第106話 ラルグ魔国VSトウジン魔国3

 レイリーの策略が上手く嵌り中央突破が功を奏して『トウジン』魔国の勢いはグングンと増していったが、この大国同士の戦争はようやく拮抗状態に突入したといえるだろう。


 まだまだラルグ魔国軍は主力部隊を温存しているのであった。


 そしてここでラルグ魔国軍の幹部達が動き始めた。


「シュライダーよ、お前も自分の部隊を動かせ」


 ラルグ魔国軍の指揮官『ネスツ』がそう言葉を発すると、待機していたシュライダーと、その部隊が迅速に行動を開始する。


 第二軍、第三軍がトウジンの魔国軍と交戦している上空から、行動を開始したシュライダーの部隊が次々と降りていく。


 ――ここからが『ラルグ』魔国軍の本領であった。


 すでに『トウジン』魔国は動かせる部隊は総動員しており、現状でようやく戦局は五分五分といった形だったのだが、そこにシュライダーの部隊総勢700が追加される事となった。


 中央突破を果たしていた『トウジン』魔国の魔族達が一気に押し返される。


 そしてその様子を見ていたネスツが、次の部隊を指名する。


「ニーティ、ナゲイツ。お前達もだ」


「「御意!」」


 ようやく出番が来たとばかりに幹部達が軍を動かしていく。


 左翼と右翼の挟撃を何とか防いできたトウジン魔国軍達の頭上から更に、シュライダーの部隊が空を支配しながら進んでくる。


 そしてその更に外側から包囲するように膨大なラルグ魔国軍がトウジン軍を覆っていく。


 更に更にそれだけでは終わらず、遂にラルグ魔国軍の幹部達も『ネスツ』の指示によって攻撃に参加していくのであった。


 【種族:魔族 名前:ニーティ・トールス

 魔力値:999 戦力値:1320万 所属:ラルグ魔国】。


「トウジンの強者共、ちっとは楽しませてくれると願っているぜ?」


 最上位魔族のニーティは、紅いオーラで体を強化していき持っている槍を振り回す。


 風圧でトウジンの軍勢を吹き飛ばしていき、恐ろしい速度で突き殺していく。


 そして『ナゲイツ』も負けてはおらず、ラルグの魔族達をうまく活かしながら、ニーティの背後を守るように上手く侵攻をしながら二段構えといった形で、トウジン魔国軍に攻撃を仕掛けていく。


 まさに一騎当千と言った様子で、数と力で一気に制圧。ほんの数分で五分と言えた形勢だったものが、あっさりとラルグ魔国軍に傾いていく。


 ディアス王はこの様子を見て、大量の汗を流し始める。


(これが『ラルグ』の本領か……っ!)


 まさに穴がない。


 膨大な数に膨大な戦力――。


 一度は勝てるかもしれないと思わせておいてからのこの状況は『トウジン』魔国にとってはとても辛い物があった。


 蹴散らしても蹴散らしても、ラルグ魔国の軍勢は減らない。


 そして何よりも『ニーティ』と『ナゲイツ』の存在が非常に厄介なのである。


 ニーティが前に出てガンガン攻めたかと思うと、その周りをナゲイツが部隊を左右に並走するように動かしてくるので、上手く連携が取れずに攻撃が出来ないのである。


 そしてそちらにばかり気を取られていると、上空からシュライダーの部隊が次々仕掛けてくる。


 小休止状態であった元々居た『ラルグ』魔国の数千の『上位魔族』が再び息を吹き返して、攻撃を再度開始してくるのであった。


「よう、トウジン魔国の名指揮官様! 手前の采配大したものだったぜ?」


 指示を出そうとしていたレイリーの正面に、遂に鋭利な槍を持った『ニーティ・トールス』が到達する。


「くっ……!」


 レイリーは突き出されたニーティの槍をなんとか回避して、抜刀している刀にオーラを込め始める。


 そして二体の『最上位魔族』同士の殺し合いが始まり、激しく槍と刀がぶつかり合う。


 レイリーの加勢をしようと数体のトウジンの魔族達が間に入るが、ニーティは哄笑こうしょうしながらあっさりと屠っていくのであった。


「クハハハハ! 残念だが手前らでは足りぬ!」


 ――まさに武力が違う。


 レイリーの強さを以って、ようやくニーティの槍を防ぐ事が出来ているといった感じである。


 しかしそれもジリ貧であり、数で劣るトウジン魔国に幹部のレイリーが抑え込まれてしまえば一つ、また一つと形勢が不利になっていく。


 既にトウジンの王のいる陣営まで、次々と『ラルグ』魔国軍達が入り込んでいく。


「ディアス様! 下がってください! ここは私達が!」


 『シウバ・フィクス』と『マーティ・トールス』がディアス王を守るように前に出て、ラルグの魔族達を倒していく。


「お前達! ここは大丈夫だ! それよりも前線のレイリーを助けてやってくれ!」


 ディアス王はそうシウバ達に告げると、自身の刀にオーラを纏い始めた。


 戦力値が軽く3000万を越えるディアス王が戦闘態勢に入った事により、トウジン魔国陣営に入り込んでいたラルグ魔国軍の『上位魔族』達はその圧力に動けなくなる。


 ――そして止まってしまえば、そこに待つのはである。


「いくぞ……!」


 ――『ディアス』魔国王の刀はまさに疾風迅雷。


 目にも止まらぬ速さで、一瞬にして十体程の『上位魔族』の首が胴から離れて跳ばされていく。


 その様子を見ていた『シウバ』と『マーティ』は互いに顔を見合わせて頷き合うと、シウバがディアス王の護衛に、そしてマーティはレイリーの元へと向かっていく。


 まさにトウジン魔国のお家芸とも言える連携で、洞察力を使った言葉要らずの疎通を見事に行って見せたのだった。

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