第1044話 過敏になる神経
「いや『
「それは……、まぁそうだけどね」
そんな事は『キネツグ』に言われるまでもなく『チアキ』自身が分かっている事ではある。
しかしそれでもその後に起きた事に比べると『チアキ』の中での信じられない事の優先順位では『
「いや、お前の言いたい事は分かってるよ。話の腰を折って悪かった。続けてくれ」
「アンタにしてはえらく物分かりが良いわね」
どうやらキネツグもソフィという奴が、何をしたのかが気になったのだろう。続きを言ってくれとばかりにキネツグは、チアキに先を促すのであった。
「あたしの持っている『式』で、最も強い鬼人の『
キネツグは地面に横たわりながらも『チアキ』の言葉を聞いて頷く。
「最初はあたしの思惑通りに『ソフィ』って野郎は動けなくなった。でも驚いてはいる様子だったけれど全く怯えた様子もなく、むしろ誰か分からない名前を出して、どうやらそいつの『
「そいつは本当に頭がおかしいんじゃないのか?」
『
「あたし達があの施設内に入る前、ヒュウガ様に消すように言われたもう一人の大柄の奴が『三種類』の眩い色を放ったように、ソフィって奴も同じ力を使ったんだけどね。どうやらあれは、自身の力を増幅させる系統の技法のようなのよ。それを使ってあたしの『
「そりゃあそうだろうよ。俺やお前の『
この世界で生きてきたならば誰もが『
『
『
『
「あたしも解除される筈がないと思って、ソフィって奴を馬鹿にするように煽って笑っていたんだけどね」
(やっぱりチアキは、チアキだったな)
相手を馬鹿にする事はきっちりとやり遂げたと告げるチアキに、キネツグは心の中で苦笑いを浮かべた。
「最初は本当に私の『
決して思い出したくない事であったが、チアキはキネツグには聞いておいて欲しいという気持ちが芽生えてた事で、嫌々ながらもアジトでの事を一つ一つ思い出していく。
「そう。確か唐突にアイツは、何か詩のようなものを口ずさみ始めたのよ」
それはソフィの『魔神』を使役する詠唱の事であったのだが、どうやらこの世界には『
だからこそ『チアキ』がソフィの魔法の詠唱を行っている事など皆目見当が付いておらず、何が起きたのか理解出来ていなかった。
「そしたらその後、何もない所からいきなり『
「は、はぁ?」
それまでチアキの話を真剣に聞いていたキネツグだったが『
「そ、そしたらね! その
段々と当時の事が思い出されていき、恐怖もまた思い出されたのだろう。まるでキネツグに早口で捲し立てるようにその口を動かし始める。
『
聞いている方が心配になる程、チアキは取り乱しながら必死に、キネツグに聞いてもらおうとするのであった。互いに目隠しをされているからこそ遠慮なしにチアキは喋り、そしてキネツグも相手の顔が見えないからこそ聞いていられている。
互いの顔が見えないところに少人数で固まっていると、妙な緊張感が生まれてしまい、互いに遠慮するように会話を全くしないか、逆に今のチアキのように延々と喋り続けたりして、両極端のような事象が起きる事があるのだが、どうやら『キネツグ』には話をしてもいいと判断した瞬間に、チアキはもう自分の怖い経験や、信じられない事を経験してしまった『
「ちょ、ちょっと待て! お、落ち着けよ『チアキ』!」
神様という言葉が出てきてから急に現実味がなくなってしまい、キネツグはこれまでのように、チアキの言葉が頭に入ってこなくなってしまった。
そして更にそれに拍車をかけるように、突拍子の無い事を早口で捲し立てられてしまい、キネツグは一度落ち着くようにとチアキに制止の言葉を投げかけるのであった。
(何が何だか分からねぇが、とりあえず今は落ち着かせないといけねぇ。俺自身『チアキ』の言葉を整理しきれていねぇ)
他人に流されやすいところがあるキネツグだが、こうして冷静にならなければいけないという重要な局面の時ほど、キネツグという男は冷静に自分を制御できる人間であった。
普段の彼とは違うこうした一面を持ち合わせているからこそ、キネツグもまた『
「えっ、ええ……! そ、そうね! 確かにその通りだわ……」
神経が過敏になっていたチアキは、キネツグの言葉でようやく我に返り、大きく深呼吸をして息を整え始めるのであった。
……
……
……
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