第105話 ラルグ魔国VSトウジン魔国2
上位魔族同士とはいっても、国の特色が違えば動きが変わる。
ラルグ魔族の者達の攻撃は、一薙ぎで勝負を決めようとする者が多い中、トウジン魔国の兵達はまず相手の攻撃を防ぐ為に足を削ぐ。
自分がトドメを刺す必要はなく、味方の魔族が攻め落とせば同じ一体の魔族を倒せるのである。
つまり一体に対して、二体で確実に一匹を仕留めていくのだ。
その戦術は数で勝る『ラルグ』魔国相手に通用する手法には見えなかったが、蓋を開けて見れば戦場での効果は絶大であった。
強引に敵を殺そうとするラルグ魔国軍の攻撃を
そして背後にまわりトウジン魔国兵は、確実に急所を刺す。
数で劣るトウジン魔国ではあったが、こうして少しずつ戦局を支配していくのだった。
しかし『トウジン』魔国が戦争を優位に運んでいると思っていた矢先、ラルグ魔国軍はこれまでとは異なる動きを見せ始めるのだった。
「行け!」
そしてラルグ魔国軍の指揮官であるネスツの言葉に、待機していた次の部隊達が飛んでいく。
前線同士で戦う者達を迂回しながら両脇を攻め立てる如く動く。
――これこそが指揮官である『ネスツ』の狙いだった。
先発隊が強引に特攻していき、待機していた第二軍で挟撃する。
数の差があるラルグ魔国軍だからこそできる策略である。
初手こそトウジンが有利に動いていたモノの、戦局は徐々にラルグ魔国に変わりつつあった。
(一度退がらせるか? しかし最前線を下げると中央突破されるだろう)
シチョウの代わりにトウジンの指揮官を任せられた『レイリー』は、戦局を見極めながらぶつぶつと独り言つ。
序盤は確実にレイリーの采配がうまくハマってはいたモノのやはりこの数を覆すにはもう一つ何か材料が必要であった。
しかし魔族同士の戦いは時間との勝負である為に迷ってる暇はない――。
「後発隊を残して、全軍中央へ進め!」
レイリーの指揮に瞬時に頷いた兵士達は迅速に行動を開始する。
挟撃を恐れずにひたすら真っすぐ、真っすぐに進んでいく。
一秒また一秒と時が経つごとに、トウジン兵達はその命を刈り取られていくが、レイリーの作戦は上手く行っていると考えていいだろう。
無事に挟撃を抜けて中央にいるラルグ魔国軍を蹴散らす事に成功する。
一直線にトウジンの部隊は雪崩れ込んでいき、流石の数を誇るラルグ魔国軍であってもその勢いに中央が手薄になり始める。
そしてレイリーはここで間髪入れずに後発隊を動かす。
挟撃していた左右の部隊が前線の部隊につられて、背後から狙おうとしているところの更に背後から一気に攻め立てる。
「さぁ行け! 出し惜しみはなしだ! 背後から近づき、蛮族共の臓物を抉り出せぇっ!」
「「オオオオオ!!」」
そしてレイリーの紅く光った目と言葉で死を恐れぬ軍隊『トウジン』魔国軍は、敵を殺す為に一気に動くのであった。
……
……
……
「敵の指揮官は見ない顔だが、中々に素晴らしい采配を行うではないか」
『ラルグ』魔国軍の指揮官である『ネスツ』は『トウジン』魔国相手にここまで手こずるとは思っていなかった。
レイリーは純粋に戦略と策略を用いて、数で勝負が決まると言われている『上位魔族』同士の多く居る戦場でここまでの人数差を覆したのだ。
ネスツはこれまでの戦争の局面で上手く采配を行い、圧倒的差を感じさせずに対抗を行ってみせた『レイリー』という『トウジン』魔国軍の指揮官を認めるのだった。
――しかし認めてはいるが、当然『ラルグ』魔国軍の指揮官『ネスツ』の智謀はこれで終わりではない。
むしろ『レイリー』の上手い采配をもってして、ようやく二国間で『戦争』といえるモノに成り立ったに過ぎず、ここからが『ラルグ』魔国軍との本当の戦いが始まるといえるのだった――。
……
……
……
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