使役している以上、有利は間違い無く彼ら『ヒュウガ一派』が取っていると言って間違い無いだろう。
(先手を取ろうとして数十体の『狗神』を嗾けては見たが、流石は幹部揃いの『三組』だ。噂に違わぬ化け物揃いの妖魔退魔師達だったな……。更にここに『隻眼』が居たらと思うとゾッとするが、その『隻眼』はヒュウガ様の『煌鴟梟』の連中を使った奸計というべき策略によって現実にこの場には居ない。ここで一気に全滅をさせておきたいところだが、この後に他の妖魔退魔師達や『ゲンロク』殿達の『妖魔召士』組織と戦う可能性もなしでは無い。ここで『王連』を使役すれば私は当分の間『魔力』を回復させる為に行動を制限させられるだろう。つまりある程度は『魔力』消費を抑えつつ、他の者達と協力をしつつ奴らを全滅させたいところだ……)
――ジンゼンの頭の中で思考が二転三転していく。
一番やらなければならない事は間違いなくこの場に居る『妖魔退魔師』達を全滅させる事であるのだが、この場に居る相手が『妖魔退魔師』の本隊というわけではない。
ここで奴らに勝利を収めたとして、その後に他の妖魔退魔師組織の大幹部達である『ヒノエ』や『スオウ』といった最高幹部の組と連戦をする事も考えなければならなく、その時に数少ないランク『7』以上の『天狗』と契約をしている自分が、魔力枯渇で肝心な時に戦力外になってしまっては目も当てられない。
これがジンゼンのような指揮官の立場に居る者ではなく、使われるだけの兵隊であったならば余計な事を考えずに上から言われた通りに行動をする事が出来ていたのだろうが、ジンゼンはその使われる側の立場での物事の考え方だけでは無く、この後にどう展開するべきかと彼の指揮官らしさとしての一面も表に出てきてしまい、この局面でどうするべきかと指揮官としての彼の自主性が表に出てきてしまったようであった。
有能であるが故に、そしてヒュウガ達に頼りにされているが故に彼は優先すべき『妖魔退魔師達を全滅させる』という目標に対して周囲の妖魔召士達と協力する事で、ランク『7』以上の天狗の『
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