第269話 魔王レアの全力、金色のオーラ

 ソフィは飛んでいったレアの方向を冷静に見ていた。


 彼はまだオーラさえ纏っておらず全くと言っていい程に本気ではないが、それでも大魔王化状態のソフィの戦力値は20億を優に超える為に、普通の魔族であれば今の一撃で跡形も残らず消し飛ぶだろう。


 しかしソフィは今ので勝負が決まったとは、当然思っていなかった。


「お主が我を疑い戦争を仕掛けてきたのだ。まさかこの程度で終わりではあるまい?」


 久しぶりの形態となったソフィは、自身の第二形態の時のように闘争本能が呼び起こされて、むしろこのまま、終わってくれるなよとばかりに飛ばされた先の激痛に耐えるレアを見るのだった。


 …………


 ――許せない……、許せない!!


「絶対に許してなるものかぁっ!!」


 ヴェルマー大陸の上空から殴り飛ばされたレアは、ミールガルド大陸とヴェルマー大陸のちょうど真ん中辺りの海が見える大空で、全ての力を開放しようとしていた。


 キィイインという音が辺りに響き、レアの目が再び金色になるとレアの周囲を覆っていた『青』と『紅』のオーラが消えた。


 そして風凪いだ次の瞬間、レアを纏うオーラが金色に輝く。


 ――である。


「この戦力値の上昇率はやはりだったか」


 そう呟くソフィは自身の『大魔王化』を維持したまま構える。


 次の瞬間――。


 何も居なかった視界に一瞬だけ光が見えたかと思うと、ソフィの目の前にレアの姿が現れた。


 彼女は魔法の類ではなく、一瞬でこの距離まで自力で空を飛んできたのだった。


「クックック! 中々に速いではないか!」


 金色のオーラを纏ったレアが拳を振り切る。


 先程のソフィの攻撃をそっくりそのまま返したかの如く、金色のオーラに包まれたレアの拳がソフィを殴り飛ばした。


 戦力値26億のソフィの身体がレアの攻撃によって弾かれたソフィは、ラルグ魔国の象徴と言われている塔にそのまま直撃し、余りの衝撃に塔は真っ二つに割れて崩れてしまった。


「うわあああっっ!!」


 ――神域魔法、『凶炎エビル・フレイム』。


 レアは叫び声をあげながら、殴り飛ばしたソフィに対して続け様に神域魔法を放つ。


 『終焉の炎エンドオブフレイム』とは比べ物にならない火力。どす黒い炎が、ラルグの塔を覆いつくす。


 息切れを起こしながらも確実に息の音を止めたと確信するレア。


 今の魔法は紛れもなく、現在のレアが出せるである。


 大魔王フルーフの編み出した『攻撃魔法凶炎』であり、恐ろしい程の魔力の消費を余儀なくされるが、威力は超越領域の極大魔法とは比べ物にすらならない。


 実際にラルグの国の象徴であるは、黒き炎によって無残に溶けていた。


 金色のオーラは練度に関係なく、体現と同時に普段の戦力値と魔力値が通常の10倍にも膨れ上がる。


 青や紅の併用で得られる戦力値の上昇など


 しかしこのリラリオの世界だけではなく、他の世界であっても体現した者は何百年、何千年単位で表してもほんの僅か一握りしかいない程である。


 【種族:魔族 名前:レア(真なる大魔王) 魔力値:6億1000万

 状態:『金色』 戦力値42億2000万 所属:大魔王フルーフの直属の配下】。


「終わった……!」


 その言葉と同時にレアの小さな体にじんわりと達成感が広がっていく。


「終わったわぁっ!!」


 両目から溢れる涙を今度は拭わず、歓喜の声をあげて喜ぶレアだった。


 ――しかし。


「クックック、素晴らしい……。未だかつて見た事も味わった事もない炎だった」


 今も尚流れ続ける涙、そのレアの両目は大きく見開かれる。


「え?」


 驚きながらソフィの声を聴いていたレアの前に、一瞬でソフィの姿が現れたと思えば、歪んだ笑みを浮かべたソフィの拳がレアの横顔を殴り飛ばした。


「さあ、我をもっと楽しませてくれ! 『!」


 ……

 ……

 ……

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