第981話 煌鴟梟のアジト
準備を整えたユウゲはイツキから言い渡された任務を遂行する為、本当に夜の内にケイノトを出る事となった。イツキが退魔組の事は何も心配はいらないと告げた以上、ユウゲはサテツの追求等もされなくて済むだろう。
そんな心配はイツキがあの笑みを浮かべて送り出した時からしていないユウゲではあったが、少し複雑な思いをしなが『
「しかし本当にこの辺に限らず、妖魔の出現が増えたな……」
ケイノトからアジトまではそこまで遠くは無い距離にあるが、それでもすでにユウゲは三度程に渡って妖魔に襲われていた。
『
所謂『
今はまだ町の中や旅籠のような宿場を狙って来ることは少ないが、それでも今後はどうなっていくかは分からない。
すでに妖魔召士と袂を分かつ事となった『
あれだけ大きな組織となっている以上、運営していく為には金子の問題は避けられない事だが、時代は変わったものだなとユウゲは溜息を吐きながら道を歩いて行く。
やがて完全に日が上る頃、
その『
ぽつんと僻地に建つ『
アジトの周りは何もなく広大な道が続いているだけであり、ユウゲが来た方向と反対方向の道も地平線が広がっている。ゲンロクの居る里から南下してぐるりと一周するように反対方面からここに向かってくるならば『
そしてユウゲが来た方向からも森を経由して来なければならない為、妖魔が増加している現在では、近くに旅籠も町もないこんな辺境にある場所に、わざわざ足を運んでくる者は居ない。明確な目的がなければ、ここに辿り着く事はないだろう。
周囲に何もなく、山や森に囲まれた広大な地である為、まさに『
普段から誰も来ない為か、それとも下手に見張りなど用意している方が不自然な為なのか、ユウゲには分からないが、施設の入り口には誰も立っている様子もなく、単に
「いや、これは『
どうやら門の前に誰も立っていない理由は、この結界に全幅の信頼がおかれているからだったのだろう。
少しの間、逡巡するように考えていたユウゲだったが、仕方無く何かをぽつりぽつりと呟きながら目を『青く』させた。
すると次の瞬間には『結界』が最初からなかったかのように消えていく。
どうやら『
(何とかなったが、俺でぎりぎり解除が出来る程の物か)
『
つまりこの『
ユウゲもまた『
ここまで来て『結界が解除出来なかったので戻って参りました』とイツキに報告に戻っていれば、最悪殺されてしまっても文句は言えない。
「やれやれ……。俺は結界を壊す事が出来ても張り直すのは苦手なのだがな」
帰りにも代わりとなる結界を張らなければならないなと、そう考えながらユウゲは
ユウゲはその池の前まで歩いていき、小さな橋の前で足を止めて辺りを見回した。
「ここが『
池を渡す橋の前でそう呟いていたが、やがて視線をあげて橋を渡る。
そしてそのまま中庭を歩いて『
「何だお前は? ここをどこだと思っている」
男たちは勝手にアジトの中庭に入って来た『ユウゲ』を見ながら侵入者だと判断したのだろう。各々の男たちの手には他者を傷つける為の道具を持ってユウゲの居る場所の前に現れると、そのまま今度は背後にも気配が感じられた。
ユウゲが振り返ると何処から現れたのかいつの間にやら、先程まで池の様子を眺めていた橋の前に、別の男たちが現れる。ユウゲは中庭の真ん中で、逃げ場所を失って立ち尽くす。
(どうやらずっと監視されていたわけか……)
「『
「な、何だって?」
ユウゲが『
……
……
……
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