第395話 煌聖教団の誕生
「やれやれ……。私が主軸となるのはまだ先のつもりだったのだがな……。まぁいい」
厄介な大魔王『ディアトロス』を撒いた事を確認した大賢者『ミラ』は『魔界』の北方付近にある大陸の山奥から人間の大陸がある方角を見据えてそう呟く。
「あの魔族の爺は、中央大陸に姿を見せた化け物の名前を『ソフィ』と呼んでいたか? 確かにあれはやばい。俺の目的を果たすためには、一番の障害となるだろうな」
ミラは同盟の立場にあった『ロンダギルア』の強さをよく理解しているつもりだった。
死の概念がない自分にとっては、ロンダギルアと戦ったところで負ける要素はないが、それでも彼の知る魔族の中では、一番の強さを持っていると判断していた。
しかしあの戦争を通してミラは少なからず『ロンダギルア』より強き魔族の存在を多く知った。
彼の思い描いていた構想は完膚なきまでに潰されたが、それでもその事を知れただけでも差し引きでプラスだったと言えた。
彼の目的を成し遂げる為に、障害となる者達の存在を知れた事はとても大きいと言えるからである。
「今のままでは正面からぶつかったところで勝ち目は無さそうだ。まずは『魔界』とやらの情勢を知り、協力者を募る事から始めるべきだな」
大賢者ミラは人間の大陸が見える『魔界』の場所から『人間界』をその視界に入れながら呟く。
大賢者ミラはこの時の戦争で後にこの世界の支配者となるであろう存在を把握して、それを念頭に入れた緻密で長い期間を必要とする作戦を考え始めるのだった。
――そしてそれは、数千年後に叶えられる事となる。
――
……
……
……
――そして再びレアの居るアレルバレルの時代。ロンダギルアが支配していた『魔界』に存在する最南端の大陸。
『
そこに大賢者ミラの組織の『生贄部隊』は、再び潜伏しているという。
『イリーガル』や『ブラスト』といった大賢者『ミラ』と、直接の関係性を持たなかった者は、この大陸には特に思う事はないが、大賢者ミラと戦いソフィの配下となるに至ったきっかけとなった『ディアトロス』はこの大陸に足を踏み入れた時に
(
大魔王フルーフを連れ去った者は、ヌーと思われている。何故なら直接戦ったと思わしき魔力の残滓が、あのフルーフが消える瞬間に辺りに残されていたからである。
そして『ヌー』は『ソフィ』に戦争を仕掛けた経緯があるため、何らかの理由でソフィと懇意の関係があった『フルーフ』を連れ去ったのだろうと判断している。
しかしどうやら調べを進めていく内に、ヌーとミラは
ヌーの従えていた魔族達と、最近活発的に動いていた『組織』の魔族と親交が確認されたのである。
確実な証拠はない為に推測の域を出ないが、この大陸に来たことで『ミラ』の存在を思い出したディアトロスは、
新魔法を生み出す事や、既存の魔法の改造等。
『魔』に関して大魔王フルーフは、天才の域に至っている事は疑いようがなく、過去に戦った事のある大賢者ミラもまた、共通点と言える
つまり『フルーフ』に有用性を見出した大賢者『ミラ』が、ヌーとなんらかの契約をして同盟関係を結び、フルーフを連れ去ったのだろう。
すでにあの若造の魔力はこの『アレルバレル』では感じる事が出来ないために、この世界にはいないのかもしれないが、ディアトロスはこの大陸から感じる『組織』の残存勢力の魔力からどこか懐かしいものを感じている。
つまりこの大陸にあの若造と強い関連性のある魔族が、潜んでいる事が容易に想像できるのであった。
(ワシを侮るなよ若造。上手く立ち回ったつもりだろうが、お前を確実に見つけて仕留めてやる)
大賢者ミラは大魔王『ソフィ』を化け物と呼んで自分の計画の妨げになる者と認めていたが、実はここに居る大魔王『ディアトロス』もまた、決して侮ってはいけない存在だという事を認識しておくべきであった――。
そしてディアトロス達は、この最南端の大陸で潜んでいるとみられる『組織』の『生贄部隊』を探し始めるのだった。
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