第693話 煌聖の教団の壊滅

 ソフィがミラに報復を終えてフルーフ達の元へ向かってきた時、こちらも決着がつこうとしていた。

 すでにフルーフの方は、ルビリスを倒し終えていた。床に転がるルビリスは事切れており、どうやら魂は既にこの場には無かった。


 ソフィがこの場に現れた事を察したフルーフは、ソフィに声を掛けてくる。


「とんでもない魔力だったな。あのミラを殺し尽くすとは……。お主は全く恐ろしい奴よ」


 フルーフがそう言うとソフィは謙遜するように、首を横に振るのだった。


「この魔族の魂はどうしたのだ?」


 床に転がっているルビリスの始末は、どうしたのかと尋ねるソフィにフルーフは無表情のまま答えた。


「転生をするたびにワシの『凶炎エビル・フレイム』を味わうように呪いをかけておいた」


「クックック、全くお主は変わらんな」


「お主のえげつなさに比べたらこの程度、可愛いものじゃろう?」


 フルーフとソフィは、冗談にもならない言葉を交わし合うのだった。


「では後は、ディアトロスの方だけか」


「いや、そちらもお主の『終焉エンド』で空が暗くなる前までは、戦闘の音がここまで轟いていたが、こちらが終わる前には静かになっていた。もう全てが終わっている頃合いじゃろう」


「そうか。それではディアトロスの元へ向かうとするか」


 ソフィがそう言うとフルーフも頷き、一緒にここから少し離れたディアトロスの元へ向かうのであった。


 ……

 ……

 ……


 フルーフのいう通りにソフィがミラ相手に『終焉エンド』を使う前、既にディアトロスは、バルドとの戦闘を終えていた。


「ぐ……っ、うぐぐ……!」


 ディアトロスと戦っていたバルドは、首だけがその場に残されていた。


 ディアトロスの神域魔法『移ろい往く欠落ミッシング・ムーブ』によって、最初は足、そして次に腕を奪われたかと思うと胴体までが消し飛ばされていた。最後に残された首から上の顔の部分だけが残されていた。


 どうやっているのか、バルドには分からないが、この状態でもディアトロスのせいで死ぬことが出来ていない。


 しかし痛みだけは今もリアルタイムでバルドを襲っている。

 だが、首だけでは動くことも出来ずに苦痛という名の拷問を味わわされていた。


「……?」


 バルドと戦っていたディアトロスは、、左手で顎を擦りながらバルドに告げる。


 苦痛に額に汗を浮かべて、ディアトロスの言葉を聞いていたバルドだったが、やがて無理矢理笑みを浮かべながら口を開いた。


「……く、くくっ……! 、ディアトロス殿。我が生涯の喜びはソフィ様の下ではなく、ミラ殿の元で感じられました」


 元の主であるソフィを、貶すような発言をするバルドだった。


「今も変わり映えのない、の元で、同じ景色を見続けている貴方たちは哀れですな」


「見解の違いだな『バルド』よ」


「さあ、それはどうでしょうな『ディアトロス』殿。貴方は幸せか?」


 バルドの言葉を真剣に考えたディアトロスだったが、その答えは決まっていた。


「当然じゃな。ワシは心の底からソフィについてきてよかったと思っておるよ。そしてそれは『九大魔王』全員が同じだと断言が出来る」


「ククク、確かに見解の違いですな」


 そこで少しがあった。そして再びバルドは口を開く。


「さて、もういいだろう? ワシを楽にしてくれぬか? 


 バルドの笑っていた表情は、無表情へと変わったかと思うと、突如言葉遣いが変わり、更にはディアトロスを呼び捨てにするのだった。


「バルドよ……。貴様が魔王軍を抜ける前、ワシはこうなる事など予想すら出来なかった。共に最後までソフィを支えると、思っておったのじゃがな」


 片や魔王軍『九大魔王』筆頭。片や魔王軍『全序列部隊のNo.3』。

 互いに序列の差はあったが、バルドが魔王軍に在籍していた頃、二人は志を共にするであった。


 最後までその関係は変わらないと、思っていたディアトロスだったが、こうして袂を分かつ事になり、更には自らの手で同士だったバルドを始末しなければならなくなった。


 感傷的な気分のままで、ディアトロスは一度だけ目を閉じる。

 そして再び目を開けた時、右手に魔力を込めた後、バルドに向けるのだった。


「では先に逝く」


「ああ……。地獄で待っていろ」


 ――神域魔法、『消失ス、名モ無キ骸』。


 ディアトロスの魔法によって、バルドはその生涯を終えた。

 数千年と続いたソフィ達と『煌聖の教団こうせいきょうだん』の戦争は、こうして幕を閉じるのであった。


 ……

 ……

 ……

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