第107話 ラルグ魔国VSトウジン魔国4

 ディアス王の背中を守るトウジン魔国のNo.2『シウバ・フィクス』は、トウジン魔国の守護神と呼ばれている。


 身長は三メートルを越えており、武器は自分自身の身体といえる大男である。


 『上位魔族』特有の紅いオーラを鎧の如く身に纏い、その剛腕で敵を殴り倒していく。


 そして耐久面もまた高く『レイズ』魔国の『上位魔族』の魔法も幾度となく防ぎきる程の耐魔力も持っているのであった。


 既にこの戦争でもその力を発揮して、波状攻撃を仕掛けてくる『ラルグ』魔国軍をこれまで抑え続けられている。


 ラルグ魔国軍の幹部達が動き始めた後は軍の攻撃が熾烈を極めているが、トウジン魔国が総崩れになっていないのも、彼の影響が大きかったからこそである。


 だが、時間が過ぎていくにつれて『トウジン』の精鋭の魔族達も数が減っていく。


 戦局は完全にラルグ魔国に傾いてしまった。


 それ程までにラルグ魔国軍の幹部達は強かった。


 トウジン魔国はもう『ディアス』王や、シウバ達も戦線に手を出しているにも拘らず、ラルグ魔国は『シーマ』王どころか、No.2の『ゴルガー』ですら戦場に顔を見せていない。


 そうだというのに大国同士でこれだけの戦力差が生じているのが現実であった。


 最強の魔導士と呼ばれた『ヴェルトマー』が健在だった頃の『レイズ』魔国の偉大さが身に染みる思いである。


 大国の三国が睨み合った状態だったからこそ『ヴェルマー』大陸は均衡を保っていたのだ。


 『トウジン』という大国ですら『ラルグ』魔国との戦争ではこんなにも一方的になる。


 もはや『ラルグ』魔国の勢いを止められる国など、この『ヴェルマー』大陸には存在しないだろう。


 気が付けば数千の『ラルグ』の魔族達が領内に入り込み、同胞達は次々と死んでいく。


 満身創痍で『トウジン』軍は戦い続けるが、徐々に終焉の音が聞こえてくる。


 そして遂に前線で戦っていた『レイリー』にも死が近づいていた。


 ニーティの槍がレイリーの胸を貫いたのである。


「ぐ……っ! ごふっ……!」


 流石の『レイリー』といえども戦力値の差がある『ニーティ・トールス』の相手は長時間とは持たなかった。


「手前はよくやったよ。俺の槍をここまで耐えられただけでも大したものだ」


 そう言ってニーティは、倒れ行くレイリーに敬意を示すのだった。


「ディアス様……、ご武運を!」


 その言葉を最後に『トウジン』魔国の指揮官『レイリー』はをするのであった。


 そしてレイリーの死から僅か数刻で『マーティ・トールス』も逝く。


 ――ラルグ魔国軍 残存勢力 11000。

 ――トウジン魔国軍 残存勢力 300。


 最早この戦争は戦局どころか、大局も雌雄を決したといえる。


 そして遂に『ディアス』と『シウバ』の元にラルグ魔国軍の幹部達が集結する。


 一番槍『ニーティ・トールス』。上空には『シュライダー・クーティア』。更には『上位魔族』を束ねるラルグ第一軍特務曹長『ナゲイツ・ディルグ』。


 そしてラルグ統括軍事司令である『ネスツ・ビデス』もその姿を見せるのであった。


 完全に『トウジン』の本陣を包囲されているが、『ディアス』王と『シウバ・フィクス』は、最後の最後まで諦めず戦い抜く。


 流石のトウジン最強の二人にラルグ軍幹部達も攻めあぐねるが、徐々に体力を奪われていき『ラルグ』の『上位魔族』数百体を倒した後に、ここまで耐え抜いてきた『シウバ・フィクス』も限界がおとずれてその場に倒れた。


 そしてディアス王の前に、遂に『シーマ』王と『ゴルガー・フィクス』が現れる。


「ディアスよ、残るはお前のみだな」


 そう告げたラルグ魔国王『シーマ』は、紅いオーラを纏った剣を抜いて構える。


「喜べ、俺が直々に相手をしてやるぞ。トウジンの魔国王」


 ディアスはすでに、立っているのもやっとの状態である。


「ぬかせ、今頃出てきてよく言う」


 歯を見せながら最後にそう告げて『ディアス』王は笑みを浮かべた。


「クックック、確実に勝利を選ぶのが王というものだ」


(ここまでか、シチョウ……。後を頼むぞ!)


 そして百を数える程の互いの仕合の末に、『シーマ』の剣が『ディアス』の首を刎ねた。


 この二人はほぼ互角の戦力値だったが、戦争の中では比較的あっさりと勝敗は決したのだった。


 ――こうして数千年に渡り続いてきたヴェルマー大陸の戦争は『レイズ』魔国と『トウジン』魔国を破った『ラルグ』魔国の勝利で幕を閉じたのだった。


 覇者となったラルグ魔国の王『シーマ』は『』と名乗る事となった。

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