第100話 再びレルバノン邸へ
シスがソフィの屋敷に姿を見せた後の一夜明けた朝。
ソフィ達がリビングへと顔を出すと、直ぐにシスは立ち上がってソフィの元まで走っていくと、そのまま深々とソフィに頭を下げた。
「昨日は取り乱してすまなかった。そして泊めてくれて感謝する、本当にありがとう!」
一日経って少しは落ち着いたようで、彼女はソフィに笑顔を向けながら感謝の言葉を口にする。
「うむ……。それは構わないが、もう大丈夫なのか?」
ソフィの言葉に、シスは落ち着いた様子で頷く。
「ああ、お主達には迷惑をかけた。何も出来ないがお礼だけは言わせて欲しい」
そう言ってまた頭を下げたシスは、何度も感謝の言葉を述べた。
ソフィは事情を無理に聞こうとは思わなかったが、このまま同じ『魔族』としてここまで弱っている彼女をこのまま放り出す事は出来なかった。
「お主は『ヴェルマー』大陸とやらから来たといったな? 我の知り合いに『レルバノン』という男が居るのだが、お主は知っているだろうか?」
頭をあげたシスはソフィの言葉に激しく動揺するのだった。
レルバノンという男は確かに『ヴェルマー』大陸に居た魔族であったが、その正体は『ラルグ』魔国の宰相の立場に居た『フィクス』であったのだった。
「な、何故! その名前を……!?」
「縁があって今は奴とは協力関係にあるのでな。もしお主と知り合いなのであれば、会ってはいかぬか?」
ソフィの申し出にシスは考える。
確かに『レルバノン』はすでにラルグ魔国とは関係はないが、それでも現在の
必死にシスは悩んだ末に、ここは会っておくべきだと判断したのであった。
……
……
……
ソフィの『
「ソーフィー!」
呼び鈴を鳴らそうとソフィがレルバノンの門に近寄ると『エルザ』の声が聞こえてくるのであった。
どうやら『魔力感知』か『魔力探知』を用いたのだろうとソフィは察する。
嬉しそうにレルバノンの屋敷の中から、エルザが飛び出してソフィの前まで飛んでくる。
一緒についてきたリーネがそれを制止するかの如く、慌ててソフィの前に立ちはだかる。
「む、リーネ殿、邪魔をするな」
ソフィに抱き着くのを阻止されたエルザは、口を尖らせながらそう言い放った。
「何が邪魔よ! わざわざソフィに抱き着こうとしないでよ」
二人が口喧嘩を始めたので、スイレンが二人を宥める。
「ふふ」
そんな様子を見てシスが笑いを堪えきれず、声を出して笑う。
「ん……? 貴様はどこかで見た顔だな」
そんな笑い声をあげるシスを見てぼんやりと考え込むエルザだったが、やがて思い出したのか『エルザ』は慌てて『シス』の近くから離れる。
「き、貴様は! 『レイズ』魔国の女王であるシスではないか!」
上位魔族の今のエルザに『
どうやら『エルザ』は本気で『シス』を相手に戦闘態勢を取ろうとしているらしく、紅く光る目でシスを見る視線にも明確な殺気が込められていた。
――だが、シスはエルザの殺気をその身に受けても平然としている。
むしろ
「やめぬかエルザよ。シスには我が無理をいって連れてきたのだ」
ソフィの言葉を聞いて疑問の表情を浮かべていたエルザだったが、彼女が信頼するソフィがそう言うのなら仕方がないとばかりに落ち着いた。
「どうやら相当な訳アリのようね。レルバノン様に用かしら?」
ソフィが頷くのを見たエルザは溜息を吐いて、レルバノンの元まで案内することにしてくれたようだ。
(ソフィ、私に会いに来てくれたんじゃなかったんだ……)
エルザは少しだけがっかりした様子を見せたが、直ぐに案内する途中にシスに視線を送った。
(何でここに『ヴェルマー』大陸の『レイズ』魔国の女王が居るのだ? というかそもそもソフィとどうやって知り合ったというのだろう? 全然接点が分からない……)
エルザはソフィの事は信頼しているし信用もしているが、古巣である『ラルグ』魔国の元敵国の女王であった『シス』をこれっぽっちも信用していない。
もしも彼女の前で敬愛する主人に何かしようとするならば、自らの身を挺して守ろうと固く心に誓うエルザであった。
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