第692話 大魔王ソフィの本当の力
魔神に預けていた魔力を取り戻して本来の魔力が戻ったソフィだが、その魔力は今までこの『リラリオ』の世界で戦ってきた
この状態のソフィと戦った事のある者は『力の魔神』『エルシス』『ダルダオス』の三名である。
その三名でさえソフィはこの状態で、三割以下の力でしか戦ってはいない。
だが、今のソフィはその力を抑えて戦おうとは思ってはいない。
――つまり、過去最大の力を以てソフィは、仲間に手を出した報いを受けさせるつもりである。
「ば、化け物めがぁっ! き、消えろ……、消えろぉ……!」
大賢者ミラは上空へと跳びあがるが、我を失い普段の彼とは思えない程に取り乱していた。
魔力が枯渇して生命力をも失いかけている状況下で、
――それは迫る恐怖を必死に振り払おうとしているようであった。
ソフィは『
次の瞬間、ミラの使っていた魔神の高密度エネルギーに似た魔法が放たれた。
しかしその魔神達の使う『技』よりもソフィが使った単なる魔力の波動は、桁が違う程に遥かに殺傷能力は高い。
「……カッ、ハッ……!」
魔法に貫かれたミラは即座に絶命し、空から落ちていく。
ソフィは次に掌を返した後、人差し指を上にあげる。
空から落ちていくミラの身体が、再び空を昇るように飛翔させられる。
そこで青い光がミラを包み込み、彼は空の上で蘇生が始まる。
ソフィは今度は、左手と右手を同時にミラに向けた。
――
ソフィがその魔法を使った時、リラリオの世界全ての空が一瞬で色を失くした。
暗い暗い漆黒の闇の中。蘇生を果たそうとするミラの身体だけが青く光っていた。
そしてそのミラの周囲に『魑魅魍魎』が惹かれるように現れ始める。
闇の中で彼らは怨嗟の声をあげている。
――嘆き、――苦しみ、――絶望。
まるでミラの光を恨み怒りをぶつけるような声達。
そしてミラが『
突然、恐ろしい程の振動がミラの身体を襲い始めた。
他者がその光景を見た時、彼が
まるで大勢からマシンガンを撃ち続けられているように、恐ろしい速度で小刻みに震えて振動を続けていた。
そしてその振動の正体は、
青い光が絶え間なくミラの身体を包み込むが、これは自動で発動しているワケではない。
大魔王『ソフィ』の『
僅か数秒程でこれまで他者の魂を奪い続けていた『ミラ』の命のストックが失われていく。
大魔王ソフィの前では、ミラが不死であろうと、そうでなかろうと
たとえミラの命のストックが『
そしてそれだけの力が、彼にはある。
――『
そして本気となった大魔王が放ったこの『
――かつてミラ自身が告げた事がある。
大魔王ソフィという化け物が、本気で『
そしてそれは誇張でも何でもなく、まさに彼自身がそれを味わっている。
これだけの魔法を必要とする魔力を賄える魔族は『
――しかし、彼だけは違う。
今無慈悲に行われている処刑の魔法を発動し続けているが、ソフィは自身の全魔力のほんの一部しか使ってはいない。
今の彼は強力すぎる魔力を抑える為に『魔神』に預けていた力を全て元に戻しているのである。
レキと戦っていた時のソフィの魔力とでさえ比較すら出来ない程の差がある。
もはや魔力の絶対数が大賢者ミラ程度とは、比べる事すら烏滸がましい程に違いすぎるのだった。
やがて永遠に続くかと思われたミラの振動が止まった。
これまで他者の魂を奪い続けた『仮初の命』のストックが尽きたのである。
ミラの死体が空から落ちてくるが、そのミラが地上へ辿り着く事はなかった。
光を失ったその身体に夥しい数の『魑魅魍魎』達が集まってきて、ミラの身体を覆いかぶさるように襲い掛かっていった。
「……終わりだな」
やがてソフィは魑魅魍魎達に襲い掛かられている『ミラ』の死体から視線を外して、力の魔神を元の世界へ戻した後に、フルーフ達の元へと向かっていった。
……
……
……
――ソフィが離れていった後、誰も気づく事無くミラの元に、一体の魔族が近づいてくる。
ミラの死体の体を喰らい尽くそうとしていた魑魅魍魎達は、その魔族の手によって一斉に消し飛ばされた。
あまりの速度と完全に外に漏れない程度の魔力で一瞬で消し飛ばした為、誰もこの集まってきていた亡者たちが、殲滅された事は気づかなかっただろう。
『
そして手早く目的を果たした
……
……
……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます