第221話 出撃準備
キーリ達が飛び去って行った後、ソフィは
レイズ城もシティアスも無事で、一見何も起きていないように見える。しかし地面のあらゆるところに大穴があいていたりして、ソフィには直ぐに戦闘があったのだと判断出来るのだった。
そして何よりも『ロード』を含めたソフィ達の配下全員が、気を失って倒れていたところを見るに、相当大きな戦闘があったことは間違いはないだろう。
「一体なにがあったのだ……?」
ソフィが途方に暮れていると、シティアスからこちらに向かって走ってくる者達がいた。
レイズ魔国の重鎮達『リーゼ』や『レドリア』、それに『リーネ』達であった。
……
……
……
ひとまず事情を聞く前にラルフ達をベア達がいつもいる拠点の方や『シティアス』の空いている建物に搬送する事にするソフィであった。
この場に居ないユファやシスに気づいたソフィだが、レドリアが終始悔しそうな表情を浮かべている事もあり、嫌な予感を感じつつもひとまずは、ベア達が先だと問題を先送りにする。
そしてようやく話を聞く準備が整ったソフィは、レイズ城で起きた
……
……
……
――所変わって、ここはターティス大陸。
意識を失っているディラルクを担ぎながら、ようやくレキオンは『ターティス』大陸へ戻ってきた。
始祖龍であるキーリ達の帰還を今か今かと待ち望んでいた龍族達はレキオンの姿が見えたことで大いに喜んだ。
しかしレキオンに抱えられているディラルクの様子に何かがおかしいと、大陸に居た龍達は気づいた。
そしてレキオンがターティス大陸の中央にある宮殿に戻ると、直ぐに他のキーリの側近達が駆け寄って来るのだった。
「で、ディラルク殿!」
「ディラルク殿は件の『魔王』に敗れた。お前達、すまないが直ぐに手当ての準備を願いたい」
レキオンがそう言うと了解を示すようにキーリの側近の一体が頷き、ディラルクを背中に背負いながら奥の部屋へと運んでいった。
そしてその様子を見届けた後、部屋に居た『ミルフェン』が声を掛ける。
「それでレキオン、キーリ様はどこにいる?」
レキオンとディラルクだけの帰還にミルフェンは、訝しげな表情を浮かべながらレキオンに問う。
「始祖様は敵国の
「何だと? キーリ様を放ってお前達だけが戻って来たというのか!?」
「始祖様のご命令だったのだ! 私とて奴に手痛い一撃を与えたいところだったのだ! しかし始祖様がディラルク殿の手当てと、待機している龍達の全軍に出撃準備をさせておけと告げられたのだ!」
ミルフェンはレキオンの話を聞きながらもある事に気づいた。
それはいつもキーリ殿と呼んでいたレキオンが、今この場で
レキオンが始祖様と呼ぶ時はキーリ様が、本気で戦う時の姿を見た時の癖である。
つまり今ヴェルマー大陸では、相当な戦いが繰り広げられているのだろうと察する。
「おいレキオン。本当に魔族達の大陸にディラルク殿がやられるほどの『魔王』が居たのか?」
ミルフェンがレキオンにそう聞くと、レキオンは苦々しい表情を浮かべながら頷く。
「ああ。かつての『魔王』レアと
レキオンの言葉に若干の驚きはあったがミルフェンは、ディラルクの様子からある程度予測はついていた。
そして先程のレキオンの言葉の荒げようや、あの『魔王』レアがわざわざ封印を施した我ら龍族を復活させて、力を測らせようと言うのだから、それは相当な強さだったのだろう。
(やはり相当な存在が居たようだが、しかし問題はあるまい。キーリ様が本気になられたならば心配する事は何一つないだろう)
最後にあの方の側近となったレキオンは、本当のキーリ様の姿を知らないだろうが、
たとえ相手が『
「そうか、分かった。では必要はないかもしれないが『キーリ』様が言われたのだから、全員に出撃の準備をさせておこう」
そういってミルフェンは、宮殿の中央の大部屋に全龍族を集めるのだった。
……
……
……
シスとユファはこの国とソフィ達の配下を守るために戦い、真っ白な龍に敗れた後に拉致された。
国民の避難をさせていたリーゼ達から、龍族達の事情を聞いたソフィは静かに頷いた。
リーゼやレドリアが話し終えた後、ソフィは何かを考える様に目を瞑る。そしてゆっくりとソフィが目を開けた。
レドリアは今後についてどうするかをソフィに訊ねようと、そのままソフィの方へと視線を送ってしまった。
『魔王』でさえ今のソフィを見れば、震えあがる程のソフィの身体から溢れ出るオーラ。
リーゼは隣にいるレドリアの様子がおかしい事に気づいて、その視線の先のソフィを見る。
「!?」
ソフィの目は金色へと変貌を遂げ、身体から『三色のオーラ』が混ざり合うように溢れ出ていた。
――ソフィと付き合いが浅い『リーゼ』や『レドリア』達はまだ知らない。
――キーリは知らず知らずの内に、悪夢へ続く道を自ら選び進んでしまっていたのであった。
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