第102話 ソフィという存在
シスが事情を話し終えた後、ソフィ達がエルザやリーネ達と話をしている間を見計らって『レルバノン』にこっそりと話し掛ける。
「ねぇ、ちょっといいかしら? 私には『上位魔族』としても相当に上位に居るエルザが、あのソフィさんを怖がっているように見えたのだけど、ソフィさんって何者なの?」
シスは言葉には出さなかったが、エルザだけではなくレルバノンも震えていたのを彼女は分かっている。
そこでレルバノンがソフィをどう思っているのか、それが彼女の一番に聞きたい事であった。
シスにそう言葉を掛けられたレルバノンは、少しだけ逡巡するような態度を取っていたが、やがて口を開いて小声で返事をする。
「そうですね、貴方はソフィ君を見てどう思いますか?」
見た目や年齢の事を言っているワケではないと、シスは理解をしてソフィをじっくりとみる。
「そうね……。
やはり
「そうですね。私も最初は貴方と似たような感想でしたが結論から言うと、彼は
「なっ!?」
レルバノンは聞き捨てならない言葉をシスに言い放つのだった。
シスの知るレルバノンという男は、決して智謀に長けているだけではない。
――『
これがヴェルマー大陸にいた頃の『ラルグ』魔国軍No.2『レルバノン・フィクス』の二つ名である。
もちろんヴェルマー大陸という実力主義の魔族社会の中で、長年大国のNo.2だった以上は弱いワケはないのだが、それ以上に『鮮血のレルバノン』は当時の『ヴェルマー』大陸の多くの魔族達に恐れられていた。
彼の武器は大鎌で一振りすれば『上位魔族』百体の首が吹き飛び、二振りすれば敵対する軍勢その全ての者達の首が飛ぶとさえいわれる程であった。
前時代の三大魔国の戦争時『レイズ』魔国の力ある魔族や『トウジン』魔国の精鋭が、鮮血のレルバノンと対峙することがあれば、死を覚悟すると呼ばれていた程である。
そんな彼が十歳程の年齢の魔族相手に瞬殺されると断言するように告げているのだから、それはよっぽどの事である。
「にわかには信じがたい事だけれど、貴方程の男が冗談を言うとは思えないものね」
レルバノンの戦力値は3000万をゆうに超える。
そんな彼がソフィを敵にまわせば即座に殺されるというのだから、あのソフィという少年には何かがあるとシスは思い直すのであった。
「貴方も話くらいは聞いているでしょうから誤魔化す事はしませんが、私はラルグ魔国に狙われている身でね。お恥ずかしながらこの『ミールガルド』大陸まで逃げてきたのですよ」
ラルグ魔国のNo.3であったゴルガーが『フィクス』の名を継いだと聞いた時から、レルバノンが国を去ったという噂は聞いていたが、本人の口から直接聞くと何か寂しいものを感じるシスであった。
「それでここからが重要な話なのですが。この『ミールガルド』大陸で『ラルグ』魔国の軍勢から身を守る為に部下が色々と模索をしてくれまして、とある筋からこの大陸の魔物を操る手を手に入れて、これで何とかなるかもしれないと思った矢先に『ソフィ』君が我々の前に現れましてね? 我々の狙いは全て彼に打ち砕かれたのですが……」
そこまで話を聞いたシスは、話の途中ではあったが『ソフィ』という魔族が見た目通りではないと思えたのであった。
「私の部下にスフィアという戦力値800万を越える『上位魔族』が居たのですが、彼女がソフィ君に幻術をかけて、意識を失わせたのです……」
そして次の言葉には、流石のシスも驚きを隠しきれなかった。
「そこであのソフィさんの『魔力』を感知したのですが、その魔力の一端しか計れなかった私でさえ、感じたその魔力は『ヴェルトマー』殿を遥かに凌駕しておりました」
「は?」
「それでもまだ彼は本気ではないでしょう。その後に何かもっと……。形容し難い恐ろしい何かを召喚した時に私の『魔力感知』では、更にソフィ君の魔力が膨れ上がっていました……」
その時の事を思い出したのであろう――。
レルバノンは震える手を見つめながら続きを話し始める。
「その時の戦力値を『漏出』で測る事は私には恐ろしすぎて出来ませんでしたが、恐らくは『シーマ』様より……いや、それどころか貴方の国の伝説となっている『
――エリス女王とは二代前の『レイズ』魔国の女王の名前であり、シスの祖母にあたる人物であった。
歴代の『レイズ』魔国の女王で
まだレルバノンが今のエルザよりも幼かった頃にこの世界を去った為に、詳細は覚えてはいないが、それでもその後に女王となった『セレス』女王とは比べ物にならない『魔力』を有していたとこの世界でいわれている存在であった。
流石にシスはレルバノンが、何を言っているか分からなかった。
シスが幼少の頃に母の『セレス』から聞かされた話では、祖母の『エリス』女王は『レイズ』魔国史上で最高峰の『魔力』と『魔法』を持っていて、母の『セレス』女王の時代に祖母が居れば、あっさりと『ヴェルマー』大陸の統一を果たして『レイズ』魔国を
つまり母の時代よりも『魔族』の
「さ、流石にそこまで貴方の話を信用する事は出来ないわよ……」
シスがそう言うとレルバノンは笑みを浮かべた。
「ええ、当然そうでしょうね。別に信用していただなくて結構ですよ? 但し三大魔国筆頭の『ラルグ』魔国で宰相まで登り詰めた私が、彼に
その言葉を聞いたシスは、ゴクリと生唾を飲み込むのだった。
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